国家試験というのはざっくり言ってしまうと,その国家資格を持つ上で最低限持っていなくてはならない知識について学びましたか?という試験です.
PTOT国家試験はその資格に関わる多くの分野から出題がされてますが.「義肢装具学」は,そんな知っておきたい大量の専門知識の中の1つでしかありません.
義肢装具関連問題について解説をしてきましたが.国家試験で義肢装具分野の勉強をする上で,心の片隅に置いておいて欲しいなぁと思うことについてお話していきます.
国試の勉強でする内容
勉強の目処が少し立ってきた学生さんへ
2020年はイレギュラーなスケジュールが多く,学生さんも実習や国試の勉強が例年以上に大変だったのではないかと思います.
暦はあっという間に,12月の中旬で.気がつけば国家試験当日も数えられるほどの月日となってきました.
そろそろ,残り時間とここまでの勉強の手応えで.国試に向けた目処が立ち始めている頃でしょうか?
今回は,そんな国試勉強にちょっと目処が立ってきて.気持ちゆとりがある方へ向けたお話です.間に合わなくてやばい!という学生さんは,まず目の前の課題に取り組みましょう!
かなり限定されそうですが,国家試験の勉強をしていく上で大切なことだと思うので.心の片隅に置いておいて貰えればと思います.
国家資格を持つ知識
国家資格を持つのにふさわしい知識ってなんなの?と言われると,色々な要素がありすぎて何とも言いようがありませんが.少なくとも国家試験の合格が絶対条件である以上,それだけはクリアしなくてはなりません.
その国試ですら,必要となる知識は膨大です.国家試験出題基準を見てみると非常に多くの科目が関わっていることが分かります.
国家試験出題基準について
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-1510800000-Iseikyoku/50.pdf
解剖,生理,運動学などなど.PTOTという資格を持つ上で言うまでもなく重要な科目が多くある中で.専門科目の1つとして,このサイトでも扱っている「義肢装具」があります.
義肢装具は,まだ大項目の中で具体的に登場しているので良い方で.基礎科目の上には多くの専門科目が存在しています.国家資格をもつという事はこれだけの事を学ぶ必要があるということですね.
あまりに膨大な勉強量に「この教科捨ててもいいんじゃないか?」なんて悪い考えが浮かんでくるかもしれませんが.「ちょっとまった!!」と強く言いたいです.
通常の学校の試験ならいざ知らず.国家試験の勉強では,優先順位はあっても捨てていい教科なんてありません.
国家試験に受かるための勉強以前の,「国家資格を持つものとして必要な知識を持つ」という視点でも.今,皆さんがしている勉強はとても重要なものだからです.
今の知識がMAX?
セラピスト人生の中でしていく勉強
いま一生懸命国家試験の勉強をしている学生さんにこんな事を言うのは酷ですが.国試の勉強はスタートラインに立つために必要な勉強です.
どんな仕事でも当てはまりますが,実際にその業務をしながらの研鑽は一生続いていきます.セラピストという職種は,そんな勉強が分かりやすく顕著です.
卒後,みなさんがセラピストとして仕事をしていく中で.自分の得意だったり,興味があったり,必要性がある分野について,勉強し続けて行くことになるでしょう.
学校の勉強は,ほんの入口にある基本的な知識に過ぎず.自身のため,そして向き合うユーザーさんのためにも多くを学ぶ必要があり.私自身もその道半ばです.
そうして,経験と研鑽を積んでいくわけですが.全ての山を頂上まで登るのが難しいように,全ての分野を完璧に網羅することはそうそう出来る事ではありません.
多くの場合は,自身に関わりがある分野について,優先して勉強していくことになるのではないかと思います.それは必要なことである一方で,自身の関わることが少ない分野に割ける時間はどうしても少なくなってしまいます.
セラピストとして最低限の知識
私自身も,多く関わってきた分野と比較して.関わらない分野との習熟度の差は明らかで,「ちゃんと学んだ」とは口が裂けても言えない分野も多くあります.
施設の形態にもよりますが,それぞれが得意な分野でスペシャリストとして仕事をすることが出来れば上手くいく事がほとんどだと思います.…とは言っても自分の得意なことだけ出来れば良いという訳にもいきません.
求められる知識はその状況によって変わってきますが.その保障となる最下限が,学校で学んだことくらいは知っている.つまり「国家試験をクリアできる知識」を持っているという事で.それを下回ってしまうのは,資格を持つものとしては流石に問題アリですよね.
人によっては,全く関わらない分野の知識は.
「国家試験を受けた時がMAX」という事が起こり得ると思います.
よほど多岐の分野に関わっている方でなければ,「卒業後あまり触れてないな」という分野が1つ2つあるのではないでしょうか?
当然必要を感じれば,勉強していくでしょう.ですが,関わりが薄く,学ぶ必要を感じない分野があったとすれば.その機会は極端に少なくなってしまいます.
「国家試験受かったしいいじゃん!」とはいきません.
資格を持つ者として不足している知識の被害を受けるのは.最終的に向き合っているユーザーさんだからです.
義肢装具という分野の知識
「出来ない」ではなく「気が付かない」
私を含めた,有資格者も.知識や経験が足りなくて「出来ない」事は山のようにあると思います.
ですが,そこで問題が起こらないのは.必要最低限の知識だけは持つよう努力しているからです.
怖いのは「出来ない」ではなく「気が付かない」です.
自分に能力が足りなくて出来なかったとしても,気がつく事が出来れば.その分野の専門家にバトンを渡す選択肢を私達は用意することが出来ます.
ですが,何か対応が必要な事に気が付かずにスルーしてしまうと.宙ぶらりんになったユーザーさんは,問題が顕在化した時に困ってしまいます.
スペシャリストと呼ばれる人達は,自分の専門分野以外の知識もきちんと持っています.他分野の最低限の知識もなければ,「それしか知らない人」になってしまいますよね.
義肢装具という分野では,時としてそういった「誰かが気がついていれば…」という事が起こってしまう場合があります.その中にはセラピストの介入があったにも関わらず「学校でも習うような内容なのに…」と思ってしまうような事があるのも現実です.
最後に困ってしまうのはユーザーさんです.
気が付かないうちに,そんな事態に陥ってしまっているかもしれません.最低保障である国家資格をもつ知識のためには,今後自分の関わりが薄い分野の国試勉強が役立つ場面があるかもしれないですよね.
そう思うと国家試験で「この教科は捨てていいか」なんて考えられません.
意外と関わる義肢装具
学生さんの大半は,おそらくそこまで義肢装具に興味ないのではないかと思います.(私もそうでしたし)
様々な興味のある分野があると思うのですが,意外と「義肢装具が関わりないな」と思える分野は稀です.
整形外科,リハ科はいうまでもなく.スポーツクリニックではインソールやスポーツ外傷の装具が.一見関わりの薄そうな,心・循環リハも義足との関係が深いですし,生活期に至ってはそれら全てと関わる可能性があります.
もちろん必要になった時に勉強できていれば良いと思います.とはいえ,自分が専門とする分野の勉強が優先されますし.必要と感じなければ,なかなか勉強の機会もないかもしれません.
そんな時に,国家試験の勉強という土台がきっと役に立つはずです.卒後に積み上げていく研鑽も土台がグラグラでは崩れてしまうかもしれないですよね.
ユーザーさんと向き合える知識を持つために
ユーザーさんにとっては勉強していようがいまいが,たった1人のセラピストです.殆どの場合で,たまたま巡り合わせて出会ったそのセラピストに,人生の一部を預けることになります.
知識については求めだしたらキリがありません.全てを網羅することは事実上不可能です.日々の研鑽も重要となってきます.
ですが,国家資格を持つ上で必要最低限の知識が無いことで.ユーザーさんが気が付かないうちに不幸になるのはあってはならないことです.
国家試験の勉強をしていく中で,将来関わりが少ない分野の勉強であっても.ユーザーさんと向き合える知識を支える土台となってくれます.
国家試験合格というゴールに向けて頑張っている勉強ですが.セラピストとして一生学んでいくスタート時の土台作りを同時にしているということを.心の片隅に置いてもらえれば.国試勉強の意味合いもまた違ったものとなるのではないでしょうか.
試験に向けて少し目処が立ってきた学生さんは.専門科目の1つである義肢装具についても,試験のために,自身の今後のため,ひいてはユーザーさんのために.この機会に必要な最低限の知識を身につけてもらえると嬉しいです.