第55回理学療法士国家試験 午後-40 問題解説

第55回理学療法士国家試験 午後-40 問題解説

こんにちは,なぜなに。装具です.

PTOT国家試験義肢装具関連問題の解説をしていきます.

今回はPTB免荷装具のチェックポイントについてです.

問題を解くうえで

適合チェックって何をしますか?と言われると.

下肢装具であれば想定したアライメントを保持できるいるか?とか

矯正を行う装具であれば,必要な矯正力か?など

その装具を作成した目的を達成できているか?

という点をまず注目すると思います.

その目的部分を確認した上で,使用上問題ないかという事をチェックします.

短下肢装具であれば短下肢装具の.体幹装具であれば体幹装具の.

装具を使用する上でトラブルになりやすい部位が存在します.

装具の適合を確認する上で,そういった部分のチェックは必ず必要ですね.

今回の問題は,PTB免荷装具を使用する上でチェックする点に関する問題です.

  • PTB免荷装具の除圧部
  • PTB免荷装具の荷重部

が覚えておきたいポイントですね.

装具だけでなく,PTB式の下腿義足ソケット

共通する所が多いチェックポイントなので,しっかり確認しておきましょう!

PTB免荷装具とは

そもそもPTB免荷装具って何?

という点に先に触れておきましょう.

骨折の治療などで,骨折した下腿部や足部に

荷重が掛からない事を目的とした装具で,

足底で行っていた体重支持を

膝蓋靱帯部で行う装具となります.

PTBは義足ソケットと同様に

patellar tendon bearingの略ですね.

PTB免荷装具

また,どの程度の免荷が必要かによって,装具の使用が少し異なります.

足部が宙ぶらりんで完全に免荷しているタイプのものと.

つま先が着いていてるので,完全な免荷は行えないですが

荷重量を治癒に合わせて調整していく部分免荷のタイプがあります.

完全免荷PTB-AFO
部分免荷PTB-AFO

PTB免荷装具の荷重部と除圧部

では適合時にチェックするポイントである,

荷重部除圧部を確認していきましょう.

まず体重を支持する荷重部から

  • 膝蓋靱帯
  • 脛骨内側顆
  • 腓骨外側部
  • 脛骨内側面
  • 前脛骨筋部
  • 膝窩部

となります.

主に荷重しているのは,装具の名称となっている膝蓋靱帯と共に

脛骨内側顆部で,かなりの割合を支えています.

他の部分は「荷重がかかっても大丈夫」な場所ですね.

続いて荷重してはいけない,除圧部が

  • 脛骨粗面
  • 脛骨稜
  • 脛骨顆部の前面部
  • 腓骨頭
  • ハムストリングスの走行部

となります.

基本的には体表から触知出来る,圧迫されると痛い骨突起部

浅層を走行する神経避けるようにする必要がありますね

PTB装具の荷重部(赤)

PTB装具の除圧部(青)

解答の考え方

それでは問題の選択肢を見返してみましょう.

先程確認したとおり

PTB免荷装具の除圧部として該当するのは

2.脛骨粗面

5.腓骨頭

2つが正答となりますね.

1.脛骨内側面

3.膝蓋靱帯

4.前脛骨筋部

は荷重部なので誤りとなります.

補足知識

PTB装具の前面の荷重部,除圧部は解説したとおりですが.

後面にも荷重部,除圧部があります.

後面の荷重部と除圧部

膝窩部は比較的圧迫されても問題が少ないので

膝蓋靱帯と前後から挟み込んで荷重を支えるカウンターの役割を持ちます.

また,ハムストリングスの腱が張り出しており.

特に坐位を取ると装具の上縁が食い込みやすいので

内・外側のハムストリング走行に合わせた除圧が行われます.

後面の荷重部
後面の除圧部

装具後面のトリミング

ハムストリングスの走行は,

装具後面のトリミングにも影響があります.

腱の張り出しが,外側より内側ハムの方が

遠位まで張り出しているため.

除圧と同様の理由で食い込まないよう

トリミングは内側が低めに設定されます.

後面のトリミング

後壁の高さのチェックポイント

坐位でハムストリングスが食い込みやすいなら,

もっと後壁を下げれば…と思う所ですが,そういう訳にもいきません.

後壁が下がると膝窩部のカウンターで押さえる位置も下がっていくので

膝蓋靱帯と挟み込んで固定する事が難しくなっていきます.

通常の膝窩部カウンター
低すぎる後壁のカウンター

押す位置が遠位にズレたことで.下腿を後傾させる力が働きます.

また装具の支持性がなくなると,装具内での落ち込みが大きくなり

ピストン運動が起こって除圧部分が接触してトラブルに繋がります.

また落ち込み過ぎると,本来設定していた免荷量よりも

荷重がかかってしまうかもしれません.治療の結果に関わります

PTB免荷装具では,覆われている部分も多く,軟部組織も多いので

多少後壁を下げても問題は少ないのですが.

モーメントアームの短い下腿義足PTBソケットで同じことをすると

支持が足りずに断端末のトラブルになるので注意ですね!

PTB装具の後壁は,

高すぎると食い込んで座りにくく

低すぎると支持性が足りずピストン運動に繋がり

適度な高さの設定が必要になってきます.

そして多くの設定の場合,多少の膝屈曲制限が起こるはずです.

PTB装具を装着時には,装具側が膝屈曲制限されている状態での動作

しっかりとお伝えしないといけないという事ですね.

まとめ

PTB免荷装具のチェックポイントについて解説をしてきました.

この荷重部と除圧部の問題は,パターンが決まっていますが

とても良く見かける出題ではないかと思います.

  • 短下肢装具の除圧部
  • PTB装具(下腿義足ソケット)の荷重部・除圧部
  • 坐骨免荷装具(大腿義足ソケット)の荷重部・除圧部

は該当部分をしっかり復習したほうが良いと思います.

今回の難易度も「絶対に落としたくない基本の問題

と言えるのではないかと思います.

足底部,坐骨と違って

膝蓋靱帯部は本来体重を支える場所ではありません

きちんと支持出来ていないと足と装具のズレが大きくなり

皮膚トラブルの原因となりやすいので.

適合チェックの際には,そうならずに事前に対処出来るよう

しっかり確認できるようになりたいですね.

参考文献

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p247

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p83

第55回理学療法士国家試験、第55回作業療法士国家試験の問題および正答について

厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-08_09.html

元つぶやき

Twitterでのつぶやきを再編したものです.

元のつぶやきはコチラ

参考動画

PTBソケットについて簡単に解説しています.

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