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なぜなに装具。FAQ 義肢装具の耐用年数ってどんな期間?

なぜなに装具。に寄せられた,疑問質問の中から.よく頂くご質問や,疑問に思っている方が多いのではないかな?と思う内容についてまとめた「なぜなに装具。FAQ」です.

今回のテーマは「義肢装具の耐用年数ってどんな期間?」についてお話していきます.

義肢装具を使用していくうえで,非常に重要な期間なのですが.中には少し勘違いして理解していらっしゃる方もいるので.

耐用年数ってどんな期間なのか?

耐用年数の期間で気を付けることは?

について注目していきましょう.

今回の記事は,動画として作成したものを再編したものです.尺の都合上カットした補足の説明などもあるので,動画をご覧になった方も改めてご覧いただければと思います.

動画で見る.

義肢装具の耐用年数ってどんな期間?

骨折などの外傷や,手術をした後など一定の短い期間使用する装具の場合には.「耐用年数」についてをそこまで気にしなくても良いかもしれませんが.

日常生活で長い期間使用する事を主とした義肢・装具については.この「耐用年数」は,使用をしていくうえで非常に重要な期間を表すものです.

耐用年数と聞くと,どんな期間を思い浮かべますか?

「耐用年数」と聞くと,どんな期間を思い浮かべるでしょうか?

その文字をそのまま取ると,「壊れずに使用していける期間」という印象があるのではないかと思います.

これは,ほぼ正解といって良いのですが.正確でもありません.

また,よく聞く勘違いなのですが.

電化製品のメーカー保証みたいなものでしょ?といったものです.これについては,間違った認識と言えるかもしれません.

よくある電化製品のメーカー保証というのは,通常の使用方法で使用している限り,壊れる事なく使う事ができる期間を表していると思います.

同一規格の製品であることもあり.基本的な使用方法である限りは,故障するリスクはある程度一定で.

そのはるか手前で故障してしまうことは基本的に少ないので.万が一壊れてしまった場合には,修理や交換の保証をしますよ!というお話ですよね.

ですが,義肢装具の耐用年数は.これとは少し違ったものです.

耐用年数とは

では,義肢装具の耐用年数がどんな期間かを決めている.厚生労働省のお知らせを確認してみましょう.

補装具の支給に関する内容をまとめたガイドブックの「耐用年数」の項目の中にこんな一文があります.

p39.第二章1-6 耐用年数より

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000307895.pdf

耐用年数という期間について
    規定されている耐用年数は,想定し得る通常の装用状態で使用した場合に.
    その補装具が修理不能となるまでの,予想年数を目安として定めているものです.

「修理不能となるまで」との一文があるように,義肢装具の耐用年数は修理や調整が不要な期間を表すものではありません.

耐用年数の期間は修理や調整をしながら使用していき.耐用年数を経過すると,その範囲を越えて義肢装具が身体に合わなくなってしまったり,壊れてしまったりする可能性が出てくるという事です.その期間内でも,「修理や調整の必要があるかもしれない」というのは,電化製品のメーカー保証とは大きく異なる部分ですね.

また,その期間を経過すると.本当に修理も調整も出来ない程に壊れてしまうのかというと.良くも悪くもそうではありません.

耐用年数の実際

多くの義肢装具と,骨格義肢の耐用年数

電化製品のように,修理や調整の必要のない.基本的に安心して使える期間が設定できれば良いのですが.義肢装具にはそうは出来ない事情があります.

多くの義肢装具は,ユーザーに合わせて作られたオーダーメイドです.全く同じ義肢装具というのは「ない」と言っても良いほどなので.そもそも,単一の製品とはワケが違ってきます.

骨格義肢については,「製品」としての義肢パーツを組み合わせて作成されるため.既製品に近い扱いが出来るため,パーツ毎に耐用年数が定められていますが.

やはりそれでも使用状況によって,パーツにかかる負荷は異なってきますし.身体に直接触れる「ソケット」部分は,やはりオーダーメイドのものなので事情が変わってきます.

その他の義肢装具では,種類ごとによってある程度「義肢装具の用途」は似通っているため.その名称・種類によってそれぞれ耐用年数が定められています.

ですが,同じ耐用年数の義肢装具の中でも.その状況は大きく異なる場合があります.

あくまでも目安の期間

使用する義肢装具そのものが違うという点もあるのですが.その他にも義肢装具の状況を左右する要因は多くあります.

屋内の生活が中心なのか?屋外の生活が中心なのか?によって.足に着ける義肢装具であれば,歩くほどに消耗しやすくはなってしまいますし.

手に着ける義肢装具であれば,水に濡れることがあればどうしても劣化しやすかったり,素材を選びますし.

仕事で毎日使うようならば,負荷は大きくなってしまうでしょう.

「活動度」にも左右されますが,どんな状況で使用するかで.1年使った後での義肢装具の消耗度合いは全く異なってきます.

何より,義肢装具を使用する理由となっている.疾患などの状況が人それぞれで全く違います.

全く同じ「病名」で同じ名前の「義肢装具」を使用していても.その実情は変わってくることでしょう.

ある人は,耐用年数の間.何事もなく使用する事ができるし.

ある人は,耐用年数を大きく超えても.全く問題が起こらない事もあるでしょう.

ある人は,耐用年数の間.何回か修理や調整が必要かもしれません.

そして困った事に,ある人は耐用年数の中で.修理や調整の範囲を超えて,義肢装具が壊れてしまう恐れも存在しています.

もちろん,実情に合わせて.義肢装具の種類を決めたり,部品を選択したりと.耐用年数の中で問題が起こりにくいような選び方をしているのですが.

義肢装具の種類に「一定のくくり」があるので.同じ名称・種類の中でも,どうしても実情に差が生まれてしまいます.

そんな訳もあって,義肢装具の耐用年数は.重要な期間を決定するものであると同時に,あくまでも「目安」を表す期間となっています.

注意すべきは義肢装具が「合わなく」なってしまう事

そうは言っても,義肢装具が耐用年数の期間内に「完全に壊れてしまう」というのは非常に稀です.

耐用年数の間に義肢装具が使用不能になってしまうとすれば.フィッティングの問題などから「調整」では,どうにも出来なくなるケースが多いです.

  • 体型の変化で,身体に合わなくなる.
  • 病状の変化で,機能が合わなくなる.

の2つが良く起こってしまうものですが.

どちらも病的な理由に起因するものはコントロールが難しく.義肢装具側を変えていく必要があります.

日常生活を送るうえで,必須となる義肢装具の場合には.修理や調整でどうにもできないのであれば,「作り替え」を検討する必要も出てきますね.

耐用年数について知っておきたいポイント

使用している義肢装具の耐用年数を知る

まず何より重要なのが,自身の関わっている義肢装具の耐用年数がどのくらいの期間なのかを知る事です.目安とはいえ,もしかすると壊れてしまうかもしれない期間を知らなければ.注意の使用がないですよね.

義肢装具の耐用年数は,厚生労働省によって定められているもので.

冒頭でもお話した,補装具支給費事務ガイドブックにも記載があります.

例:p142. 短下肢装具の耐用年数

https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000307895.pdf

ですが,この表から知るには.自身の使用している義肢装具の「正式名称」が分からないと,耐用年数が何年なのか分かりにくいです.

義肢装具の代金支払い時にもらった領収書にはこの正式名称が記載されているはずですが.コピーを取っていないと原本は支給申請に使用してしまっているので,手元にない!という方も多いかもしれません.

耐用年数については,作成に関わった「義肢装具士」に確認するのが一番早いでしょう.

多くの義肢装具では1.5~3年.一部の義肢パーツでは5年に設定されている場合が多いです.製作に使用されている材料によって,義肢装具の種類・名称は変わります.

耐用年数内でも定期的にチェックが必要

今回,耐用年数についてお話しする中で.一番大切と言っても良いのが,耐用年数の中でも定期的にチェックが必要ということです.大多数の方が何事もなく,耐用年数の期間を過ごせるといっても.年単位の時間経過は,人も義肢装具も大きな変化があることでしょう.

体型が変わればフィッティングも変わりますし.環境が変われば,作成した当初とは状況が変わってくるかもしれません.

なにより加齢や病状の変化による,身体の状態が変化すれば.最初は微々たる変化でも,だんだん義肢装具は合わなくなってきてしまいます.

義肢装具も同様に,長い期間使用すれば変化してきます.毎日使用すれば,それだけ消耗することとなり.時には金属すら摩耗させます.

人の変化には「調整」が,義肢装具の変化には「修理」が必要なので.これについても,専門家と一緒に状態を見極めていく事となります.

耐用期間内でも専門家に相談をする機会があれば,必ずチェックをしてもらいましょう.また,使用していて気になる点がある場合には.その機会を設けるようにしていただきたいですね.

耐用年数が過ぎたら「作り替え」が必要かも?

修理不能となる時期の目安である,耐用年数を過ぎている義肢装具は.その機能が失われつつある可能性があります.毎日着けていた義肢装具が,その役割を果たせていないとなると.何のために着けていたのか,分からなくなってしまいます.

耐用年数を迎えたら,一度義肢装具を作成した専門家にチェックしてもらいましょう.

担当医師,リハビリスタッフ,作成した義肢装具士.誰でもいいので一度相談してみてください.多くの場合は医学的な判断を必要としますので,医師に相談していただくのが一番良いのでしょうか.

実際に作り替えが必要かどうかは,専門家の判断によりますが.使用している義肢装具の状態を知るためにも,節目のタイミングとなりますね.

まとめ

 今回のなぜなに装具。FAQは,義肢装具の「耐用年数」についてお話をしてきました.

普通に使用していて,修理や調整の施しようがなく.新たに義肢装具を作り変える必要が出てくるまでの「期間の目安」である耐用年数ですが.

長くなってしまうので省きましたが,耐用年数は他にも義肢装具の重要なルールに関わりが深いです.今回のお話の中にも出てきた「作り替え」や.「1度に作る事が出来る数」の基準ともなっており.

耐用年数の期間の中も,期間が過ぎてからも.義肢装具を使用していく上で気にしておきたい期間ですね.

NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.

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NAZENANISOUGU