よく使用されている 「コルセット」の種類について

よく使用されている 「コルセット」の種類について

装具の種類は数しれず,頭から足先まで固有名詞をもった装具の数でも何百種とあるのではないかと思います.

中には,数年に一度みるかどうかといった装具もありますが.今回お話していくのは,そんな装具の中でも最もポピュラーな「コルセット」についてです.

制作会社で作成される装具の中で,全体の3割程度を軟性のコルセットが占めているという話もあります.

全身の装具

書籍を見ても,非常に多くの装具があり.制限の一覧を見るだけでも大変ですが.今回は臨床でも見かける頻度の多いコルセットについてまとめていきます.

脊椎の絵

体幹装具の分類について

いわゆるコルセットに分類される体幹装具について.どういった分類のものがあるのか簡単に確認していきましょう.

分類する方法はいくつかありますが

  • 身体のどこを覆っている装具なのか
  • どんな素材で出来ている装具なのか
  • どんな疾患で使用する装具なのか

について考えていくと.

だいたいどのような装具か想像が付くようになるのではないかと思います.

覆っている部分については,装具の名称にも関わってきます.

コルセットでは骨盤を基準として,丈の短いものから

  • 仙椎装具(SO)
  • 腰仙椎装具(LSO)
  • 胸腰仙椎装具(TLSO)
  • 頸胸腰仙椎装具(CTLSO)

に分類されます.

コルセットの丈の長さによる分類

また,コルセットがどのような素材で出来ているのかも重要で.装具にどれだけの支持性が求められるのかが分かりますし.それぞれメリットとデメリットがあります.

  • メッシュや布製の「軟性」
  • プラスチックなどの「硬性」
  • 「金属支柱」のフレームを持つもの

の3つに分類されます.

コルセットの素材

また特定の疾患のみ,またはとても多く使用されるコルセットがあります.側弯症や圧迫骨折などがその代表です.

体幹装具について考える時は,最低限これらの分類を知っておきたいのではと思います.

よく使用されるコルセット

よく使用されるコルセットについて.先程の分類を参考にしつつ確認しましょう.

既製品の仙椎コルセット

まず忘れてはいけないのが,既製品のコルセットです.

マックスベルト」などが該当し.分類としては仙椎装具にあたります.

背面に支柱があるものの,脊椎の動きを制限する力はほとんど無くわずかな伸展制限と.ベルトの締め付けによって腹圧をかけることが主な目的となっています.

マックスベルト1
マックスベルト2

マックスベルトなどのコルセットは「治療用装具」には該当せず.「装具」として支給されるものではありません.ですが,低侵襲のOPEが増え,術後の強固な固定が必要でない場面も増えてきており.以前はオーダーメイトのコルセットを作成したような場面でも,既製品のコルセットを使用する機会が増えてきています.

ある意味最も使用されるコルセットですが.仙椎装具で丈が短いため,正しい位置で着けることが出来ていないケースも多いです.装着確認と指導はしっかりしましょう.

ダーメンコルセット(軟性装具)

オーダーメイドのコルセットで最も使用されているのが,軟性装具です.いわゆるダーメンコルセットと呼ばれているもので,オーダーコルセットと聞くとまずコレを想像することが多いのではないでしょうか.

腹側・背側・側方にある程度形を変えることが出来る支柱が入っている場合が多く.脊椎前後屈・側屈の可動域制限をある程度得ることが出来ますが.回旋方向の制限は構造上ほとんど出来ていません.

既製品の仙椎装具と同様に腹圧をかけることが大きな機能の目的となっています.

剣状突起レベルを目安に,下なら腰椎装具軟性,上なら胸椎装具軟性となります.

ダーメンコルセット

クリニックなどでも,脊柱管狭窄症,腰椎椎間板ヘルニアや圧迫骨折の一部などで幅広く使用されるコルセットですし.前記の既製品コルセットと同様の理由で,以前は術後に強固な固定が必要であったケースでも,ダーメンコルセットの固定力で十分と選択される場合が増えています.

メッシュ生地で通気性は良く,オーダーコルセットの中でも非常に装着しやすい装具ですが.それでも夏場は暑く,汗が皮膚トラブルの原因となります.すべてのコルセットに共通しますが,必ず肌着を1枚着た上から装着しましょう.

硬性コルセット

ダーメンコルセットの次によく使用されるのが,プラスチック製の硬性コルセットです.製作工程からモールド式と呼ばれる事もあります.

臨床でよく使用されるコルセットのうち,この2つが占める割合がほとんどではないかと思います.硬性コルセットで固定力が不足するのは,かなり限られたケースで.特別な理由がない限り,ダーメンコルセットと硬性コルセットの2つが選択の中心となっています.

プラスチックでの固定の上に,必要に応じて支柱が追加されている作りのものが多く.ダーメンコルセットより遥かに強固な固定を行うことが出来ます.

主に圧迫骨折や術後の固定などに用いられます.

体幹全体を覆うようにして固定を得ているため強い制限があるのですが.素材の硬いプラスチックは装着感に難があり.空気穴など対応をしても通気性に問題があります.

硬性コルセット

長時間,特に臥位でも使用が必要な場合には.その硬さから褥瘡などのトラブルのリスクがあります.フィッティングと定期的な状態のチェックには注意をしましょう.

コルセットの内側はスポンジなど柔らかい素材で内張りする必要があるかもしれませんが.増える厚みと,拭きにくく汚れが目立つなど課題が生まれます.

半硬性コルセット

ダーメンコルセットと,硬性コルセットの中間と言える存在なのが半硬性コルセットです.腹側はダーメンコルセット背側はプラスチックで作られています.

脊椎の伸展のみしっかりと制限が必要な場合に用いられ.屈曲方向は軟性である程度の固定が行われます.

不要な強い固定がないことで幾分装着感が改善されており.比較的低侵襲な脊椎固定術後などに選択肢の1つとなっています.

半硬性コルセット

金属支柱型コルセット

金属支柱をもつコルセットは,その形状によっても変わりますが非常に強固な固定力を持ちます.

「スタインドラー型は脊柱の動きを最も制限する」という文言は,装具に関わる国家試験の勉強をした方なら記憶に残っているのではないでしょうか.

ですが,実際臨床で見る機会はあまり多くはありません.硬性コルセットの項でもお話したとおり.余程固定力が必要なケースを除けばプラスチック製でも十分な固定力を得られる場合が多いです.

そんな中でも金属支柱のコルセットを選択する理由として.金属による強固な支持性のおかげで,体を覆う面積が硬性コルセットに比べて少なくて済む事が挙げられます.

通気性の面では遥かに勝っており,汗によるトラブルが予想できている場合には一考の価値がありますし.ストマなど使用さている場合にはスペースを確保しやすいです.

金属支柱型コルセット

現在は,部分的にフィッティングを変えやすいという利点を生かして.レディメイドの装具に金属支柱型が採用される事も多いです.

ジュエット型コルセット

固有名詞をもつコルセットはとても多いですが.その中でも,とても良く使用される1つがジュエット型コルセットです.

主に脊椎圧迫骨折に用いられるコルセットで,前面の胸骨パッドと恥骨パッド,後面の背側パッドの3点固定によって脊椎の屈曲を制限します.

プラスチック製のものと金属製のものがあり.必要な部分が覆われているのみなので通気性が良いです.

臥位で装着する場合に,硬性コルセットと比較して装着しやすい利点がありますが.円背が強い場合には,姿勢を保持することが難しい場合があるのでケースによって使い分けが必要となります.

圧迫骨折に用いられるという点から,出来るだけ早く使用を開始したいという事情もあり.レディメイドのコルセットが比較的多い装具です.

ジュエット型コルセット
中村ブレイス ジュエットプレイバック

側弯症コルセット

特定の疾患に使用されるコルセットで知っておきたいのが側弯症のコルセットです.

多くの種類があり,それぞれ特徴があるのですが.その中でもポピュラーなものが「ボストンブレース」と「ミルウォーキーブレース」です.

進行の予防を目的とした矯正装具で.パットを介して頂椎に矯正力を加えます.

ボストンブレースはTLSOで下位胸椎までの側弯症に.

ミルウォーキーブレースはCTLSOで上位胸椎の側弯症に用いられます.

主に使用される特発性側弯症という疾患の特徴も相まって.適応,,装具の選択,装着の指導,フィッティングと非常に難しく,同じコルセットという括りにありますが別の装具といってもよい程,全く別の知識を必要とするコルセットかもしれません.

ボストンブレース
ボストンブレース
ミルウォーキーブレース
ミルウォーキーブレース

まとめ

よく使用されるコルセットについてお話しました.他にも多くのコルセットがありますが,まずは今回紹介したようなコルセットについて知っていれば良いのではないでしょうか.

数で言えば,ダーメンコルセットとプラスチック製の硬性コルセットが多くを占めますが.体の周りに常にあるものと考えると.生活の中での影響も大きなものです.

側弯症レントゲン

義肢装具士さんと相談しながら最適な選択や工夫をしていきたいですね.

それぞれのコルセットについては,また詳細にお話していければと思っています.

参考資料

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p109-

高橋 功次,治療用装具の支給制度,日本義肢装具学会誌,2004 年 20 巻 2 号 p. 95-99

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/20/2/20_2_95/_pdf/-char/ja

平林 茂,整形外科領域における装具療法,日本義肢装具学会誌,1997 年 13 巻 4 号 p. 304-310

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/13/4/13_4_304/_pdf/-char/ja

シグマックス MEDICAL MAXBELT

https://www.sigmax-med.jp/medical/maxbelt

中村ブレイス株式会社 ジュエットプレイバック

http://www.nakamura-brace.co.jp/product/spinal/jeuett-playback.html

株式会社洛北義肢 ボストンブレース

http://www.rakuhokugishi.co.jp/products_foreign/bbe/index.html

瀬本 喜啓,特発性側弯症に対する装具療法,日本義肢装具学会誌,2003 年 19 巻 3 号 p. 187-190

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/19/3/19_3_187/_pdf/-char/ja

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