装具に出来ること

なぜ装具を着けるのか.その目的を知るにあたって

装具に出来ることって何なのか?を知っていると

目的の理解もしやすいのではないかと思います.

この項では,主な装具の働きを解説していくことで

使用する目的を理解する助けになればと思います.

装具の分類にはいくつか種類がありますが.

今回は使用の目的装具の働きに関する分類となります.

固定装具

1つめに紹介するのは,固定装具です.

関節の動きを,制限したり固定をすることで.

安静を保ったり関節を安定させる事を目的としています.

アンクルサポーター
ダーメンコルセット

代表的なものは,

足関節を捻挫(靱帯損傷)した時に使用されるアンクルサポーターや

腰椎椎間板ヘルニアなどに用いられるダーメンコルセットです.

イメージしやすい似た役割のものが

骨折をした時に使用される

ギプス固定でしょうか.

骨折した周囲の関節を固定して

骨が付くまでの期間安静を保ちますよね.

ギプス固定

この固定装具は装具の中でもかなりの割合を占めています

見かた次第では固定装具は,関節の動きを制限する「邪魔者」とも思えますが

先程のギプスの例のように,動きを制限して安静や安定を得るというのは

治療を行う上で非常に重要なことが多いので,

主治医にどういう動きは良くて何がダメなのか確認すると安心ですね.

矯正装具・予防装具

2つめは矯正装具予防装具です.

共通する部分があるので一緒に紹介していきます.

疾患によって起こる関節の変形に対して力を加えて

良肢位(良い姿勢)を保持する事を目的とした装具です.

イメージしやすいのは外反母趾矯正装具でしょうか

母趾と第2趾(人差し指)が重なってしまい

擦れて皮膚のトラブルを起こさないよう矯正しつつ

それ以上の変形が起こらないよう予防する

という2つの役割を持った装具です.

中村ブレイス
スーパートービック

市販のものでも似たものがありますが,遥かに強い矯正力を持っています.

1つ注意して頂きたいのが,強すぎる矯正力は悪影響があったり

疾患によっては関節の破壊を進めてしまう場合があります.

専門家とよく相談しながら使っていきたいですね.

その他にも,関節を動かせなかった事で

固くなってしまった(拘縮)ものを

改善するように力を加える装具や.

拘縮改善装具

側弯症という思春期女子に多い,

背骨の変形が起こる疾患の

矯正を行うような装具が代表的です.

側弯症矯正装具

免荷装具

次の免荷装具は,体重を支える時に特定の場所に体重が掛からないよう

他の部位でその分を荷重を支えるための装具です.

すこし分かりにくいので例を挙げると

足を骨折した時には,骨が付くまで体重をかけられないので

松葉杖などを使って足を浮かせている場合があると思いますが

両手が塞がってしまいますし,他の健康な部分の機能が勿体無いので.

骨折部に体重が掛からないように,膝の周りで支えるような装具があります.

慣れれば両手が空きますし,治療に合わせて徐々に荷重を増やしていきます.

PTB免荷装具

他にも,足の特定部位を怪我したり手術した後などに

その部位にだけ体重がかからないようにする.

免荷を目的としたインソールや靴があります.

足底の免荷装具

細かく見ていくと多くの種類がありますが.

装具は大まかに分類すると,これらを上手に組み合わせることで

治療や症状の軽減をするための機能を果たしています.

例えば脳卒中などの脳の疾患で

麻痺によって歩く機能が失われてしまうと

リハビリをして歩く能力を再度学習する

必要がありますが,その際に歩行装具

力を発揮することが多いです.

歩く練習をする際に,いきなり全部を

自身でコントロールするのはとても難しい事です

そんな時に,装具で一部の関節の動きを制限することで

その関節のコントロールは装具に任せて自身は練習する動きに集中できます.

(この絵の場合は,膝と足は装具で固定し,股関節と体幹の動きに集中できる)

一見すると,動きを邪魔している装具も

目的をもって使用することで,練習の難易度を調整して

歩くために必要な能力を1つずつ獲得するのに役立っているわけですね.

このように,その装具が何をしているものなのか知ることは

装具をなぜ使うのか?ひいては,どのように治療を進めていくか理解するために

とても重要な事の1つではないかと思います.

装具を使用されるご本人やご家族の方は,

なぜ使うのか?どんな働きがあるものなのか?

主治医や専門家に是非聞いてみてください

目的を理解して装具を使えれば,上手に付き合っていけるのではないでしょうか

装具がどのようなものか,少しは理解の助けになったでしょうか?

次は,装具を使うこととなるとよく耳にする.

とても重要な分類である,治療装具更生用装具について解説していきます.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p2

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p189.215.231