PTOT国試,義肢装具関連問題解説.今回は第53回作業療法士国家試験午前の33問目から,関節リウマチのスプリント使用目的に関する問題です.
関節リウマチという疾患は,その特性から症状の状況によって求められるものが変わってきますし.スプリントがどういった仕様のものかによって日常生活での使い勝手が大きく変わります.
関節リウマチ患者に対してスプリントを用いる目的で誤っているのはどれか
関節リウマチに用いられるスプリントの目的に関する問題です.スプリントや装具そのものがどうこうといった問題ではないので.概要に触れつつ簡単に解説していこうと思います.
関節リウマチのスプリントについて知っておきたいのは
でしょうか.
具体的にどういったスプリントを使っていくのかという問題もよく出題されるので.
具体的な装具名称と適応も,併せて確認しておきたいですね.
関節リウマチは,滑膜の異常増殖とそれに伴う骨・軟骨組織の破壊を特徴とし.
膝・手・手指の関節に初発しますが,障害頻度で見ると,手関節・MP関節・PIP関節が侵されることが多く関節破壊が進むに従って,関節の変形や運動制限が表れます.
関節包や靱帯に弛緩が起こり関節が動揺性を示したり変形する事もあり,手指ではいくつか特徴的なものがあります.
全身性疾患であるため,多くの関節に炎症や変形が起こる疾患でもあります.重要な内容ですので全体通してよく復習しておきましょう.
関節リウマチに対する装具使用の目的は
などが挙げられます.
安静には静的スプリントが,変形予防や機能の代償には動的スプリントが用いられる場合が多いです.
関節リウマチにおいて安静を保つ固定装具は有用ですが長期間の固定は拘縮に繋がる恐れがあります.急性期でも1日に1回は痛みのない範囲で動かす事が必要ですし,亜急性期以降は動的スプリントを用いて可動域の動作を補助する事が必要となる場合があります.
ほとんどのスプリントは,複数の目的をもって作成されますが.その中でも主とする目的によってスプリントの種類や仕様が変わってきます.
今回はそれぞれの目的と代表的な上肢スプリントについて触れていきましょう.
関節リウマチのスプリントは,ほぼ全てといって良いほど関節痛の軽減を1つの目的としています.安静位を保つことで疼痛や炎症の軽減を行ったり,機能的肢位を保つことで関節にかかる負荷を軽減します.
静的スプリントは基本的に該当すると思うのですが.例を挙げると母指Z型変形などに用いられるCM関節サポーターがあります.
機能的肢位で安静位を保つためのもので.サポーター生地から,プラスチックなど硬性のまで,必要な支持性と使い勝手に合わせて選択されます.
矯正と聞くと積極的に力を加えて,変形の改善をすることを想像してしまいますが.関節リウマチにおいては,骨破壊,関節包・靱帯の弛緩と拘縮,筋腱のバランス不良の結果として変形が起こっているため殆ど意味がありません.
同様の理由で,変形を完全に予防することは困難ですが.変形の程度を減少させたり変形の進行を遅らせるために,「機能的肢位に保持(矯正)する」と言ったほうが分かりやすいかもしれません.
代表的なものとして,尺側偏位とそれを防止するためのサポーターが挙げられます.
機能的肢位に矯正することで,変形の予防と把持など日常生活の動作の改善を目的としています.
ボタン穴変形やスワンネック変形など手指の変形に対しては,指用のスプリントが用いられますが.静的スプリントによる安静に重きを置くか,動的スプリントによる機能の代償を目的とするかは.症状や生活に必要な動作などで変わってきます.
関節機能を温存し,疼痛を軽減するためにも.関節への大きな荷重などの負荷は極力軽減をしたいところです.
主に手関節などで使用される固定装具は,物を掴んだり持ち上げたりと負荷が大きな部位の支持を補助することで安定をもたらします.
プラスチック用の硬性のスプリントが用いられる事が多いですが.スプリントが覆う部位によっては,逆に物を掴みづらくなってしまったり,その硬さから装着しづらく,受け入れられない事も多いです.
結局使用されなければ意味がないですし,長期間使用せざるをえない装具なので.支持性としては不足があったとしても,軽量で,着脱が簡易であり装着に抵抗の少ないものを選択したほうが良い事もあります.
芯材の入っていない布地のサポーターや,PEライト製手関節軟性装具など.柔らかい生地やスポンジで出来たものと状況に合わせた使い分けが必要ですね.
それでは選択肢を見ていきましょう.
2.動作の補助
3.痛みの軽減
4.炎症の改善
5.関節アライメントの矯正
はどれも関節リウマチに用いられるスプリントの重要な目的です.
静的スプリントは主に痛みの軽減や炎症改善のための安静保持を
動的スプリントは動作の補助やアライメントの矯正を行います.
1.筋力増強はスプリントの目的ではないので,これが正答となります.
関節リウマチのスプリント使用目的に関する問題について解説しました.
疾患ごとに,その特性にあった装具使用の目的があります.まずは疾患の概要をしっかり知る事が出来れば,その疾患で問題となる点も見えてくるのではないかと思います.
今回の問題に関して言えば,スプリントについて何も知らなくても,関節リウマチという疾患について知っていれば正答を導くことが出来ます.
まず基本となる分野をしっかりと復習して,その上に装具の知識を積み重ねるようにできれば.効率的に勉強できるのではないでしょうか.
米本恭三,最新リハビリテーション医学,医歯薬出版,第2版,p262
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p199
松野丈夫 ほか(編集),標準整形外科学,医学書院,第12版,2015,p257
加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p233