第54回作業療法士国家試験 午前-33 義肢装具問題解説

第54回作業療法士国家試験 午前-33 義肢装具問題解説

こんにちは,なぜなに。装具です.

今回は第54回作業療法士国家試験から筋電義手に関する問題解説です.

限られた場面,施設でしかまだまだ処方の少ない電動義手ですが.上手に使いこなすことが出来れば様々な可能性を秘めています.その性能の進化は著しくこれから見かける場面が増えていくかもしれません.

問題を解くうえで

以前はあまり問われることのなかった,この筋電義手関連の問題ですが.段々と試験で顔を出すようになってきました.そこまで細部を問われることは少ないと思います.ポイントを押さえていきたいですね!

確認していきたいポイントとして

  • 筋電義手の概要
  • メリットとデメリット
  • ハンドの種類

について簡単に触れつつ,選択肢の解説をしていきましょう.

筋電義手はイメージしづらい部分も多いと思うのですが.ottobockさんなどから機能についての動画が多くアップされているので.そちらも併せて見ていただいたほうがイメージしやすいのではないかと思います.

https://www.ottobock.co.jp/prosthetic_ue/myoelectric/

筋電義手ってなに?

義手にはいくつかの種類がありますが.その機能的な分類が義手の種類を知る上で大切です.

義手の機能の大きな違いは,「手」としての機能をどのような「手先具」で代償するかという点が大きな割合を占めています.

筋電義手は,自分の意思で手先具を操作できるので.能動義手の1種と言ってよいですが.大きな違いは,能動義手が残された上肢の機能や反対側上肢の動きを,その操作する力源としているのに対して(体内力源式).電動義手はスイッチや,筋を動かした時の活動電位をトリガーとして,モーターを動かして手先具を操作します(体外力源式).

筋の活動電位を利用して操作する電動義手を筋電義手と呼んでいるわけですね.

前腕の筋電義手では,手関節屈筋群背筋群の筋電位を利用して.ハンドの開閉を行う場合が多いです.

筋電義手のメリットとデメリット

筋電義手の大きなメリットは,体外力源によりつまみ,掴み動作を行うことが出来るため.ハーネスなどでコントロールする能動義手に比べて,把持する力が大きい事が特徴です.

また,同様にケーブルの操作が不要なため.能動義手の操作が困難であった頭上や,背部でも操作を行うことが出来ます

一方で,動力が義手内にあるため重く.能動義手とは違った意味で筋力が必要です.また筋電位を取る電極部分のフィッティングはとてもシビアでソケットには絶妙なフィッティングが求められ.精密機器でもあるためメンテナンスの必要があるというデメリットがあります.

解答の考え方

では,ここからは問題の選択肢を見ながら解説していきましょう.

まず,1.小児には使用しない.についてですが.これは誤りです.

筋電義手のハンドには小児用のものが存在します

ただし,支給されるものの大部分は労災保険によるものです.障害者総合支援法で支給される筋電義手は非常に少数です

これはちょっとややこしい話なのですが.筋電義手が「特例補装具」として扱われているからです.障害者総合支援法では,障害の状況や生活環境などの真にやむを得ない事情で筋電義手が必要な場合以外は,通常は支給対象となりません.

このあたりは,また後日補足記事を作成しますが.国家試験を解くうえでは労災での処方が多いという事と,少なくてもちゃんと小児用の筋電義手はある事だけ知っていれば良いと思います.

続いて,2.作業用ハンドはない.も誤りです.

筋電義手には作業用のハンドが存在します

先程も触れましたが,上肢切断の多くは外傷によるもので.更にそのうちの多くは作業中の機械事故によるものです.

筋電義手の目的の一つとして,装着により職場への復帰や,作業が可能となる事が挙げられるため.特定の作業を行う事に特化した作業用のハンドは.その他の能動義手と同様に重要な役割を持っています.

3.能動義手に比べ把持力が強い.これが正答ですね.

どのような肢位でも,変わらずに大きな力で把持できることが.筋電義手の大きなメリットの1つとして挙げられます.

4.前腕義手にはハーネスが必要である.は誤りです.

能動前腕義手がハーネスで操作するのは,ハンドやフックの開閉ですが.これを体外力源で操作するのが筋電義手でしたね.

5.前腕義手より上腕義手の症例が多い.は誤りです.

これは部位別の切断数が,上腕切断よりも前腕切断の方が多いという点はあるのですが.上腕の筋電義手がまだまだ普及していないという問題点でもあります.

筋電義手の訓練を行える施設は限られていますが,その中でも前腕の筋電義手が多くを占めています.今後の課題ですね.

まとめ

筋電義手の問題について解説をしました.

筋電義手はまだまだ発展途上の分野であり,支給はほぼ労災保険によるものですし,現状は訓練を行える施設も限られています.

しかし,その進歩はめざましく.コンピュータ膝継手の義足が少しずつ普及しつつあるのと同様に.いま国試を受けた皆さんがベテランになる頃には,また状況も変わってきているかもしれません.

知らないと解くのは難しい…でも今後セラピストとして必要となるかもしれない未来を見据えた問題と言えるかもしれません.

国試的に考えれば,大きな力を割く分野とは言えないかもしれませんが.今回の問題のようなメリットやデメリットなど基本的な概要に関しては,しっかり覚えておくと良いのではないでしょうか.

参考文献

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p110

澤村誠志,切断と義肢,医歯薬出版,第1版,p4,p150

公益財団法人テクノエイド協会,補装具費支給事務ガイドブック,p55

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000070149.pdf

Ottobock オットーボックの筋電義手

https://www.ottobock.co.jp/prosthetic_ue/myoelectric/

特例補装具・判定困難事例集 テクノエイド協会

http://www.techno-aids.or.jp/research/syogai2203.pdf

陳 隆明,筋電義手処方の判断基準,日本義肢装具学会誌,vol.21,No3,2005,p166

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo1985/21/3/21_3_166/_pdf

田中 宏太佳,日本における筋電電動義手の公的支給制度の現状,日本義肢装具学会誌,2014 年 30 巻 4 号 p. 219-222

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspo/30/4/30_219/_pdf/-char/ja

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