こんにちは,なぜなに。装具です.
今回は第54回作業療法士国家試験から,筋ジストロフィーの補装具に関する問題です.
厚生省筋萎縮症研究班の機能度分類によるステージ8のDuchenne型筋ジストロフィー患者に使用する補装具で適切のなのはどれか?
デュシャンヌ型筋ジストロフィーに用いられる補装具に関する問題ですが.実際は疾患の機能分類の知識に装具が付随する問題と言って良いかもしれません.
確認しておきたい点として
については知っておきたいですね.
特に機能分類のステージが何を指しているのか分からないと,この問題は解きようがないので.他の疾患と同様に代表的な分類はしっかりと覚えておきたいです.
デュシャンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の病態についてはそれぞれ確認していただくとして.今回の設問の中で重要な厚生省筋萎縮症研究班の機能障害分類について確認していきましょう.
DMDの機能分類の中では,最も多く用いられているものではないでしょうか?歩行の機能から進行度を知る上でも重要な分類ですね.
設問のステージ8では「座位保持不可能」となっています.
DMDではその進行と共に,必要となる補装具も移り変わっていきます.
stageⅤ以降歩行が困難となっても,装具により歩行を助け歩行期の延長をする役割を持ち.歩行が不可能になっても,起立を補助する装具や車いすによる移動手段の提供をし.車椅子駆動が困難な後には座位保持装置と電動車いすが用いられます.
疾患の進行と,社会生活に合わせた,補装具の選択が必要となります.
筋ジストロフィーでは,歩行能力に合わせた下肢装具.変形や拘縮の予防改善を目的とした上肢・体幹装具.移動手段としての車いすや座位保持装置が用いられます.
設問にある補装具がどのような状況で使用されるのか確認していきましょう.
頭部保護帽は,stageⅣ~Ⅴ以降で転倒のリスクがある場合に.その名の通り,転倒時に頭部への衝撃を保護することを目的として使用されます.
stageⅥ以降で,歩行や立ち上がりによる転倒リスクが起こらなくなるにつれて.使用されることは少なくなっていきます.
下肢・体幹の筋力や拘縮などによって転倒しやすい方向がある場合には.その方向のスポンジを厚くするなど調整が必要です.
要件を満たしていれば,障害者総合支援法による日常生活用具の給付の対象となっています.
標準型車椅子そのものについては,特に説明することは無いと思うのですが.
stageⅤ~Ⅶで歩行での移動が困難となって以降の移動手段として用いられます.
体幹の変形を伴うようになってくると,体幹装具やシーティングの併用が必要となってくる場合もあります.
車椅子自走は,歩行不可となった事による運動量の低下を補う事が出来るのですが.
無理な姿勢での自走は,体幹の変形などを助長するため.電動車いすへ移行する時期はよく見極める必要があります.
標準型車いすを,アシスト付きの自走式やスティック操作の電動車いすに変更できるユニットもあるので有効に使いたいです.
車いす電動ユニット YAMAHA発動機 JWX-2/JWX-1 PLUS+
https://www.yamaha-motor.co.jp/wheelchair/lineup/#unit
座位保持装置には様々な種類が考えられますが.DMDにおける座位保持装置は,stageⅧで用いられる人工呼吸器の搭載を前提とした電動車いすがベースとなります.
体幹の変形予防や,呼吸循環器に配慮したシーティングが行われています.
実際のところ変形の予防や矯正を行う力はそこまで大きくなく.姿勢保持を行うことで上肢を使いやすくする事などが主な目的と言えます.
歩行器はStageⅣの物につかまれば歩行可能な時期に使用されます.転倒防止策が講じられているものを使用することも多くあります.
サドル付きの歩行器はその代表的なものと言えるのではないでしょうか.
https://catalog.seiko-aruko.jp/products/detail/365
では,選択肢を見返していきましょう.
機能障害分類によるステージ8では「座位保持不可」でしたが.補装具を使用するステージの目安としては
1.頭部保護帽…StageⅣ~Ⅴ
2.標準型車椅子…StageⅤ~Ⅶ
3.座位保持装置…StageⅧ
4.PCW…StageⅣ
5.四輪型サドル付き歩行器…StageⅣ
となり正答は3.座位保持装置となります.
筋ジストロフィーに用いられる装具に関する問題の解説をしました.DMDの機能障害分類によるStageとそれに対応する補装具の知識が必要となる問題でしたね.
Stage8が「座位保持不可」という事だけでも知っていれば.消去法で答えを見つけ出せる問題ですが「疾患と装具の双方の知識が必要な少し難しい問題」と言えるかもしれません.
DMDの補装具はその進行にあわせて.上・下・体幹装具と車椅子・座位保持装置を適切なものをマネージメントする必要があります.
活動や参加を確保出来るように,しかし過負荷にならないように.補装具作成時には将来を見据えた上で様々な判断が必要となるという事は.国試の勉強をしつつ頭の片隅にきちんと残しておいて頂きたいと思います.
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p332
加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p168
米本恭三,最新リハビリテーション医学,医歯薬出版,第2版,p381
山本洋史,筋ジストロフィー患者への装具療法,日本義肢装具学会誌,2014, 30巻 1 号 ,p. 20-26
中村ブレイス株式会社 トップヘッド
http://www.nakamura-brace.co.jp/product/neck/tophead.html
日進医療器株式会社 製品案内
ヤマハ発動機株式会社 車椅子用電動ユニット
https://www.yamaha-motor.co.jp/wheelchair/lineup/#unit
今仙技術研究所 電動ティルト式普通型 EMC-260T/270T
https://www.imasengiken.co.jp/product/emc/emc-260t_270t.html
株式会社星光医療器製作所 アルコースイッチ
https://catalog.seiko-aruko.jp/products/detail/365