カテゴリー 国家試験解説

第55回理学療法士国家試験 午前-41 問題解説

こんにちは,なぜなに。装具です.

引き続きPTOT国家試験義肢装具関連問題の解説をしていきます.

今回は下肢装具のストラップに関する問題です.

問題を解くうえで

下肢装具に関わらず,装具を身体に固定する

ベルトやストラップには様々な役割があります.

前回と同様に装具の構成要素に関する問題ですね.

今回の問題はとても簡単です.

それよりも知っておかなくてはならないのが

  • 内反足・外反足を矯正するには?
  • 外側ストラップ(Tストラップ)について
  • 内側ストラップ(Yストラップ)について

という点ではないでしょうか.

内・外側ストラップに関わる問題もかなりの頻出です.

ややこしいですが一度理解できれば間違えないと思うので

何のためのストラップなのかしっかり覚えてしまいましょう.

内・外反足の矯正をするには

内反足外反足も様々な要因によって引き起こされる足部の変形であり

その矯正と体重支持をするために,装具が用いられる事が多いです.

これらの足部変形を予防・矯正するためには

一体どのような力を加える必要があるのでしょうか?

内反足の矯正

足部の変形はその原因や程度によって様々ですが

そのまま荷重を行うと関節への負荷が大きく,立位や歩行も困難で

部分的に荷重することで荷重部のトラブルにも繋がります.

改善が可能であれば矯正を行い,かつそれ以上の変形を予防したいですね.

装具のストラップというのは,あくまでも装具に固定を行うためのもので

考え方を変えると,手で押す事の延長でしかありません.

もし内反足の足関節を1箇所だけ押して改善しようとしたら

どこを押さえるのが良いでしょうか?

「足関節を1箇所押す」という条件ならば,

足関節を外側から押して変形を矯正しようとすると思います.

よりしっかり矯正するために他の場所も押すとなるとどうでしょう.

おそらくこういった3点固定をするのではないでしょうか.

関節の固定や矯正など力を加えるときには

関節を跨いだ3点を押さえることが大切ですね.

外反足の矯正

では同様に外反足を矯正する場合には

どのような力を加えるのが良いのでしょうか?

外反足を矯正する場合には,足関節に内側から力を加えると思います.

内反足の場合と少し異なるのは,上手に矯正力を加えるためには

低下した内側縦アーチを支えるように上方向の力も加えるという事です.

3点固定を行うとすると,このような押さえ方になると思います.

これが内・外反足の矯正を行う際の基本の固定となります.

装具とストラップでの矯正

手で押さえる3箇所が分かれば,装具力を加えるべき場所も同じです.

装具の本体付属するストラップを手の延長として考えてみましょう.

外側ストラップと内反足

内反足を足関節の1箇所を押して矯正する時は外側から押しました.

装具とストラップの関係は

ストラップが外側から押さえて内反矯正

装具の足部と下腿部が内側を支持することで3点固定を行っています.

外側ストラップは内反足を矯正します.

内側ストラップと外反足

外反足の矯正も同様です.

外反足を足関節の1箇所を押して矯正する時は内側から押しました.

装具とストラップの関係は

ストラップが内下方から押して外反足を矯正

装具の足部と下腿部が外側を支持することで3点固定を行っています.

内側ストラップは外反足を矯正するわけですね.

外側・内側ストラップという言葉だけで覚えようとすると

なかなか印象に残りにくいと思いますが.

役割が分かれば,1度覚えれば忘れにくいのではないかと思います.

解答の考え方

内・外側ストラップについて解説してきましたが.

外側ストラップ付き短下肢装具の使用が最も適切なのは

4.内反尖足

となりますね.

外側ストラップという時点で前額面上の動きに対して働くので

1.歩行中の膝折れ

2.足クローヌス

3.深部感覚障害

は他に適切な選択肢があるので外れてきます.

また外側ストラップは基本的に足関節に直接働くものなので

5.外反膝

も選択肢から外れます.

明らかな正答である内反尖足を迷わず選びたいですね.

補足知識

外側・内側ストラップは別名.

TストラップYストラップと呼ばれます.

これも言葉だけで覚えようとすると,どっちがどっちだっけ?となりますが.

それぞれがどういった働きをしているか知っていれば

すぐに分かるのではないかと思います.

先程解説したとおり,内反足を矯正する外側ストラップ

外側から内側に押さえるためのベルトで

展開すると「T字」の形状をしています.

一方で外反足を矯正する内側ストラップ

内側から外側へ押さえるとともに

低下した内側縦アーチを下から押し上げる力も加わるので

展開すると「Y字」の形状をしています.

T・Yストラップはその役割と形状を表した名称です.

何事もそうですが,役割を知って知識が整理されると

「そりゃそうだよね」と思えるのではないかと思います.

義肢装具関連はその名称と役割を関連付けて

知識を覚えていくのがとても大切ですね.

まとめ

第55回理学療法士国家試験 午前-41

変形の矯正とストラップについて解説をしてきました.

今回は「基本中の基本で,絶対に落としてはダメ」

といった難易度の問題と言えると思います.

装具とストラップでの固定は,あくまで手で押さえる事の延長で

何か特別なことをしている訳ではなく

装着時は常にその効果が得られるということが大きなメリットです.

名称だけ見るとなんだコレ?という物も

役割を知っていればとても簡単な問題に変わります.

こういったストラップをはじめ,装具にはなにかの症状を改善するための

特定の目的を持った構成要素があるので,それが何のためにあるのか

その目的から学んでいくと知識に繋がると思います.

参考文献

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p236

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p69

第55回理学療法士国家試験、第55回作業療法士国家試験の問題および正答について

厚生労働省HP

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp200414-08_09.html

関連問題

内・外反ストラップが設問に関わっているものはコチラ

PT国試,義肢装具関連問題解説していきましょう!今回は第53回理学療法士国家試験午後の8問目から,短下肢装具のチェックアウトと調整に関する問題です.実際の臨床でも,非常に出会う事が多い状況設定なので.どのような調整を,装具や継手に行うのか.しっかりと覚えておきたい問題です.70歳男性,脳梗塞による左片麻痺.Brunnstrom法ステージは下肢Ⅲ.関節可...
第53回理学療法士国家試験解説PM-08 短下肢装具の調整 - なぜなに。装具 まとめ

元つぶやき

Twitterでのつぶやきを再編したものです.

元のつぶやきはコチラ

NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.