第53回理学療法士国家試験解説 AM-13 長下肢装具の構成要素

第53回理学療法士国家試験解説 AM-13 長下肢装具の構成要素

義肢装具関連問題解説していきましょう.

第53回理学療法士国家試験午前の13問目から,長下肢装具の構成要素とチェックポイントに関する問題です.長下肢装具を扱う上での基本的な部分となってくるので国家試験関係なくしっかり覚えておきたい問題となっています.

図に示す両側支柱付長下肢装具について正しいのはどれか.2つ選べ.

問題を解くうえで

下肢装具の適合チェックポイントは,装具について勉強する時に,最初に手を付けると言っても良いくらい基本的な問題ではないかと思います.

今回はそんな,長下肢装具(KAFO)の構成要素と適合チェックに関する問題です.

この問題を解くうえで知っておきたいのは

  • カフ(半月)の設定位置
  • 膝継手の種類
  • 足継手の種類
  • その他の構成要素

についてです.

種類が多いので,今回は設問に関わる部分に触れていきますが.下肢装具を知る上で非常に重要な内容なので.これらの内容は全体的なチェックをオススメします.

下肢装具のカフ位置設定

KAFOのカフは,主に支柱から出ている金属製の半月と,固定のためのベルトの事を合わせて呼ぶことが多いです.

  • 大腿近位カフ
  • 大腿遠位カフ
  • 下腿カフ

が基本的な構成となっています.

装具と下肢を固定する重要な部分ですが.その位置設定にはある程度ルールが定められています.

身体を覆う面積が多すぎると邪魔になり,少なすぎると固定力が少なくなるので.適合チェックする際にも重要なポイントです.

大腿近位カフの位置

KAFOの一番上についているカフが大腿近位カフです.

位置の設定の基準は,カフの上縁が

  • 外側で大転子下端より下2~3cm
  • 内側で会陰部下2~3cm

とされています.

骨突起部である大転子会陰部柱やカフが食い込まないようにこのような設定となっています.装具の全長を決める設定でもあるので,必要な固定力を得るために高すぎず低すぎない位置に設定する必要があります.

下腿カフの位置

先に下腿カフの位置から確認しましょう.

位置の設定の基準は,カフの上縁が

  • 腓骨頭下端より下2~3cm

とされています.

これは腓骨頭そのものを避けるというのもありますが.腓骨頭下の体表近くを腓骨神経が走行しているため.カフのよる圧迫が起こらないよう設定されています.

カットダウンしてAFOとして使用する場合には,AFOの固定力に関わるので高すぎず低すぎない設定が必要となりますね.

大腿遠位カフの位置

大腿遠位カフの位置は,下腿カフの位置によって決まります

  • 下腿カフの上縁と大腿遠位カフの下縁が膝継手から等距離

となるように設定されています.

膝継手を最大屈曲していくと,下腿カフの上縁と大腿遠位カフの下縁同士がぶつかるような位置となっています.

解答の考え方

ここからは選択肢を見ながら確認していきましょう.

外側支柱(大腿近位カフ)の位置

まず1.外側支柱の高さは大転子から6cm下にする.ですが,大腿近位カフと外側支柱の高さは大転子から2~3cm下に設定するので,ちょっと隙間が空きすぎですね.

短めのKAFOを選択する場合もあるので,完全な誤りではないのですが.基本的なKAFOの設定ではないので,一時保留の選択肢なのですが結果的にこれは誤りです

オフセット式膝継手

2.膝継手はオフセット式である.ですが,図を見ると通常のリングロック膝継手のように見えますので誤りです.

オフセット膝継手は,継手の軸が通常よりも後方に設定されています

そのため歩行などで,床反力が後方に移動していく時に.リングロックであれば膝屈曲モーメントとして働くような場面でも.

オフセット式の膝継手は膝伸展モーメントとして働く期間が長く.膝折れを防ぐことが出来るというものです.

下腿半月(カフ)の位置

3.下腿半月の位置は膝関節裂隙から2cm下にする.は誤りですね.

下腿カフの位置腓骨頭下端から2~3cm下に設定します.

ダブルクレンザック式足継手

足継手の種類は本当に多くありますが,その中でも最も知っておかなければならない足継手が.ダブルクレンザック継手です.

重さや外観というデメリットはありますが.強固に,かつ調整の幅が広くどのような状況にも対応しやすい継手です.

というわけで,4.足継手はダブルクレンザックである.1つ目の正答です.

KAFOのカットダウン

脳卒中などで使用する両側支柱付き長下肢装具は,その回復の過程にあわせてカットダウンを行いKAFOからAFOとして使用していく場合が多くあります

AFOから,ネジなどで膝継手より上のパーツが取り外せるようになっています.図をよく見るとAFOに支柱は2本重なっています.

というわけで,5.短下肢装具へと変更可能である.2つ目の正答です.

まとめ

長下肢装具の構成要素に関する問題について解説しました.

適合のチェックポイント,膝・足継手,運用の方法など長下肢装具に関する基本がまとまった問題でしたね.装具について勉強する上で「この問題は絶対に落としたくない」と言える問題ではないかと思います.

下肢装具はこういった別資料つきの問題でよく出題されています.図を見て答えを考える事も多くあるので.勉強をする際には教科書などの絵をよく見ながら,図と文章の知識が一致するように注意していきたいですね!

参考資料

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p230

第53回理学療法士国家試験、第53回作業療法士国家試験の問題および正答について

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-08_09.html

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