こんにちは,なぜなに。装具です.義肢装具関連問題解説していきましょう!
今回は第53回理学療法士国家試験午前の31問目から,下腿義足のアライメントに関する問題です.
義足アライメントに関する問題は,ほぼ毎年と言ってもよい位によく目にする頻出問題です.考え方さえ1度理解すれば間違えにくい問題なので.大腿・下腿義足のスタティック・ダイナミックアライメントに関してはしっかり勉強しておきましょう.
歩行において下腿義足の初期内転角が不足している時に生じる現象はどれか.
問題を解くうえで
今回は下腿義足の歩行中のアライメント,つまりダイナミックアライメントに関する問題ですね.義足アライメントに関する問題ではとても良く見かけるタイプの問題ではないかと思います.
問題を解くうえで知っておきたいのは
- 義足アライメントの種類
- ソケットの内転角度と異常歩行
ではないでしょうか.
多くの問題で共通の知識となるのでしっかりと復習しておきましょう.
ソケットの初期内転角不足
義足は患者さんの足を型取りした物や得た情報を元に組み上げられていきます.
それはベンチアライメントと呼ばれていますが.初期内転角の設定はその中の1つで,組み上げていく際にソケット(断端)が内転位となるように作成されています.
初期内転角度は膝の生理的外反に断端と義足のアライメントを近づけるために設定されているものです.基本は5°程度ですが,断端長や反対足のアライメント次第で変わってきます.
詳細はコチラの義足アライメントの種類を御覧ください
初期内転角の少ない下腿義足というのは,ソケットが相対的に外転位となっている義足です.少し大袈裟にして考えてみるとどんな設定なのか分かりやすいのではないでしょうか.
当然この状態で荷重したり歩行をすれば様々な異常が起こってしまいます.
内転角不足の異常歩行
ソケットの内転角の不足で起こる異常は
- ソケット内側近位に圧迫
- ソケット外側遠位に圧迫
- ソケット外側近位に緩み
- 足部内側が浮き上がる
- 義足の外倒れ
となります.
この状態で荷重したらどうなるだろう…と想像してみると考えるのも結構簡単ではないでしょうか?
解答の考え方
では選択肢を見ていきましょう.
内転角が足りない場合に生じる異常は,先程も触れたとおり.1.断端外側遠位部に圧迫感が生じる.が正答です.
3.踵接地時に義足足部が回旋する.は義足足部の踵が硬かったり,単軸足部の場合は後方バンパーが硬すぎる場合に起こります.
装具も踵部が硬いと下肢の外旋が起こりますし,靴も踵が硬いと起こる共通の現象といえますね.
5.歩隔が広い.は見たとおり相対的に足部は内側に位置するため.歩隔は狭くなってしまいますので誤りですね.
まとめ
下腿義足のアライメントに関する問題について解説しました.
「設問にある条件を,ちょっと大袈裟に自分で絵に書いてみて.その状態で荷重したらどうなるか考える」というのは,アライメントの問題に共通する問題の解き方ではないかと思います.
とてもよく目にする問題ですし「落としたくない問題」と言えるのではないかと思います.
似たような問題も多いのでチェックしておきましょう.
参考文献
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p161
澤村誠志,切断と義肢,医歯薬出版,第1版,p339