カテゴリー 国家試験解説

第53回理学療法士国家試験解説PM-08 短下肢装具の調整

PT国試,義肢装具関連問題解説していきましょう!

今回は第53回理学療法士国家試験午後の8問目から,短下肢装具のチェックアウトと調整に関する問題です.

実際の臨床でも,非常に出会う事が多い状況設定なので.どのような調整を,装具や継手に行うのか.しっかりと覚えておきたい問題です.

70歳男性,脳梗塞による左片麻痺.Brunnstrom法ステージは下肢Ⅲ.関節可動域制限はない.ダブルクレンザック足継手付き両側金属支柱型短下肢装具を用いて歩行練習を実施している.足継手を背屈0~20°で可動するように設定すると左立脚中期に膝折れが出現した.装具の調整で正しいのはどれか.

問題を解くうえで

両側支柱付短下肢装具を使用している際に,背屈可動域を広げたら膝折れが出現するようになったという.実際に起こりうる,臨床に近い設問となっています.

ポイントとなる点としては

  • 足関節の背屈制約と底屈制約
  • ダブルクレンザック継手
  • 装具に行われる調整方法

でしょうか.

短下肢装具が膝関節を制御する上で,基本中の基本とも言える考え方なので.この問題は国試関係なくしっかりと押さえておきたいですね.

ダブルクレンザック足継手

ダブルクレンザック足継手は,多くの種類がある足継手の中でも多く使用されている足継手のうちの1つではないでしょうか.

金属支柱と一体化しており,あぶみと共に構成されます.その作りから内・外反の制御に優れており.全ての足継手の中でも「最も」と言って良い強固な固定と行うことが出来ます

また,調整可能な範囲も広く.底背屈を固定・制限・遊動と変える事が可能です.

金属製なので,重く,ゴツくて,いかにも「装具」といった外観をしているといったデメリットはあるものの.

強い筋緊張がある場合には,ほぼこの選択と言って良いほど.装具検討時の1つの基準となっている継手です.

前後2本のロッドを調整することで,底背屈の制限角度を調整することが出来ます.おそらく学校の授業でも触れる機会があったのではないでしょうか?

脳卒中の装具では,回復の過程や取り組みたい課題によって.装具の制約を状況に合わせて調整していく必要があります.装具に触れる機会があるセラピストは絶対に知っておきたい調整ですね.

足継手の制約が膝関節に与える影響

1つの関節の制御は,隣接する関節にも影響を与えます.特に立位での下肢はその影響が大きく,足関節の制約は膝関節の制御に影響します.

立位で足関節の背屈が制限されると,下腿の前傾が制限され膝屈曲を制御することが出来ますし.逆に足関節の底屈が制限すると,下腿の後傾が制限されて膝過伸展を制御することが出来ます.

装具の足継手はこれを利用して,膝折れを防いだり,尖足によって起こる反張膝を抑制しています.1つの継手が足関節と膝関節の2つを制御している訳ですね.

これは装具を扱う基本であり,下肢のコントロールを行う上で非常に有用であると共に大きな悩みのタネでもあります.

隣接する関節に影響があるといっても,直接膝関節の制御を行うのとは違い制御できる限界があります.膝が全くコントロール出来ない場合には,足関節から間接的に制御するだけでは不十分で膝関節への制約が必要となります.

つまり,短下肢装具(AFO)が必要か?長下肢装具(KAFO)が必要か?という事になってくる訳ですね.しかも,装具が完成した時点での機能を予測しなくてはなりません.

使用開始時に,どれだけの膝コントロールを獲得していて.どのような装具が必要となるかは.装具を検討していく上で永遠の課題となるのではないでしょうか.

解答の考え方

では,ここからは選択肢を見ながら考えていきましょう.

重要なのは,足継手を背屈0~20°で可動するように設定すると,立脚中期に膝折れが発生したということですね.

足継手の可動範囲を背屈0~5°に設定する

これが正答ですね.順をおってみていきましょう.

背屈方向の可動域が固定されていた時には起こっていなかった膝折れが,背屈可動域を20°増やした事によって起こってしまっています.

前記したとおり,足関節の制約を行うことで隣接する膝関節の制御を装具が助けていたが.背屈の制約を無くした事で装具の働きがなくなり,制御出来なくなってしまった訳ですね.

膝の屈曲を許して,膝が屈曲すればするほど.膝軸と体重心(床反力)は離れていき大きな膝屈曲モーメントが働き.更に制御が出来なくなるという状態に陥ってしまいます.

そこで,固定ではないものの.0~5°の遊動という制約を足継手で行うことで.膝折れしないよう制御することが出来ます.

膝軸が体重心(床反力)からも離れにくく膝屈曲モーメントの働きも小さいので.膝の屈曲を自身で制御可能な範囲に留めることが出来ます

転倒しそうな人を,重心が基底面から離れすぎないうちに支えないと.支えきれないのをイメージすると分かりやすいでしょうか?

これは臨床上でも,とても良く行われる調整で.運動の獲得が進み,次のステップに進む際にいきなり制約を全部無くすと難易度が高すぎる場合に.なんとか制御できる範囲で制約を行い,段階を経て制約する角度を減らしていきます.

スウェーデン式膝装具を併用する

これは誤りですね.

スウェーデン式膝装具は,「過伸展防止」を目的とした膝装具です.その特徴から国試でもよく顔を出すので覚えておきたい装具ですね.

過伸展防止装具は今回は当てはまりませんが,膝折れを防ぐために膝伸展を保持出来る装具を併用するのは比較的よく行われる方法ではないでしょうか.

主にKAFOをカットダウンしてAFOとして使用していく際に用いられる事が多いですが.

いきなり膝継手の制約が完全に無くなってしまうのは,練習の難易度が高すぎる場合があります.

そういった場合に,難易度調整にもう1つの段階を作るために.膝装具を併用して若干の制約をして膝折れを防ぎつつ.膝装具を外せる程度のコントロールを身に着けていきます.

スウェーデン式膝装具

Tストラップを追加する

これも誤りです.

Tストラップ(外側ストラップ)は,「足関節内反の矯正」を目的として使用されるベルトの一種です.症状の変化によって内反の緊張が強くなった場合に追加されたり.

内反の緊張が強すぎて装具内に足がきちんと収まらず,装具と一部だけで接触して傷ができる恐れがある場合などに.内反を制御するために使用されます.

膝折れとはあまり関係がないです.

外側ウェッジをいれる

多くの場合で外側ウェッジヒールを指すと思うのですが.これも誤りです.

足・膝関節の前額面のアライメントの補正を目的として行われるもので.膝折れとは無関係ですね.

内反が強く,重心が外側に偏ってしまう場合などに装具底面に行います.

装具の踵を補高する

これも誤りですね.

装具の踵部を補高すると.継手の角度を変更しなければ相対的に前傾した装具となります.

下腿は前傾するので,膝折れしやすくなり逆効果ですね.

筋緊張強く,尖足を制御出来ない場合には.装具を尖足に合わせて底屈位に調整し.踵部に補高を行って踵接地を行えるように調整する場合があります.

まとめ

短下肢装具のチェックアウトと調整について解説しました.

設問や選択肢に出てきた装具の調整方法は,下肢装具に触れる機会があれば必ず行う場面に出会うと言ってもよいほど.臨床に即した問題だったのではないでしょうか.

国家試験はもちろん,装具を扱う資格を持つ上で絶対に知っておきたい問題」といえるかもしれません.義肢装具士さんが常駐している施設は限られていますし,調整は全ておまかせではプログラムに支障が出ます

簡単な調整は自分で行う必要がありますし.卒後に勉強していく上でも対応の引き出しは多く持っておきたいですね.

参考資料

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p237

加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p62

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p69

Kirsten Gotz-Neumann,観察による歩行分析,医学書院,第1版,p63

第53回理学療法士国家試験、第53回作業療法士国家試験の問題および正答について

https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp180511-08_09.html

阿部 浩明,急性期から行う脳卒中重度片麻痺例に対する歩行トレーニング(第二部),理学療法の歩み,2017 年 28 巻 1 号 p. 11-20

https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/28/1/28_11/_article/-char/ja/

NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.