こんにちは,なぜなに。装具です.
第54理学療法士国家試験の義肢装具関連問題
今回は下腿義足のスタティックアライメントについてです.
第54回は珍しいことに,午前に大腿義足のダイナミックアライメント
午後に下腿義足のスタティックアライメントが出題されています.
考えるべき事の大筋は一緒です.
義足の操作を行う主要な関節が
股関節と膝関節の違いがある
という事をしっかり頭に入れて
両方の問題を整理しながら学べば
義足のアライメントに関しては
かなり掴めてくると思います!
今回の義足アライメント問題を考える時のポイントは
についてです.確認しながら考えていきましょう.
義足のアライメントには
の3種類があります.
それぞれの場面で見るべき点が変わってきます.
ベンチアライメントは
採型したモデルから
義足を作成する際に
患者さんから得た情報を元に
組み上げる基本となるものです.
「義足のみ」のアライメントで
ここから調整がスタートします.
セラピストとしては,POさんがこの状態で組み上げて持ってきてくれるので
このアライメントについて考えることはほぼないです.
また,このベンチアライメントでは
初期内転角度と初期屈曲角度が
ソケットに設定されています.
初期内転角度は膝の生理的外反に
断端と義足のアライメントを近づける
ために設定されているものです.
基本は5°程度ですが,断端長や
反対足のアライメント次第で変わります
初期屈曲角度は,ソケット前面で
体重支持をしやすくするとともに.
膝伸展筋の効率を良くすることを
目的として設定されています.
初期内転角が生理的アライメントに
近づける事を目的とするのに対して,
初期屈曲角度は義足の機能を
向上させる事を目的としています.
基本は5°程度ですが,拘縮がある場合
その角度は更に大きくなります.
スタティック(静的)アライメントは
実際に義足を装着して判断する
身体と義足を見たアライメントです.
握りこぶし程度足を開いて
両側に均等に荷重した状態で
ソケットの適合と義足アライメントを
チェックし調整を行います.
ダイナミック(動的)アライメントは
スタティックアライメントを調整し
歩行の安全を確保してから行われます
実際に歩いてみて,快適に歩ける
アライメントに調整します.
義足のアライメントはこのようなステップを踏んで調整されていきます.
かけられる荷重や,断端の状態の変化によって.
ソケットと義足アライメントは適宜調整を求められます.
調整する時は,まずスタティックを見てから
ダイナミックアライメントの調整を行うと,問題箇所の修正を行いやすいですね
それでは,問題を見返しながらポイントを押さえていきましょう.
問題文を読んでいくと
「つま先の浮き上がり」が観察され
「膝折れを起こしそう」な不安感
という問題があります.
これは「矢状面」での問題ですよね.
基本的に起こっている異常と,行うべき調整は同じ運動面で行われるものです.
そこで選択肢を見てみると
となり,実質2.と4.の二択の問題ということがわかります.
では問題を整理してみましょう.
立位姿勢をとった時には,「つま先の浮き上がり」が見られる.
この状態で,全面で足底接地しようとすると.
膝屈曲位をとるため「膝折れ感」に繋がっている訳ですね.
こうして図にして整理すると,見ただけで分かると思うのですが.
「ソケットの屈曲角度を減らす」と良いアライメントになりそうですよね.
静止立位で全面足底接地できるようになります.
というわけで,4.初期屈曲角度を減らすが正答です.
もし,アライメント不良が分からなくなってしまっても.
足底全面接地時を基準にして,静止立位を取った時に
義足がどこかの方向に向かって倒れるのであれば
その方向にソケットの角度を傾けるとアライメントが改善します.
また,「足部のどこかが浮いている」という現象は
ソケットか足部の角度に問題がある場合と考えて良いです.
実際の義足を調整する際には,
いくつもの原因が複合しているのでその限りではないですが.
問題を1つずつ解決していったほうが,分かりやすいと思います.
下腿義足のスタティックアライメントに関する問題を解説しました.
スタティックアライメントを考える時に大切なのは,
起こっている現象を1つずつ整理して,問題となっている箇所を
1つずつ解決していくことだと思います.
今回のアライメントの問題も
「一見難しそうだけれど,冷静になってみると簡単」
という問題と言えそうです.
義足アライメントの問題のほとんどは
「この知識がないと解きようがない」という問題ではないので.
落ち着いて時間を作って解くようにするのが大切かもしれませんね.
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p161
澤村誠志,切断と義肢,医歯薬出版,第1版,p339