こんにちは,なぜなに。装具です.
第54回理学療法士国家試験の義肢装具関連問題について.今回は選択肢に装具が登場しているというだけですが.発育性股関節形成不全という疾患とは切り離せない存在であるリーメンビューゲル装具についてです.
今回は疾患に関する問題なので,発育性股関節形成不全に関するポイントを確認しつつ,その治療に用いられる方法の1つであるリーメンビューゲルについて触れていきましょう.
発育性股関節形成不全は周産期および出生後の発育過程で大腿骨頭が関節包の中で後上方へ脱臼している状態の事です.
骨頭と寛骨臼の適合性・求心性が不十分なまま股関節が成長すると臼蓋形成不全となり,将来の二次性変股症の原因となります.
3.4ヶ月健診で開排制限が指摘されて,受診することが多いです.
・新生児期
厚めのおむつを付け,抱き方などに注意しながら経過観察
・乳児期
リーメンビューゲル装具を用いて整復を目指す.整復されない場合にはオーバーヘッド牽引を行う.それでも難しい場合には麻酔・関節造影下での徒手整復を行い.これらの保存療法でも脱臼の整復と骨頭の安定が得られない場合には観血的整復が行われる.
・幼児期
まずは保存療法を試みるが,歩行後日時が経ったものは観血的整復に移行する事が多い.
リーメンビューゲルは,股関節と膝関節の伸展のみを制限し,他の動きは自由にする機能的治療法に用いられる装具です.下肢を蹴り出す伸展力を,股関節外転力に変えて開排位を保ち脱臼の自然整復を促すもので.発育性股関節形成不全の初期治療に用いられる事が多い.
1歳以前では整復が得られやすいが,1歳以後になると整復が得られにくいものの,徒手整復や観血整復の準備としての意義は大きいと言われています.
整復率は80%程度と言われており,装着期間は様々だが1ヶ月ほどで整復を確認しながら様子を見ることが多いのではないでしょうか.装具の中では珍しく「着けているだけで,治る可能性がある」装具です.
一方で,リーメンビューゲルに関わらず,発育性股関節形成不全の治療において.「骨頭障害を起こさないこと」と「整復すること」の両立が求められます.
強すぎる求心位は骨頭障害を起こす可能性があり,装着期間やベルト位置の設定は,強すぎて骨頭障害を起こさず,かつ整復位にあるテンションが必要とされ非常にデリケートです.
熟練の医師の指示を元に確認しながら,ご家族に正しい装着方法をお伝えする必要があります.
では選択肢を見返していきましょう.
1.開排は制限されない.は誤りですね.発育性股関節形成不全の診断をする際にも開排制限は重要な所見です.
2.大腿骨頭の前方脱臼が多い.も誤りです.後上方への脱臼が多いです.
3.二次的な変形性股関節症にはなりにくい.も誤りです.治療を進めていく上で二次性変股症には十分注意を向けなくてはいけません.
4.7歳以上では外転保持免荷装具を用いる.とありますが,この「外転保持免荷装具」は主にペルテス病で使用される装具のことで誤りですね.
5.乳児期ではリーメンビューゲル装具を用いる.が正答ですね.
発育性股関節形成不全に用いられるリーメンビューゲル装具について解説しました.
国家試験の勉強という点で見ると,このリーメンビューゲルは数年に1度は出題される非常に頻出な装具です.問題文中にも出てきた,同じ股関節の疾患であるペルテス病で用いられる各装具と共に覚えておきましょう.
今回の問題は「しっかり勉強して間違えないようにしたい問題」と言えますね.国試では特定の疾患とセットで扱われる装具がいくつかあり,リーメンビューゲルはその代表的な1つなのでチェックしておきたいですね.
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p259
松野丈夫 ほか(編集),標準整形外科学,医学書院,第12版,2015,p613
加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p301