こんにちは,なぜなに。装具です.
第54回理学療法士国家試験の義肢装具関連問題について.前回に引き続き,疾患に関する設問の選択肢に装具が登場する問題の解説です.
Perthes病という疾患もまた,ペルテス病用の装具は切り離せない存在です.
いわゆる小児装具,に分類される装具では.疾患と関わりが非常に多い装具がいくつかあります.
前回お話したリーメンビューゲルはその代表的なものの1つでしたが.今回解説するペルテス病の装具も,国家試験上では,セット扱いされると言っても良いくらいです.
股関節に起こる,小児骨関節疾患という共通点もあるので.発育性股関節形成不全とPerthes病は一緒に復習してしっかり覚えてしまいましょう.
前回の発育性股関節形成不全とリーメンビューゲルに関する解説はコチラから↓
ペルテス病は大腿骨頭骨端部が阻血性壊死をきたす疾患であり,3~10歳の男児に好発する.多くは片側性で,両側性は15~20%とされている.
若年齢ほど経過が良いと言われ,治療開始の病期や,骨頭の壊死範囲などが予後を左右する因子とされる.
予防は困難で,早期発見,早期治療が重要であり.壊死部が新生骨に置き換わり修復するまでの期間を,いかに骨頭の圧潰を生じさせずに二次性股関節症の発生を防止できるかが重要となる.
保存療法では装具を用いて,股関節を外転・内旋し,骨頭を寛骨臼内に包み込むcontainment療法が行われ,骨頭の圧潰を生じさせずに修復を待つ.
手術療法では,大腿骨内反骨切り術がよく行われる.治療期間を短縮して早期に荷重し,学校における種々の生活に対応できるよう手術療法が選択されることも多い.
ペルテス病の装具は主に
事を目的として使用されます.
前記の通り,股関節を外転・内旋して,骨頭を求心位とする事が基本となっており.そこから免荷タイプ,非免荷タイプに分かれます.
骨頭壊死を起こし,免荷が必要と判断された場合には免荷タイプが用いられます.患側のみの装着なので活動性を損ないにくいですが,長期間の装着が必要な装具のため免荷側に筋萎縮や脚長差が見られることがあるので注意が必要です.
代表的なものにトライラテラル型(タヒジャン型)やポーゴスティック型が挙げられます.
股関節を外転位に保ち,骨頭が臼蓋内にあれば.荷重しても整復が見込まれる場合に非免荷タイプが用いられる事もあります.
外転保持が行いやすい反面,両側に装着が必要であるため歩行が難しく.装着時に幅を取るため活動性が制限される場合があるので注意が必要です.
代表的な物にトロント型が挙げられます.
では選択肢を見返していきましょう.
1.女児に多い.は誤りです.約5:1=男:女で男児に多い疾患です.
2.大腿骨頭の阻血性壊死である.これは正答の1つ目ですね.
3.発症年齢が高いほど予後が良い.も誤りです.重症度を左右する要因はいくつかありますが,発病時の年齢が若年ほど予後は良いと言われています.
4.免荷を目的とした装具療法が行われる.これが正答の2つ目ですね.
5.片側性に比べ両側性に発症することが多い.は誤りです.片側性の方が多いですね.
骨頭の整復が行われるまでの長期間必要となってしまう事が多いペルテス用装具は,その好発年齢もあいまって活動の制限をしてしまいがちです.
その一方で,とても活発な子も多く.装具装着状態でも,大人が想像できないくらいに上手に装具を使いこなして動いたり遊んだりしている事もあります.
「やった方が良いこと」「やってはダメなこと」「やる時に注意が必要なこと」を本人とご家族にきちんと分けてお伝えすることが大切ですね.そのルールの中で上手に遊ぶ方法を,私達が教えてもらう事があるくらいです.
また,そんな活動の中で.金属製のパーツも多い丈夫な装具ではありますが.良くも悪くも装具にがっちり体重を預けてガンガン動くので,とても大きな負荷がかかってしまう事も多いです.
特にパッテン底のスベリ止めゴムは,使っていると削れていってしまうので.アライメントが変わるほど消耗していないかどうか注意しましょう.また金属部分も摩耗がないかチェックしておきたいですね.
Perthes病に用いられる,股関節外転保持装具について解説しました.
ペルテス病の装具は,その疾患の病態と共に国家試験でよく出題される問題です.細かい装具の名称が問われることはあまりない気がしますが.代表的なものの名称は知っておいたほうが良いかもしれません.
装具として重要なのは,免荷の有無と股関節を外転・内旋するという事です.ここはしっかり押さえておきましょう.
今回の問題も「しっかり勉強して間違えないようにしたい問題」ではないでしょうか.2つ選べという問題ですが,基本的な病態に関する問題ですので落とさないようにチェックしておきたいですね.
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p259
松野丈夫 ほか(編集),標準整形外科学,医学書院,第12版,2015,p621
加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p292
細田多穂,シンプル理学療法学シリーズ 義肢装具学テキスト,南江堂,改訂第2版,p154