PT国試義肢装具関連問題の解説.今回は第57回理学療法士国家試験午前の7問目から.脊髄損傷の機能残存と長下肢装具に関する問題です.
今回の問題については,義肢装具そのものはオマケみたいなもので.重要なのは,脊髄損傷の機能残存を理解しているのかどうかです.
とはいえ,長下肢装具が何をしている装具なの?という事が分からなければ解きようがないので.基本的な部分についてはしっかりと押さえておきたいですね.
28歳の男性.脊髄完全損傷.両側に長下肢装具を使用し,平行棒内歩行練習を行っている.歩行パターンを図に示す.機能残存レベルはどれか.
問題を解くうえで
装具そのものについては,本当に基本的なポイントであり.脊髄損傷の機能残存レベルも国家試験の勉強をしていく上で,絶対に押さえておかなくてはならないポイントです.
- 長下肢装具ってどんな装具?
- 下肢の機能残存レベル
についてチェックしていきましょう.
長下肢装具ってどんな装具?
では,長下肢装具がどのような役割を持った装具なのか確認していきましょう.
といっても,今回重要なのは本当にシンプルで.どの関節に影響を与えているのか?という事です.
問題文の絵を見れば,それだけで分かってしまうかもしれませんが.
長下肢装具は,足部・下腿部・大腿部を覆い.足・膝関節を制約する継手を持つ装具です.
足・膝関節の固定や制限を行うことができますが,股関節に対しては,何の制約も与えていません.下肢を振り出すための股関節(と体幹)は自身で制御をする必要があります.
今回の問題の装具が関わる部分は「これだけ」です.
下肢の機能残存
冒頭でもお話した通り,今回の問題でより重要なのは.脊髄損傷による下肢の機能残存レベルについての理解です.今回は下肢についてですが,Zancolliの四肢麻痺上肢機能分類などと合わせて上肢装具の問題でも.こういった形式の出題がよくされるので,脊髄損傷についての該当部分はしっかりチェックしておきたいですね.
解答の考え方
では長下肢装具の役割と,下肢の機能残存レベルを照らし合わせてみましょう.
今回,問題を解くうえで気を付けてほしい点として.「歩行練習」と「実用の移動手段」では答えが変わってくる場合があるという点です.
歩行練習では,全く出来ない事は練習が出来ないですし.逆に上手に出来る事を練習しても意味が薄くなってしまいます.移動手段では「実用レベル」であることが重要となりますね.それを踏まえて,上記の機能残存レベルの表には答えが載っていますが.
3.Th12が長下肢装具と平行棒を用いて歩行練習を行う機能残存レベルとなっています.
骨盤の引き上げによって作られた遊脚を振り出す事が可能で,長下肢装具によって足・膝関節は制限を行います.
Th6レベルの場合には,それが出来ないため.骨盤と下肢を股継手によって連結し.左右の体重移動によって遊脚を作り出して下肢を振り出すために.骨盤帯付きの長下肢装具が必要となってしまいます.
逆にL4レベルでは,膝の伸展が可能であるため.長下肢装具についている膝継手による制限は邪魔ものでしかありません.短下肢装具+杖で歩行が可能となります.
まとめ
脊髄損傷の機能残存と長下肢装具に関する問題について解説をしました.
今回の問題は,義肢装具関連問題というよりは,その他の分野の問題に義肢装具がくっついているだけというものでしたが.国家試験の義肢装具関連問題のうち何割かはこういったものが多いです.
脊髄損傷についても,基本的な知識で解くことが出来るものなので,こういった問題は落とすことがないようにしっかりチェックしておきたいですね!
参考資料
最新リハビリテーション医学,監修 米本恭三,医歯薬出版株式会社,第2版,p250
第57回理学療法士国家試験、第57回作業療法士国家試験の問題および正答について
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/topics/tp220421-08_09.html