すっかり寒くなって,記事を書いている今,12月に突入しました.
そろそろ国家試験の勉強にも本腰を入れなくては,と思っている受験生が多いのではないでしょうか.
言うまでもなく,多くの科目があり.義肢装具もその中の分野の1つです.
ちょこちょこ,義肢装具の国家試験問題についてご質問をいただく事がありますが.
そんな中で,どこから手をつけていけばいいのか?といった内容のものもあります.
勉強の進捗も人それぞれ違うので,その方法も良い方法は変わってくると思いますが.「まだ義肢装具の分野にほとんど手を付けてない!」という方は,参考にしていただくと良いのではないでしょうか.
国家試験としてみれば,1つの分野ですが.毎年決して無視できない量が出題されています.多い年では7~8問ある時もあり,実地問題に配置されている事も多く.もし全て落としてしまっては,大きなビハインドをおう事となってしまいます.
また,国家試験の先にある卒業後の事を思うと.義肢装具と「全く関わりがない」分野というのもそうないため.自身のため,ひいては患者さんや利用者さんのために.重要なポイントについてはしっかり身につけておきたいですね!
「そりゃそうだろう」と思う方がほとんどかもしれませんが.義肢装具分野の前に,まず基礎科目をある程度身につけておきましょう.
(12月時点でそんな方はあまりいないかもしれませんが)程度は違えど中には,全ての教科を均等に進めていこう!としていらっしゃる方もいます.
勉強の人それぞれですし,よい方法も違うとは言え.ある程度基礎を固めずに,応用を進めていくのは,あまり効率が良い方法とは言えないように思います.
学生さんが質問してくれる中でも,リハビリテーション医学や、臨床医学大要の分野の知識不足が.そのまま義肢装具の問題を解けない事に繋がっていると感じる事も多いです.
義肢装具の役割はいくつかありますが.その多くは「失われた機能を代償する」ことを目的としています.
運動学や解剖学などを始めとした,通常の人体の状態を知り. 臨床医学 を始めとした,疾患によって失われてしまった機能を知っていれば.自ずと,どんな装具が必要か分かってくるのではないかと思います.
スタート地点とゴール地点が分からなければ,その間に何が必要なのか分かりません.
例えば,この問題を例に出すと.
どれだけ装具の事を知っていようと,「二分脊椎」や「Sharrard分類Ⅳ群」がどのような状態であるのかが分からなければ考えようがありません.
義肢装具分野の問題の中には,装具以外の基礎科目の知識の方が重要なものや.
装具の知識があまり無くても,疾患の事を知っているだけで解けてしまうような問題もあります.
そもそも,その基礎知識が国家試験で問われるわけですから.重要なのは言うまでもないと思います.義肢装具分野はその基礎の上に成り立っている事をまず考えなくてはならないですね.
とはいっても,基礎分野の学ぶべき量は膨大です.「完璧」にするためには,どれだけの時間がかかるか分かりません.
「基礎科目ばっかり勉強していて,応用の科目には全く手がつけられませんでした!」という訳にはいかないので.完璧とは言わないまでも,どこかのタイミングで次のステップに進む必要があります.
それっていつ?というのは,人それぞれで非常に難しいところとなってしまいますが.残された時間と相談しながら,プランを考えなくてはなりません.
義肢装具分野になにも手をつけないのは不安!という方も含めて.まず勉強を始めるのであれば,どこから手を付ければよいのでしょうか?
結局全部一通りやる必要はあるわけですが,その中でも重要であったり頻出な内容と言える.まず勉強するのにオススメな分野についてお話していきましょう.
まず手を付けるべきといえる筆頭が,「装具の適合チェック」についてです.体幹・上肢装具でも重要ですが,理学療法士さんは特に下肢装具の適合チェックについてから始めると良いのではないでしょうか.
代表的な骨のランドマーク,神経の走行といったことさえ知っていれば.他に必要な基礎知識はないため,取り組みやすい内容と言えます.
「骨に当たらないように」「神経を圧迫しないように」といった,理由のはっきりしたチェックポイントが殆どなので.「なぜそのような設定がされているのか?」を中心に,良くも悪くも「覚えるだけ」です.
この適合チェックは国家試験としても重要ですが.なにより,卒後にセラピストとして装具に関わる上で.最も重要と言って良い知識ではないかと思います.
自身の施設で装具を新規作成することが無かったとしても.装具を使用されている方が,その施設を訪れる可能性は十分にあります.
適合のチェック方法を知らなければ,その装具の状態の善し悪しすら判断出来ませんよね!
そんな事情もあってか,非常に頻出な問題となっています.教科書の該当ページを時間を作ってチェックするところから,義肢装具分野の勉強を始めてもいいのではないでしょうか?
(過去の出題も似たような内容も多いです,要チェックですね)
こちらも,理学療法士の学生さん向けにはなりますが.義足の適合チェックも同様に,まず手を付けるのに良い内容だと思います.
骨のランドマーク,筋・神経の走行といった基本的な知識を必要するのに加えて.ダイナミックアライメントのチェックを学ぶ上で,「通常歩行」の知識が非常に重要となります.当然ですが,通常歩行が分からなければ.義足の歩行で起こる異常について理解出来ませんよね.
歩行も運動学などで,割と早期に学んである程度目処がついている分野ではないかと思うので.理解がしっかり出来ているのか,チェックする問題としてもうってつけです.
装具の適合チェック同様に,こちらもPT国試に毎年と言ってよいほど顔を出す頻出問題なので.教科書の該当ページは時間を作ってよくチェックしておきたいですね.
義足アライメントに関するものは専門知識というよりは,「義足がこう傾いたら,体はこう倒れる」というな「常識的な物理学」で対応できる事がほとんどです.装具とは逆に「考えるだけ」の問題なので,一度理解できれば忘れにくいのもポイントです!
また,義足の構成要素となる特定のパーツについては.なかなか学習に取り組みにくい印象を持っている方も多いかもしれませんが.前記の通り,義肢は失われた四肢の機能を代償するものです.
そのパーツが,人体のどんな機能を代償する機能を持っているのか?という.既に持っている知識とリンクさせていくと.学習しやすいのではないかと思います.
もう1つ,まず手をつけるのにオススメするのが断端の形態測定についてです.
形態測定自体は,「評価学」のどの教科書でもまず最初の方に載っているような内容だと思います.
四肢の形態測定の中で,最後の方に断端の形態測定もあるのですが.その部分はスキップしてしまっている方も多いのではないでしょうか?
当然ですが,四肢の形態測定と共通する部分も多いので.同じ部分,違う部分と一緒にしっかり学んでしまいましょう.
また測定した「断端長」は「切断レベル」を知るためにも重要となってきます.
断端長によって,「短断端」「標準断端」「長断端」など区分がされ.断端の長さは,作成する義肢の特徴に大きな影響を与えます.
どんな義肢が必要となるのか?については,追って勉強をしていくとして.
既にある程度身についているであろう計測に関わる部分については,早めに学習を済ませておいて.次のステップに進みやすい状態にしておきたいですね!
PT・OTの国家試験義肢装具関連分野の勉強について.今回は,まず手をつけるのにオススメする内容をお話してきました.
今回紹介したものは,必要となる基礎科目の知識も多くなく.逆に,義肢装具について学ぶ中で,その部分で引っかかるようであれば.急いでそちらの勉強をし直すチェックポイントとなるかもしれません.
また,卒業後にセラピストとしてお仕事をする中でも非常に重要な内容が多く.それゆえに頻出問題となっている部分もあります.最終的には一通り全て勉強する必要がありますが,まずはここからマスターすると良いのではないでしょうか?
今回は,内容的に理学療法士の学生さんに向いた内容が多くなってしまいましたが.次回は作業療法士の学生さんにも向けて,国家試験の出題傾向から.ちょっと難しい内容だけれど絶対に手をつけておくべき内容についてお話していこうと思います.