SHBは足関節部のトリミングで
底背屈の制御を調整できます.
今回はトリミングとトーアウトに
関する補足です.
まだご覧になっていない方は
足関節部のトリミングについてから
見ていただければと思います.
まずはコチラをご覧ください
装具のトリミングと進行方向
SHBにおける足関節部トリミングは,制動力を決めることに加えて
装具底背屈の方向,つまり足の進行方向に関わる要素でもあります.
(実際は装具の全体の形状に影響されますが)
基本的には内・外側のトリミングの垂線の方向へ装具が撓むため
トリミングが装具の進行方向を決定する要因となるわけですね.
装具のトーアウト
装具のトーアウトをどのように設定するかは,検討する内容の1つだと思います
そもそも装具のトーアウトって何?という事に触れておくと
トーアウトは,膝関節軸の垂線である
下肢の進行方向と,足の長軸が
成す角のことを呼びます.
下肢アライメントによって起こる
knee-in,toe-outもありますが.
この場合は距腿関節軸の
個人差によって起こる
進行方向と足の長軸の角と
思って頂くと良いかもしれません.
装具の足継手の方向は,
いくつか設定の方法がありますが
足部の中心線と外果と通る垂線を
足継手軸と設定するのが基本です.
tibial torsionタイプなど
他の設定の良し悪しは割愛しますが
生体の足関節軸からあまりにも離れた
足継手軸に設定すると問題が多いです
この基本となる足継手軸をもった装具は足継手軸と膝継手軸が一致するため
SHBの進行方向は足の長軸と一致します.
トーアウト0°のSHBという事になりますね.
一方で,SHBの撓む進行方向と,足の長軸にトーアウトを設定する場合
トーアウトX°のSHBと呼ばれることとなります.
トーアウトと装具のトリミング
トーアウトをどのように設定するべきかは,意見がわかれると思いますが.
反対足のトーアウトに合わせるというのが,1つの基準となると思います.
本来のトーアウトがあった方に
トーアウトの無い装具を使用すると
下肢の進行方向と
装具の進行方向にズレが生じます.
個人差があるので,
問題ない場合もあるのですが.
あまりにズレが大きい場合には
装具の進行方向を無視して
装具ごと内側に倒れながら
進行方向へ進んでしまう事もあります
この状態で運動学習をしても
何の意味もありません.
ここで,トリミングを調整する事で.
装具の撓む方向を変えて
無理やり進行方向を合わせる
という方法もありますが,
これには大きな問題があります.
トリミングを変えてしまったので
覆われる面積が少なくなり
作成時の制動力を発揮しません.
また本来の進行方向を
無理やり調整しているので
ねじれて撓む装具となってしまいます
これもまた何のための装具か
分からなくなってしまいます.
つまり,足関節部のトリミングは装具の進行方向に影響を与え.
トーアウトに合わせた設定にする必要がありますが.
(微調整は出来るものの)
後からトリミングを変えることで,トーアウトを変更することは難しく.
採型・作成時の設定が非常に重要という事になります.
まとめ
SHBのトリミングとトーアウトの関係についてまとめました.
基本的にトーアウトは,装具の「初期角度」と同様に
採型時の設定に大きく依存し,後からは微調整程度しか出来ません.
セラピストが採型時に同席している場合には,POさんも確認すると思いますが
ここまで患者さんの事をより多く見ているはずなので
こういったアライメントに関する情報はどんどん伝えていきましょう.
同時に,足関節部のトリミングは装具の進行方向に大きく影響を与えます.
制動力の調整を目的としてトリミングを変更した際には
装具の進行方向とトーアウトにズレが生じて,
装具に捻じれが起こっていないかチェックしておきたいですね.
参考文献
日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p57
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p251