プラスチック短下肢装具のトリミング-足関節部-

プラスチック短下肢装具のトリミング-足関節部-

装具の検討や適合に関わる

プラスチック短下肢装具の

トリミングについて解説していきます

今回は,足関節部についてです.

前回の下腿部トリミングはコチラ

他の部分のトリミングは,P・AFO全体で共通することですが

足関節部のトリミングが関係するのは,ほぼSHBです.

ですが,SHBにおいてこの足関節部のトリミングは.

装具の機能を決める根幹であり.SHBの適合を難しくする要因でもあります.

レディメイド装具で用いられる,オルトップSPS-AFO微調整をする際にも

知っておきたいことが多いので確認していきましょう.

足関節トリミングによる影響

足関節部のトリミングは作成する

プラスチックの厚みとあわせて,

SHBの底背屈制動力

大きさに関わります.

覆われる面積が多いほど

底背屈を強く制動する事が出来ます.

トリミングによる制動の強さ

内・外果をどの程度覆っているのかというのが,1つの目安となります.

どの程度の制動力か?はプラスチックの素材と厚みの影響も多いです.

SHB作成でよく使用されるのがポリプロピレン(以下PP)という素材で.

3mmか4mmの厚みで作成される事が多いでしょうか.

5mmだとトリミング次第ですがほぼ固定になると思います.

あくまで目安ですが,PP4mmで外果を覆うようなトリミングのSHBは

ほぼリジット(固定)で,これで制御出来ないような場合には

金属支柱付きの装具が適応となるくらい,強力な制動力があります.

またPP3mmで外果を抜くようなトリミングのSHBは

痙性による筋緊張を制御することはほぼ出来ず

末梢神経障害による下垂足を防ぐ程度の制動力しかありません.

オルトップAFOとLHの間程度の制動力でしょうか.

SHBといっても,これらの設定次第で機能に大きな幅があります.

体型によってもプラの厚みとトリミングの関係は変わってくるので,

出来れば備品やデモ機などを使って

どの程度の制御が出来るのかは評価をしっかりとしたいところですね.

トリミングによる底・背屈制動

SHBはその特性の1つとして.

装具の機械軸と,生体の足関節軸一致しません

底屈の機械軸は上方に,背屈の機械軸は下方にあります.

この機械軸のズレは,SHBがリジットや

強い制動の場合は影響が少ないのですが

フレキシブルなSHBの場合では,

装具と足のズレも大きくなってしまいます.

SHBという装具の1つの弱点です.

ですが調整をする時には良い点でもあります

このSHBの特徴は,トリミングによる底背屈制動の調整にも関わります.

底屈・背屈それぞれの制動を担っている部分が異なるという事は

その部分だけが影響を受けるような,トリミングの調整をすると

底屈のみ,背屈のみの制動力を変えることが出来るということです.

例えば,背屈の制動を小さくしたければ,

生体軸の下の,背屈機械軸付近のプラスチックの覆いを

少なくするようにトリミング調整を行うことで

背屈制動だけを小さく(背屈しやすく)することが出来ます

同様に生体軸の上の,底屈機械軸付近のプラスチックの覆いを

少なくするようにトリミング調整を行えば

底屈制動だけを小さく(底屈しやすく)することが出来ます

臨床上では,

立脚後期への移行を妨げる余計な背屈制動を小さくするため

機能回復に伴って不要となった底屈制動を小さくするため

といった場合に,こういった加工が行われます.

トリミング調整の注意点

トリミングの変更によって,制動力の調整を行うことが出来ますが

いくつか注意しなければならない事があります.

1つは,このトリミングの調整は

制動力を「小さくする」しか出来ないという事です.

元々のトリミングに依存しそこから制動を大きくする事は基本的に出来ません

備品などで十分に評価ができなかった場合などには,

少し制動力を大きめのトリミングで作成し,

必要に併せて調整するという方法をとったほうが無難かもしれません.

2つ目は,この調整で可能な

制動の減少は限界があるという事です

装具そのものの強度を保つため

最低限必要なトリミングがあり

その上でベルトを付けたりと

調整範囲には限界があります

3つ目は,どれだけ調整しても

制動はゼロに出来ないという事です.

トリミングを調整しても,

プラスチックの厚みによる

制動力の影響を受けます.

PP3mmならば

「ほぼ」制動の影響が無い程度まで

制動を小さく出来ますが,

PP4mm以上では,

可能な範囲のトリミング調整では

制動の影響が残ります

作成時は必要だった膝折れ防止のための背屈制動

機能回復に伴って足の動作を邪魔する制動となってしまいます.

  • 最初は膝折れを防ぐ背屈制動は欲しい
  • トリミング調整で背屈を邪魔しない制動に変更したい

これらの問題を加味した上で,調整可能な範囲を理解しつつ

プラスチックの厚みを設定し,必要な機能を持った

初期のトリミングを決定する必要がありますね.

まとめ

足関節部のトリミングについて解説をしてきました.

このトリミングはSHBという装具の機能の根幹を担う部分です.

プラスチックの厚みトリミングラインの設定装具の制動力を決めます

SHBは足関節の制御をどう設定そして調整していくのか判断が難しく

基本の装具でありながら,適合と運用が難しい装具となっています.

(もちろんメリットもあります.今後解説していきます)

「SHBの制動力を状況に合わせて調整する」といった発想がなく

ずっと初期の機能のまま使い続けてしまう場合もあります.

そもそもSHBが適応なのか?という点も含めて

トリミングが装具に与える影響と調整可能な範囲を知ることは

装具の検討を行う上で,重要な1つの情報となるのではないかと思います.

足関節部のトリミングと装具のトーアウトに関する補足についてはコチラ

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p63

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p239

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