カテゴリー 体幹装具

朝目覚めたら.まずコルセットを着ける -脊椎圧迫骨折などの場合に-

はじめに

今回お話していくのは,コルセットを寝ながら着ける方法についてです.

前回のコルセットの正しい着け方についてのお話の続きとなりますので.→コチラの記事も併せてご覧頂ければと思います.

コルセットが処方される疾患は多岐に渡りますが,その中には僅かな背骨(脊椎)の動きでも症状の悪化に繋がってしまうものがあります

代表的なものが「脊椎圧迫骨折」です.

コルセットはそういった症状を悪化させる動作を取らないことを目的として使用されますが.朝起きて起き上がる動作を取るだけでも悪化の恐れがある場合には.起き上がる前に,まず寝ながらコルセットを着ける必要があります.

手術後や,脊椎損傷など脊椎の不安定性がある場合でも同様なのですが.入院中は看護師さんなどが必要な介助を行ってくれます.「脊椎圧迫骨折」の場合には程度によってご自宅で療養される事も多いため,ご本人やそのご家族が介助をする際に注意をしてコルセットを着けなくてはなりません

脊椎圧迫骨折などでコルセットを処方されたご本人やご家族にぜひ知っておいてほしい,朝イチに寝ながらコルセットを着ける必要性とその方法についてお話していきます.

脊椎圧迫骨折とコルセットについて

起き上がるまでになぜコルセットを着けなくてはならないかを知るために「脊椎圧迫骨折」について簡単に説明しておきましょう.

背骨(脊椎)の中でも,胸の骨(胸椎)と腰の骨(腰椎)に起こる事が多い疾患で.転倒時に「尻もちをつく」などした時の衝撃によって,背骨の一部が潰れるように骨折してしまう疾患です.高齢で骨密度が低い場合などには,特に怪我をした覚えが無くても起こる事があります.

背骨を曲げるような衝撃が加わると,背骨の前側にあたる「椎体」という部分が潰れてしまいます.

骨折として問題もありますが,骨が潰れる事で周囲を通る脊髄や末梢神経の通り道が少なくなってしまう事もあるため.神経の麻痺など更に大きな問題に発展する恐れがあります.

症状の状態にもよりますが,圧迫骨折をおこした状態で背骨に力が加わると.「潰れた骨が更に潰れてしまう」という悪化の可能性があるため,そういった動きを制限するためにコルセットが処方されることが多いです.

処方されるコルセットは,症状の程度によって異なります.背骨の動きが症状を悪化させるリスクが高いほど,より動きを強固に制限するコルセットが必要となってきます.

おおまかに

  • メッシュ生地など柔らかい素材に支柱がある,「ダーメンコルセット
  • プラスチックなどで身体を覆う,「硬性のコルセット
  • 背骨を曲げる動きを特に制限する,「ジュエット装具

などが主な選択肢となっています.

ダーメンコルセット
硬性コルセット

ジュエット装具

コルセットに共通するのは,骨折部分の圧潰を悪化させる.

  • 背骨を曲げる(屈曲)させる動き
  • 背骨をひねる(回旋)させる動き

を制限することです.

(ダーメンコルセットは回旋を殆ど止められませんが)

これらの動きの制限の必要性と使い勝手を考慮してコルセットは選択されることとなりますが.

圧迫骨折のコルセットの目的は…
  • 脊椎がこれ以上潰れて悪化しないよう
  • 悪化する,背骨を曲げ・ひねる動きを制限する

という事を知っておいて頂きたいです.

なぜ朝目が覚めたらコルセットを着けるのか?

やってはいけない動作」が分かると,朝イチで起き上がる時にはコルセットを着けていなければならない理由も分かってきます.

普通に生活していると,「自分がどうやって起き上がっているか?」なんて気にすることはないと思います.聞かれても実際どうしているのか思い出せない方がほとんどではないでしょうか.

人が起きる時の動きは,本当に人それぞれです.そんな中にもいくつかパターンがあり,「寝ている姿勢からそのまま起きる」だったり「ゴロっと横を向いてから起き上がる」といった動作をして起き上がっています.

問題なのは,そんな起き上がりの動作の中に.骨折の圧潰を悪化させるような,背骨を曲げたりひねる動きが含まれている事があるということです.

起き上がりの介助をする場合も同様で,いわゆる「起き上がりやすい動き」の中には,脊椎の屈曲・回旋が含まれている事が多いのではないでしょうか.圧迫骨折の場合には通常行っている介助が問題となることもあります

起き上がり動作をするなかで,こういった脊椎の動きを完全に制御するのはなかなか難しいです.介助するにも慣れが必要ですし,ご本人が1人で起き上がる場合には相当注意を払いながら起き上がらなくてはなりません.

コルセットを着けていれば,こういった脊椎の屈曲・回旋を制限する事が出来るため.脊椎圧潰のリスクと天秤にかけて,必要と判断された場合には.朝イチで目覚めた時に「コルセットを着けてから起き上がる」こととなるわけですね.

起き上がりというのは,毎日必要な動作でありながら.意外と背骨にかかる負担の大きな動作です.せっかくコルセットを作っても,必要なタイミングで着けていなければ意味がなく.骨折の圧迫が進んでしまっては何のために作ったのか分からなくなってしまいます

装着のタイミングに関しては医師から必ず指示があると思いますのでよく確認しましょう.骨折だけでなく,更に神経の症状が…なんて事にならないようにしなければなりません.

寝ながらコルセットを着ける方法

寝ながら着ける時の注意点

起きる動作をする時にコルセットが必要ということは.朝目覚めて寝た状態でコルセットを着けなくてはなりません.寝ながらコルセットを着けるのは通常に比べれば少し大変です.1人で着けるには慣れが必要ですが,介助してくれる人がいると着けやすいですね.

気をつけなければならないのが,コルセットを着ける最中にも.背骨の圧潰を起こしかねない,曲げたりひねるという動きをしないように気をつけなくてはなりません.

寝ながらコルセットを着けるためには,何度か寝返りをしながら着けていくこととなります

その場で起き上がって背骨を曲げる動きはもちろん良くないですが.それ以上に注意が必要なのが寝返りの時です.

上半身と下半身が別々の動きをすると,背骨をひねる動きになってしまいます

起きたり寝返りをする時や介助する時には,普段この動きをしている事が非常に多いので注意しなくてはなりません.

上半身と骨盤が常に同じ方向を向いたまま,身体をひねらないように寝返りをすることがとても重要です

装着の手順

では手順を確認していきましょう.

左右に寝返りをするので,着ける時には身体をベッドの中心にするようにします.

身体の下にコルセットを滑り込ませていくので,内側を上にしておきます.

まず寝返りをして,身体があった場所にコルセットを敷きましょう

この時,ベッドと身体の隙間にも出来るだけコルセットを入れ込んでおくと後で楽に着けられます.

一度元の位置に戻ります.

身体の下にコルセットがある状態ですね.

反対側に寝返りをします.

身体の下敷きになっていたコルセットを引っ張り出して,広げましょう.

元の位置に戻ります.

必要であれば,寝返りを繰り返しながら上下左右の位置を調整しましょう.

コルセットを身体の前で合わせてベルトを締めれば装着完了です.

実際は,完全な寝返りをせずとも.身体の下にコルセットを滑り込ませるだけの寝返りをすれば大丈夫です.

寝ながらコルセットをこのようにして装着して.起き上がってから,またしっかりとコルセットを締め直すようにしていただくとより良いですね.

まとめ

圧迫骨折を代表とした,寝ながら着ける必要があるコルセットについてお話しました.

装具は,いつ・何のために着けるのかがとても重要です.せっかく作っても必要な場面で使われていなければ,その効果は少なくなってしまいます.

特にこういった悪化のリスクが有る疾患の場合には特に注意が必要で.圧迫骨折の際には「起きる前にコルセットを着ける」というのはその最たる例かもしれません.

症状の程度によっては,起き上がってから着けるのでも問題ないケースもありますが.着けるタイミングを含めた正しいコルセットの使い方」をしっかり医師など専門家に確認しておくことが大切ですね

参考資料

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p119-

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p215

加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p231-

Donalf A.Neumann,筋骨格系のキネシオロジー,医歯薬出版株式会社,第2版,p341

公益財団法人テクノエイド協会,補装具費支給事務ガイドブック,p38

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000070149.pdf

中村ブレイス株式会社 ジュエットプレイバック

http://www.nakamura-brace.co.jp/product/spinal/jeuett-playback.html

NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.