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装具作成にかかるお金について-作成から申請までにかかる費用-

治療の装具を作成する際に,ほとんどの場合で「装具を作りましょう」というのは突然のことだと思います.怪我や病気でただでさえバタバタしている状況で,おそらく殆ど方が初めての経験であろう装具を使用するという事はいくつかの悩みのタネとなりえます.

そんな中でも大きな一つが,装具を作成するにあたって「必要となる費用」についてです

装具作成に際して,医師や作成を担当する義肢装具士から費用に関する説明があると思いますが.多くの方が抱く感想は「高っ!そんなにかかるの??」ではないかと思います.

もちろん装具の種類によって全く違いますし,かかる代金にも理由があり,必要性があるので処方されているのですが.ビックリしてしまう方が多いかもしれません.

実際に装具をこれから作るという方は,担当の医師や義肢装具士に確認していただくのが確実ですが.ご家族が作成されるという方や,装具作成を検討しているという方に向けて.また,装具にこれから関わる学生さんや新人さんがユーザーさんの説明する際の知識として.装具の作成にかかる費用についてお話していこうと思います.

作成から申請までにかかる費用

装具を作成する上で,いくつか費用がかかるタイミングがあります.

装具本体の価格もそうですが,作成の過程支給申請でかかる費用について

  • 作成をする時に必要な費用
  • 完成した時に必要な費用
  • 申請をする時に必要な費用

という流れを追いながら確認していきましょう.

作成をする時に必要な費用

装具を作成する際には,採寸・採型という作業に費用がかかる場合があります.

これは装具を作成するために,医師の指示の下行われるもので.メジャーなどで身体の寸法をとったり,採寸身体の形状をギプスを使用してコピーをとる事に対してかかる費用で病院に支払うものです.

病院で治療などを受けた際の費用に関わる「診療報酬」で定められているもので.

装具採寸・採型にかかる診療報酬点数

    「採寸」の場合には
    J129-3 治療用装具採寸法 200点

    「採型」の場合には
    J129-4 治療用装具採型法 700点(一部インソール作成の場合は200点)

    (1点は10円換算)

のコストが認められています.

保険適応となり.それぞれ採寸の場合には2000円の自己負担(3割負担なら600円)を

採型の場合には7000円の自己負担(3割負担なら2100円)を.

基本的には採寸・採型を行った日に「病院の会計時」に支払うこととなります.

1箇所にかかる費用ですので,例えば両足の採型を行った場合には費用は2倍です.

採型・採寸と名前がついていますが.医師が処方を行い,必要な手順を指示したり.装具作成のために病院施設を使用したことなどにかかる諸々の費用で.次回詳しくお話する装具本体にかかる採型・採寸の費用とは別のものとなっています.

完成した時に必要な費用

装具完成時には装具本体の代金を「義肢装具制作会社」に支払うことになります.

治療用装具は「償還払い」という,一度装具の価格10割を支払いした後に,健康保険など支給制度に申請をする事で「自己負担以外が戻ってくるという形式が基本となっています.

この一時全額を支払う」というのが,装具作成時に「高い!」と感じる最大の要因となってしまっています.

装具の種類で様々ですが,大掛かりな装具の場合には数万円の一時負担が必要となる場合もあり.申請すれば自己負担額が3割負担の場合,残りの7割が戻ってくるわけですが.戻ってくるといっても,一時負担は大きく感じてしまうのではないでしょうか.

冒頭でも触れましたが,治療用装具が必要となる病気やケガの多くは突然の事が多く.そんな中で場合によっては,いきなり十数万円かかるモノ」が必要ですというのは多くの方にとって衝撃的なことだと思います.装具の処方に関わる側は,その必要性についてしっかり説明する必要がありますね.

後ほど触れますが,高いと感じてしまう一時10割負担となる装具本体の値段にも理由があり.必要な機能を満たすための構成要素に合わせて定められています

申請をする時に必要な費用

償還払いの手続きをする際には,お使いの健康保険など支給先に申請することとなります.その際にはいくつかの書類を提出する必要があります.

  • 装具代金領収書
  • 装具装着証明書(意見書)
  • 療養費支給申請書(申請用紙)

などです.

基本的にこれらの書類を用意する上で,「必要な費用はありません

領収書は義肢装具会社から装具代金支払い時に渡されるものですし.

医師の装具証明書(意見書)も病院から完成次第渡されるものです.この装具作成に関する証明書については,無償で交付するよう定められています.

保険医療機関は,患者から保険給付を受けるために必要な保険医療機関又は保険医の証明書,意見書等の交付を求められたときは,無償で交付しなければならない.

保険医療機関及び保険医療養担当規則 第六条(証明書等の交付)より抜粋

しいて言えば,支給先と申請書をやり取りする場合に.印刷代や郵送代がかかるくらいでしょうか.申請自体は手間ですが,かかる費用はありません.装着の証明日付から1年半が申請の期日となりますが,戻ってくる金額も大きいので早めに済ませてしまいたいですね

ただし,自賠責保険などに支給申請する場合で.通常の書式に追加して,医師に別途意見書を作成してもらう必要がある時にはこの限りではない事もあるので.そういった場合には受診している科の受付に確認してみてください.

装具の値段の決まり方

支給申請すれば自己負担分は戻ってくるとはいえ,装具は高価なものであるのは間違いありません.

そもそも装具の価格というのはどのように決まっているものなのでしょうか?

装具は治療などの目的のため必要な,支持性や関節を制御する機能が求められます.

そういった機能を満たすために,パーツや構成する材質が変わってくるのですが.

装具の支給をする上で,構成要素それぞれに厚生労働省が定めた価格があり.それらの組み合わせによって装具の値段は決定されています.こういった組み合わせを決めるのは,主に作成に関わる義肢装具士ですが.その値段自体は自由に決められるものではない訳ですね.

次回は,装具金額がどのように決まっていくのか.よく作成される装具を例に詳しくお話していこうと思います.

参考文献

公益財団法人テクノエイド協会,補装具費支給事務ガイドブック p30

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000070149.pdf

厚生労働省 治療用装具に係る療養費の 不適切な請求事案

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000189384.pdf

法令検索 e-gov

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=332M50000100015

補装具の種目 厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000083376.pdf

NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.