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第55回理学療法士国家試験 午前-30 義肢装具 問題解説

こんにちは,なぜなに。装具です.

今回も引き続きPTOT国家試験から

義肢装具関連問題の解説をしていきます.

問題を解くうえで

第55回理学療法士国家試験,3問目の義肢装具関連問題は

体幹装具の適合チェックポイントです.

適合チェックの問題も非常によく出題される問題です.

卒後にも臨床で装具に触れる場合は

適合チェックはとても重要なのでしっかり覚えておきましょう.

この問題を解くうえで注目するポイントは

  • 体幹のランドマーク
  • 装具を構成する部品の名称と位置
  • 体幹装具の適合チェックポイント

ですね.細かい部分を見ていくとキリがないので

ポイントをおさえていきましょう.

体幹のランドマーク

検査や評価でもその基準となるランドマークですが

体幹装具制作の際にも重要です.

これは流石に知識としてあると思うのですが一応確認していきましょう.

体幹前面で装具と関連の大きいランドマークは

  • 胸骨上切痕
  • 胸骨柄
  • 肩峰
  • 剣状突起
  • 肋骨下縁
  • 上前腸骨棘
  • 恥骨結合

体幹の後面で装具と関連の大きいランドマークは

  • 大後頭隆起
  • 第7頚椎棘突起
  • 第1胸椎棘突起
  • 肩峰
  • 肩甲棘
  • 第12胸椎棘突起
  • 第12肋骨
  • 第5腰椎棘突起
  • 上後腸骨棘
  • 仙骨
  • 尾骨
  • 大転子

ですね.

装具の支柱を付ける位置の基準となったり

装具がぶつかると痛い点で避ける必要があったりするので

装具の形状を考える上でもとても重要ですね!

体幹装具の構成要素

では体幹装具を構成する部品の名称位置チェックポイント

確認していきましょう.

近年はダーメンコルセット(軟性装具)

プラスチック製のコルセット(硬性装具)

処方される事が多いと思うのですが.

金属支柱で作成された装具がパーツを見る時に分かりやすいので

それを基準に解説していきます.

装具によって仕様は変わってきますが

微妙に部品が変わっても構成要素の名称やチェックポイントは

これを基本に覚えていきましょう.

骨盤帯

まずは体幹装具を支える基礎とも言える部分の骨盤帯です.

脊椎を固定しようと思った時に,脊柱だけを固定しても

椎骨がそれぞれ動いてしまって固定できません.

骨盤という土台をしっかり固定しつつ脊柱を固定することで

脊柱を安定させることが出来ます.

その名の通り骨盤部に帯状にあるもので

側方では腸骨稜と大転子の間に位置するように

後方では上後腸骨棘と仙骨下縁に位置するよう

作成されています.

尾骨を避けて作られており,坐位・臥位で装具と

ぶつかりやすいのと臀裂で装具が浮きやすいので

トリミングのラインには注意が必要です.

胸椎帯

体幹装具は身体を円柱で固定しているような状態です.

骨盤帯が装具の円柱下部の支えならば

胸椎帯は装具の円柱上部を支える部分となります.

装具の必要な丈によって位置は変わりますが

上限は第9,10胸椎レベルに設定され

肩甲骨の下角から2~3横指下に位置します

ただ,近年多く処方される硬性装具を想像して

より高位の支持を考えると違和感のある

設定に思えるかもしれません.

また後ほど補足しますが,体幹装具の胸椎帯の

位置はこのように覚えていただきたいです.

圧迫骨折時に用いられるジュエット装具などの

高位胸椎を支える必要のある装具で前面に延長する場合には

水平に前面に向かいながら大胸筋上をカーブし鎖骨下部1横指下に至ります.

胸骨を支える位置と考えるとイメージしやすいでしょうか.

 ジュエット装具

後方支柱

後方支柱骨盤帯胸椎帯を連結するものです.

円柱の上下を支える部分ですね.

胸腰仙椎装具の場合には肩甲棘レベルまで

延長されることがあります.

これも硬性装具に慣れていると

なんだか違和感のある表現かもしれません.

重要なのは,棘突起や上後腸骨棘とは

接しない位置に設定する必要があり,

特に臥位時には支柱が圧迫していまいます.

側方支柱

側方支柱後方支柱と同様に

骨盤帯胸骨帯を連結しています.

特に決まった位置はないのですが

前後幅で前方に位置し過ぎる装着しづらく

後方に位置しすぎる側方への動作を

制限しにくくなってしまいます.

前後幅の中間~わずかに前方に位置すると

良いのではないでしょうか.

装具によって構成が変わることもありますが,

この4つが体幹装具を構成する基本フレームとなります.

ここに追加でバンドやベルトなどがついてくるわけですね.

肩甲骨間バンド

いくつかあるバンドやベルトですが,明確に位置が

明言されているものに肩甲骨間バンドがあります.

テーラー型という体幹装具を代表とする構成要素の1つで

肩甲骨間バンド肩甲骨の下1/3の位置に設定されます.

その先からは腋窩ストラップが出ていて

延長された後方支柱から腋窩をグルっと回して固定するためのものです.

臨床上ではあまり見かけることが少なくなった装具ですが

国試では度々顔をだします.チェックしておきましょう!

    テーラー型

腹部サポート

もう1つ位置の設定が明言されているものに腹部サポートがあります.

腹部前当てと呼ばれる事もありますね.

体幹をフレームにバンドで固定するとともに

腹圧を加えることで脊柱を安定させる役割を持っています.

恥骨結合の1横指上から剣状突起1横指下までを覆います.

その他にも構成要素はありますが,

ランドマークとの位置関係が定まっているのは

このあたりなので頭に入れておきましょう.

また側弯症装具には重要なバーツが他にもあるので

併せて覚えておくと良いのではないかと思います.

解答の考え方

体幹装具の構成要素を確認したところで選択肢を見返してみましょう.

1.後方支柱は棘突起の直上に位置させる…ですが

これは誤りですね.支柱が直上にあったら当たって痛いです.

棘突起と上後腸骨棘の間に設定しましょう.

2.骨盤帯の位置は大転子と腸骨稜の間である…これが正答ですね.

この選択肢を見たら「お…これが正解か?」と思いたいですね.

3.側方支柱は骨盤帯と肩甲骨間バンドを結合する…ですが.

これは骨盤帯胸椎帯を結合するので誤りですね.

4.胸椎バンドの位置は肩甲骨の下1/3の高さである…ですが.

これは胸椎バンドではなく肩甲骨間バンドの説明なので誤りです.

5.腹部前あての上縁の位置は剣状突起の高さである…ですが.

上縁は剣状突起の1横指程度下に設定するので誤りです.

剣状突起も圧迫されると痛いので避けるべきランドマークは

しっかり頭に入れておいたほうが良いですね.

正しい解答を導くためには,

各構成要素とその位置を知らないと難しい問題なのですが.

選択肢を見た中で,「これ絶対に合ってるよな…」という

選択肢を見つけられると良い問題ですね.

補足知識

近年は手術の技術発達により,

体幹装具も硬いものから柔らかいもの,柔らかいものから不要にと

装着の負担が少ない装具でも問題ない場合が多くなりつつあります.

かつては,金属支柱のしっかりとした装具が求められたケースでも

プラスチック製の硬性装具や

メッシュ生地のダーメンコルセットの軟性装具がほとんどで

臨床で何年間か働いた方でも金属製の体幹装具は

見たことがないという方がいらっしゃるかもしれません.

そんな中でも,圧迫骨折など強固な固定が必要な場合には

金属支柱製のジュエット装具がよく用いられていますし.

側弯症装具では矯正力を支える支柱として

ミルウォーキーブレースなどが金属支柱付きの装具です.

ジュエット型
ミルウォーキーブレース

また,過去の流れを汲んでという部分もあると思うのですが.

特徴的な装具は臨床上見ることが少なくなった装具もよく出題されます.

もっとも「強固の固定を行う」というのが決まり文句のスタインドラー型

今回構成要素の解説でも出てきたナイト・テーラー型はよく見かけます.

これらの装具に関しては,どういった運動を制限する装具なのか

しっかりと確認をしていただければと思います.

スタインドラー型

テーラー型

まとめ

第55回理学療法士国家試験 午前-30

体幹装具の構成要素とチェックポイントについて解説しました.

チェックポイントは頻出問題ですが構成要素など覚えることも多いです.

まずはどんな形状でどんな目的のものなのか想像できる事が大切です.

よく選択肢を見ると明らかな間違いや,正答が混ざっていることが多いです.

今回も「義肢装具について勉強するならおさえるべき」

落とすと勿体無い問題と言えると思います.

人それぞれやるべき事は変わってくるとは思うのですが.

「義肢装具の勉強を何からすればよいか?」と聞かれたら

まず「各義肢装具の適合チェックポイントから手を付ける」

と言っても良いくらい国試で重要ですし,卒後にPTOTとして必要な知識です.

これらの設問のほとんどは

「装具学」

https://www.ishiyaku.co.jp/search/details.aspx?bookcode=214180

「義肢装具のチェックポイント」

https://www.igaku-shoin.co.jp/bookDetail.do?book=84419

の2つの書籍から引用または改変されているものです.

今回の問題も「装具学」の文言がほぼそのまま使われています

(日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p113)

義肢装具の適合チェックに関してはこれら書籍を持っていなくても

必ず学校の図書にあるメジャーな書籍なので確認して損はないと思います.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p113

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p207

細田多穂,シンプル理学療法学シリーズ 義肢装具学テキスト,南江堂,改訂第2版,p101

元つぶやき

Twitterでのつぶやきを再編したものです.

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NAZENANISOUGU

都内某施設でリハビリテーションに携わる理学療法士&義肢装具士です. 「装具」を使用する,ご本人や家族や,これから勉強する学生や新人さんに.装具ってどんなモノなのか?なんで着けるのか?使う時の注意は?など少しでも理解が広がればと思います.興味あれば是非フォローお願いします.