第57回理学療法士国家試験解説AM-10 -靴底の補正について-

第57回理学療法士国家試験解説AM-10 -靴底の補正について-

PT国試義肢装具関連問題の解説.今回は第57回理学療法士国家試験午前の10問目から.靴底の補正に関する問題です.

数年に一回は顔を出す、お決まりの問題ではあるのですが。義肢装具の分野の中でも靴型装具は,後回しにしやすい項目でもあるかと思います。

問題としては、ポイントを知っていれば誤った選択肢を見つけやすく。実際にこの靴を履いたらどうなるかな?と想像するだけで解ける部分もあるので、頻出ということも含めて、よく見ておきたい問題ですね。

問題PT57AM10

右側靴型装具の補正と効果の組み合わせで正しいのはどれか.

問題を解くうえで

頻出問題ではありますが,問題を解くという点で見れば殆どが今回のような設問のパターンです.選択肢をチェックするうえで,ポイントを押さえておけば誤った選択肢の多くを除外することができます.

耐用年数という期間について
  • 靴のどの部分を補正しているのか?
  • 何を目的とした補正なのか?

という点についてよく見ておきましょう.

靴の補正をいうのは,基本的に荷重がかかっている際に力を発揮します.

踵が接地している時に,前足部の補正は効果が無いですし.逆に踏み返しの時には,踵部の補正は力を発揮していません.当然と言えば当然ですが,これを見ていくだけで誤った選択肢の多くを除外することができます.

また,何を目的としているのかも重要です.細かいところはそれぞれの補正を見てもらうとして.大まかに荷重時の「アライメント補正」や「アーチの支持」をしているか.「特定の部位を免荷」や「体重の移動を補助」しているものに分類されます.

靴底がこう補正された靴を履いたら,実際どうなるのかな?というのを想像するだけでも補正の効果は分かってくると思うので.図示されている場合には,特によくチェックしておきたいですね.

解答の考え方

それでは,選択肢の図示された補正とその効果について確認をしていきましょう.

1.内側フレアヒール

選択肢1.に図示された補正と効果の組み合わせは,前足部の回内防止となっています.

ですが,図示されたものを見ればわかる通り.補正が行われているのは踵部分です.前足部に効果を及ぼす補正ではないためこの時点で誤りです.

図示された補正は,踵部に行われる補正であるフレアヒールです.基底面を増やすことで接地時の安定増加や矯正を行います.

内側に行われる場合には,外反足などの場合に用いられることが多いです.

問題PT57AM10-1

2.トーマスヒール

選択肢2.に図示された補正と効果の組み合わせは,踏み返しの改善となっています.

踏み返しは主に前足部が与える影響が大きいものです.図示されたものを見ると,踵部に補正が行われています.踏み返しに与える影響は少ないので,この時点で誤った選択肢です.

図示された補正は,踵部に行われる補正であり,内側に行われるものはトーマスヒールと呼ばれます.踵部内側を延長することで,内側方向への安定性や内側縦アーチの支持性を増強するものです.

問題PT57AM10-2

外反扁平足などに用いられる事が多いトーマスヒールですが.外側に行われる逆トーマスヒールと合わせて,よく選択肢に登場するのでチェックしておきましょう.

3.内側ソールウェッジ

選択肢3.に図示された補正と効果の組み合わせは,足部横アーチの支持性増強となっています.

足部横アーチは主に中足骨によって構成されるものです.前足部~中足部にかけて影響が大きいものですが.図示された補正は前足部に行われているものです.

詳しく見ていく必要がありますが,ポイントとなるのは,前足部の内側にのみ補正が行われているという事です.

問題PT57AM10-3

図示された補正は,ソールウェッジと呼ばれるもので.前足部に前額面上の傾きを作るための補正です.右図が外側ソールウェッジ,今回出題で図示されているものが内側ソールウェッジです.

前足部に楔状の傾きを付ける内側ソールウェッジでは,外反足やX脚の矯正中~前足部での荷重を外側へ移動させるために使用されることが多いです.

ソールウェッジ

楔の傾きを付けただけでは,足部横アーチの支持性増強には繋がらないため,誤った選択肢となりますね.

4.メタタルザルバー

選択肢4.に図示された補正と効果の組み合わせは,中足骨骨頭の免荷となっています.

図示された補正は,前足部.特に中足骨頭部付近に行われています.中足骨頭部に行われる補正は,形状など種類が多くありますが.その中の1つのメタタルザルバーという補正です.

問題PT57AM10-4

補正を行う位置が少し変わる事はありますが.メタタルザルバーの役割は中足骨頭の免荷です.本来荷重が大きくかかる中足骨部に対して,接地部分を変える事で免荷を行っています.

これが正解の選択肢ですね.

メタタルザルバーの免荷

5.ロッカーバー

選択肢4.に図示された補正と効果の組み合わせは,接踵時の衝撃吸収となっています.

接踵時の衝撃吸収は当然ですが,踵部が与える影響が大きいです.図示されたものを見ると前足部に補正が行われています.この時点で誤った選択肢です.

踏み返しは主に前足部が与える影響が大きいものです.図示されたものを見ると,踵部に補正が行われています.踏み返しに与える影響は少ないので,この時点で誤った選択肢です.

問題PT57AM10-5

前足部全体に,船底のような丸みを付ける補正をロッカーバーと呼びます.

踏み返しの改善を主な目的としたもので,この丸みに沿って転がることを利用し重心の移動を助けます.様々な目的に使用される,とても目にする機会が多い補正です.

ロッカーバーふみかえし-1

まとめ

第57回理学療法士国家試験午前の10問目から ,靴底の補正に関する問題 について解説をしました.

よく見かける問題ですが,今回の問題のように.「補正されている場所を見るだけで2択になっている」というパターンは非常に多いです.

目的と照らし合わせるだけで,正答が導き出せる問題がほとんどなので.教科書の該当ページと合わせて良くチェックしておきたいですね.

PT・OT学生さんの中でも,靴はほぼ全てといって良いほどに身近に使用しているものだと思います.今回紹介した靴の補正は,市販の靴にも小さな形で反映されています.

自身の持っている靴をいくつか見比べながら,どういった特徴が強いのか考えていくのも.1つの学びになるのではないかと思います.

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