セラピストの発想で臨む国家試験

セラピストの発想で臨む国家試験

こんにちは,なぜなに。装具です.国家試験日まで4ヶ月と少しとなりました.

今年に関しては,実習や国試対策がイレギュラーな日程で行われていて,例年以上に大変な思いをされている学生さんが多いかもしれません.

人それぞれではありますが,そろそろ国試勉強を本腰入れて臨む時期が近づいていきているのではないかと思います.そんな訳で今回は,なぜなに。装具的に思う国試勉強への臨み方についてお話していこうかなと思います.

私個人が思う事なので穿った部分も多いと思いますが,来年からセラピストになる学生さんに向けてなので,セラピスト的発想で国家試験に臨む1つの参考になればと思います.

国家試験の勉強ってどんなもの

私も国家試験の勉強をしている時は「こんなひたすら詰め込む勉強して,役に立つのかなぁ」と思っていました.

実際,その勉強は.セラピストの資格を持つものとして最低限の知識を持つという点で役立ちましたし,卒後の勉強をする土台になったと思います.

今になって学生さんとお話していて改めて思うのは,ある意味で国家試験は

「セラピスト」としての資質を計るもの

という点においても重要かな?と思ったりしています.

国家試験勉強とリハビリの共通点

国家試験は,国家資格を持つ上で必要な知識を持っているか?という事を計る試験ではあるのですが.それとは別に,セラピストとしてとても大事な能力を実践出来るかどうか?という一面もあるなと思っています.

というのも,リハビリテーションを考えていく上で必要となる事の一部と.国家試験の勉強には共通点が多いからです.

機能訓練を,ものすごく単純化してざっくりと言ってしまうと.

目標を達成するために必要な機能を獲得するために,現在の能力から一定期間で到達出来るプログラムを行っていくということだと思います.

これは国家試験の勉強でも同様ではないでしょうか.国家試験という目標を達成するために,必要となる能力を身につけるために,試験勉強をしているわけですよね.

目標と評価とプログラム立案

何かをしよう」と思った時に,目標を立てそれに向かっていくことは.特別なことではないですが,セラピストはある意味それを行う専門家と言えますよね.

国家試験は,「目標を設定」し「自己を評価」して目標達成に必要な「プログラムの立案」を行い実行する.というセラピストとして重要な能力が試されています.自身で実践できないものを,他者に伝えたり一緒に進めていくのは難しい事だと思います

国家試験は知識が試されるとともに,今後患者さんや利用者さんと共に進めていく,目標への到達というプロセスを自身で成し遂げるという.セラピストとしての資質が試される試験ではないでしょうか?

もしも目標の設定を低く見積もっていて,試験の合格出来る能力に見合わないものだとすれば.試験に合格は難しいかもしれませんし.

自己の評価が正しく行われていなければ,現在の能力と目標となる能力の間にどれだけの獲得する能力があるのか判断できません

そして自己評価から目標に一定期間で到達するプログラムを立案する必要があります.必要な能力を獲得できるプログラムでなければ,目標に到達できないかもしれないです.

目標を達成するためには,どの要素が抜け落ちてもいけません.国家試験に合格するという事も同様ですよね.逆に言えば,もし国試を落としてしまうような事態に陥る場合には,どれかが欠けてしまっています

これから本腰を入れて国試の勉強をしようという!という学生さんは,まず目標達成までのプロセスに問題がないか確認してみましょう.3~4年間勉強して実習を経た学生の皆さんは,患者さんや利用者さんに理由もなく「とにかく練習しましょう!」と言う事はないと思います.自分自身にもちゃんと当てはめて「とにかく勉強する!」にならないようにしたいですね.

国家試験の目標設定

リハビリを行う上で目標設定はとても重要です.実習でも,目標設定をどうするかとても悩んだ学生さんが多いと思いますし,これからも悩み続ける事になると思います.到達可能でその後の活動に繋がる目標設定はそれだけ難しくて大切なことです.

一方国家試験では,良くも悪くも目標は決まっています.人によって微妙に違いはあるはずですが「国家試験に合格して国家資格を持つこと」ですよね.

この時1つだけ注意して欲しいのが,短・中・長期目標は連動したものということです.「良いセラピストになる」という目標もよいでしょう.ですがそれは長期目標で短・中期目標の延長にあるべきものです.

国家試験の合格が代替不能な条件である以上その獲得は必須です.目標設定がブレるとそこに至る道程も変わってしまいます.「ADL自立」という目標を掲げたのに,更衣動作は獲得できませんでした…となったら計画の大幅な修正が必要ですよね.

もう1つ難しいのは「国家試験に合格するために必要な能力」というのが曖昧なところです.試験で6割取れる能力と言い換えられますが,それって具体的にどのようなものなの?と言われると意見が分かれるところではないでしょうか.ゼッタイの勉強方法がない1つの理由ですね.

模試の判定過去問の正答率などは.1つの参考にはなりますが,あくまで参考です….

各科目ごとに,必要となる知識はある程度決まってくると思いますが.「全ての教科の内容を完璧に網羅する」といった目標を立ててしまうと到達困難なので,必要性から優先順位を考え妥当で具体的な短期目標も立てたいですね.

大切なのは現状の把握

目標と達成しようと思った時に,やってしまいがちなのが.「がむちゃらに頑張る」「とりあえずやる」だと思います.目標にむけて前進していれば悪いことではないですが,目標達成のプロセスをある意味で生業とするセラピストとしては考えものですよね.

目標の設定とともに,まずやるべきなのは現状を評価することです.ICFで言えばプラス面とマイナス面を知ることで初めて,目標に向けて取り組むべき課題が分かってくるのですよね.

評価の方法は何でも良いのですが.国家試験を解く能力を検査するには.国家試験を解く事に近い検査がよいのではないでしょうか.

過去問を1つ解いてみて,全体の点数と教科ごとの点数から問題点を抽出すると課題も見えてきやすいのではないでしょうか.現状を評価したいだけなので,もっと簡易に検査出来る小テストのような方法があればそれでも良いと思います

多くの学生さんにとって,最初に過去問を解くのはなかなか大変な作業だと思います.出来ない問題がかなり多いのではないでしょうか.ですが,出来ることと出来ないことを知る事が目的ですから点数がどうであれ現状を知ることが大切です.FIMの点数がどれだけ低かったとしても,その検査の価値は変わらないですものね.

大切なのは現状を評価する事です.その大切さを実習でたくさん体験した学生さんが多いと思うのですが.自身の国試の勉強となるとスッポリ抜け落ちてしまっている方を多く見かけます.

決まっている目標と,残された時間

通常,機能訓練のリハビリテーションを行う際には,3ヶ月とか6ヶ月という期間の中で.到達可能かつニーズや活動を満たしたものを設定する事が多いですが.国家試験に関しては,目標と期間が決まってしまってます.

目標と期間がある程度決まってしまう事は,リハビリ上でも起こりうることで.例えば自宅復帰という方針のためには,特定の能力の獲得が必要となることも多いでしょう.そんな時にどれだけの期間が残されているかでやるべき事とその結果は大きく変わってしまいます.

1週で出来ること.1月で出来ること.3月で出来ることには.どれだけ優れたプログラムだったとしても限界があります.目標の設定と初期評価をどの時期に行うかは言うまでもなく重要です.理由もなく介入が遅れて退院まで残り数日…なんて許されませんよね.

国試の勉強も同様です.理由もなく初期評価を遅らせる事はデメリットしかありません.後から「残り時間がヤバイ」となって無茶苦茶なプログラムで勉強する…なんて事にならないようにしたいですね.

まとめ

リハビリテーションや国家試験に関わらず,目標を達成するというプロセスの中で,目標設定,評価,プログラム立案は重要な要素だと思います.

実習を含めたここまでの学校生活の勉強の中で,その大切さは身にしみているはずですが.なぜか,国試勉強を自分でやってみると全く実践できていない…という学生さんを見かけます.

資格を持てば,患者さんや利用者さんと何百回と繰り返していくこのプロセスですが.ご本人にとってそれは,私達の国家試験と比べるものではない重要な期間です.

その方法伝えたり,一緒に進んでいく事がセラピストの大きな役割の1つです.出来ませんでした…という訳にはいかないですよね.

国家試験を経て,知識とともに.このプロセスを実行できる能力を身につけるというのも,国試勉強のもう1つの意味ではないかなと思っています.

基本的なことで大したお話では無いですが.意識して臨むとまた違うのではないでしょうか.すこし長くなってしまったので,プログラムの立案…勉強方法についてはまた次回にお話しようと思います.

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