国家試験の勉強をどのように進めるかは,誰でも頭を悩ませる事だと思います.
私も多少学生さんに教える事がある立場なので,「どう勉強すればよいですか?」という質問にどう答えたらよいか悩んでしまいます.
国試に受かる知識を身につける学習が必要となるわけですが,セラピストは学習することを患者さんや利用者さんに伝える専門家でもありますよね!
「国試の過去問○年分」や「問題集を○周する」といった勉強方法は賛否あると思いますが,個人的な見解を含めたセラピスト的な発想で,国試勉強をしていく上でどのような学習をするかお話していきたいと思います.セラピストとしての知識に関わりありますし,息抜き代わりに読んで頂けると嬉しいです.
前回は国家試験に向けた,目標設定と自己評価についてお話しました.
→コチラの記事もぜひ見ていただければと思います.
どのような勉強方法を取るかは,どのような学習プログラムを立案して実行するのかという事ですよね.
これもまた,セラピストの資質を計る要素と言えるかもしれませんね!
どう勉強すればいいの?
「国試の勉強なにをすればいいか?」は,永遠のテーマですよね.勉強する学生さんとしても,アドバイスをする教員や先輩としても悩ましい問題ではないかと思います.
色々オススメの勉強方法があると思うのですが,国試の勉強をする上で良い方法とは何でしょうか?
これを言ってしまうと,元も子もないのですが
「人によって違うから,分からない」
というのが個人的な意見です.
じゃあこの記事は一体何なんだ,という事になってしまいますが.これには理由があります.前回のお話で出てきたとおり,国家試験に合格するという目標を達成するプロセスには.自己の評価を知る事が重要です.
スタートとゴールが分からなければ,その過程をどのようなプログラムで進めれば良いのか.判断のしようがないですよね?
見たことも,評価したこともない患者さんに対して.「こんなプログラムでリハビリしたほうが良いですよ!!」なんて無責任な事は言わないです.
評価から,それぞれの課題を抽出することで初めてプログラムの作成が出来るので.万人に通ずるリハビリのプログラムが存在しないように.誰にでも当てはまる勉強方法はないのではないかと思います.
つまり,個人に合わせた良い勉強方法を考えることは.自分自身の現在の能力を評価して知っている自分自身か.自分自身の能力をよく知る人(多くの場合は教員でしょうか)以外には難しいと言えます.
私も実際アドバイスするとなれば,知っている学生さんでなければ.当り障りのないアドバイスしか言えません.その学生さんの事を知っていれば,取り組むべき課題のアドバイスもしようがありますよね.
オススメの勉強方法というのは,あくまで方法論です.○○療法が誰にもどんな時でも適応する訳ではないのと同様に.その方法論を,自身のプログラムの中にどう活かしていくのかが重要ですね.
ただしプロセスを進めていく上で,リハビリと国試の勉強で決定的に違う部分があります.目標となる「国家試験に合格する」が共通だからです.目標が共通という事は,少なくとも目標の手前付近で行うべきプログラムには共通点があるかもしれません.
オススメの勉強法とは?
よく言われる勉強方法として.「過去問を○年分やる」があると思うのですが,勉強方法としてどうなのでしょうか.
前回すこし触れましたが,自己の能力を評価する方法として「1回分やってみる」のは良い方法だと思います.もっと簡単な検査方法があればよいのですが,各科目を網羅すると量が増えてしまいますね.
前記の通り,万人がまず取り組む勉強方法というものは無いので.それさえやっておけば良いというものではないですよね.目標達成のために取り組むべき課題というのはどういうものなのでしょうか?勉強をする事の一面ではありますが,また少しセラピスト的な視点で考えてみましょう.
転移性のある課題
運動と勉強は違いはありますが,どちらも学習するという点では共通点があります.
何かを学習する時,学習したいことを練習するのが最も効果的です.歩行の学習をするために,歩行を全くしないという事はないですよね.
国家試験を解く能力を身につけるには,国家試験を解くのが一番ですが,そういう意味で,「過去問を解く」という課題は.「国家試験を解く」事にこれ以上無い類似課題です.
国家試験の勉強をしていく上で,過去問を解くという課題は非常に優れていますが.そこに至るまでの過程で,転移性のある課題をどんどん乗り継いでいく必要があるかもしれません.
これは課題の難易度について後ほどお話ししていきます.
行動変化に繋がる課題
過去問を解くことは,転移性がある課題ということは分かりましたが.学習には他にも多くの重要な因子がありますよね.
学習という意味でみると,やった練習が行動変化,つまり出来るようになる事に繋がらなければ良い方法とは言えません.
そのための要因の1つに練習量があります.○年分,はそれに相当しますね.
勉強量と注意点
問題となるのはどれだけの量をするべきかです.これに関しては意見が分かれると思います.
そもそも,現在の達成度がどこにあるかで必要となる量が変わってきます.
7年分必要かもしれないし,5年分で十分かもしれないし,もしかしたら3年分も必要ないかもしれません.
「過去問を解く」を国試を解くに近い類似課題としているので.この達成度を上げていくことが,国試を解く達成度へと繋がっている訳ですが.そのためには何周かする必要もあるかもしれません.
これは完全に私の印象ですが,過去問5年分が「ほぼ完璧」に解ければ国試の達成度6割には届くかな?という気がします.ちょっと心配なので7年分やっておきたいなぁといったところでしょうか.
難易度と達成度
過去問を10年分とかやっても全然良いと思うのですが,ここで注意しなければならないことがあります.それは,その課題の「難易度」です.
課題は適切な難易度で行うことで,効率よく成長していきます.課題があまりにも難しすぎると伸びない,というのは何にでも当てはまりますよね.
過去問を解く上で,問題文や選択肢が何を言ってるのか全くわからないなど理解度が低すぎると.過去問を何十年分しても,ほとんど成長せずあまり良い勉強方法とは言えないと思います.
「解説」という補助をつけて,同じ課題に取り組んだり.ボトルネックとなっている「教科」があるならば,一部の能力を強化する,といった難易度の調整をした課題が重要です.
そしてその課題が成熟してきたら,次の目標に近い課題に乗り継いでいって.最終的には,「過去問を解く」という課題に辿り着けると良いですね.
とはいっても,課題の難易度を目標に対して過剰に簡単にしすぎるもの問題です.
課題を乗り継ぎ続けても,目標の達成が期間内で間に合わないかもしれませんよね.
全ての教科の「教科書を1P目から見る」といった勉強方法もまた問題があるということです.(もちろん目標に到達が可能ならOKです)
難しすぎず,簡単すぎない,最も成長できる課題を選んで取り組み.乗り継ぎながら効率よく目標に達成できる課題を選択するというのは.リハビリをする上でも,勉強をする上でもとても大切な共通点ですね.
保持と応用
学習の重要な要素として,「保持と応用」が挙げられると思います.勉強したものが,しばらくしても保持されていて.かつ,応用が効いて初めて「学習した」と言える訳ですね.
国試においてこれは非常に重要で,過去問を解いて勉強しても全く同じ問題だけしか解けないのでは,それは学習したとは言えません.選択肢が変わるなど応用が効いて初めて「過去問を解いた」と言えます.
まず通常歩行を学習したら,ゆっくり歩いたり早く歩いたりと条件を変えた応用が必要となるように.「正しい選択肢を選べる能力」も問題を解く上で大切ですが.選択肢が正しい理由や誤っている理由を説明できる能力がなければ応用が効きませんね.
PDCAサイクルを回す
国試勉強でありがちなのが,漫然と目の前の課題を続けて.目標に近づいているのかよく分からない…という事だと思います.
これもまたリハビリを進めて行くときと同様に,PDCAサイクルをしっかり回して勉強を進めて行くことが大切です.
間違った,もしくは効率の良くない方法を続けないためにもcheckする事がとても大切です.
日々の勉強の中で,きちんとPDCAサイクルを回せれば理想的ですが.そうはいっても身についているかは,なにかのタイミングで評価するのが一番分かりやすいのではないでしょうか.
そういう意味では,学内でのテストや,開催されている模試などは非常に重要な評価の機会です.点数を見て自身の状況を評価することも勿論大切なのですが.同時に,これまでの勉強方法がどうだったのか?という効果測定をする事も非常に重要となってきます.
- 立てた計画をきちんと実施しているか?
- 目標達成に近づいているか?
- 目標と取り組んでいる課題は適切か?
- 目標達成への計画は適切か?
といった点を,しっかり評価し.必要であればプランの修正を行う事が必要です.国試合格という目標の変更が出来ないですから,プランをより良いものに変えていくしかないですものね!
まとめ
セラピスト的な発想で国家試験の勉強にどう取り組んで行けば良いのか,意識したいいくつかの点についてお話しました.
出来ている人にとっては当たり前ですが,実習などで間違いなく1度は意識した目標達成へのプロセスで重要な要素が.自分自身には適用されていない学生さんもまた多くいます.
「過去問を何年分か解く」という課題は,歩行したい人が歩行練習をするのと同じくらい重要な課題ですが.何も考えずに歩けば良いという訳ではないですね.
自分を評価し,目標とプランを立てて,再評価しながら目標達成を目指すという.ある意味でセラピストとして重要な資質を試されている試験でもあるので.取り組むべき課題を考えながら最終的に目標達成出来るプランを作っていきたいですね!
参考文献
最強の回復期リハビリテーション- FIT program
http://www.fujita-hu.ac.jp/~rehabmed/contents/n_md02/reha02sub/book_fit2.html