プラスチック短下肢装具のトリミング-下腿部-

プラスチック短下肢装具のトリミング-下腿部-

装具の検討や適合の際に,チェックする要素の1つとして

どのようなトリミングの装具にするのか?が話題に出る事があるかと思います.

装具のトリミングは,機能や使い勝手に大きく影響を与えます.

「POさんに全部お任せ!」でもうまくいくよう作ってくれると思いますが

各トリミングが与える影響を知っておくと,適合チェック時の改善の提案など

より良い装具を作成することに繋がるのではないかと思います.

今回はプラスチック短下肢装具

(以下.P・AFO)の

基本とも言えるSHBをもとに.

  • 下腿部
  • 足関節部
  • 足部

の3つに分けて,

装具のトリミングについて

解説をしていきたいと思います.

下腿部上縁のトリミング

まず1つ目は,

下腿部上縁のトリミングです.

装具の制動力というメインの

機能に大きく影響を与える

トリミングの1つなので.

このトリミングには殆どの方が

注意している部分だと思います.

下腿上縁のトリミングの上限

まず下腿上縁のトリミング上限についてです.

これはAFOのチェックポイントで,よく挙げられる項目ですが.

腓骨頭下縁から約2.5cm(2横指)は隙間をあけましょうと言われています.

腓骨頭下では総腓骨神経が浅層を走行しているため.

P・AFOのような硬いもので圧迫され続けると

神経障害が起こる可能性があるので,それを避けるためのものですね.

下腿上縁のトリミング設定

トリミングの上限は,上記のように定められていますが.

その位置をどこに設定するかは,検討時に考える1つの要素だと思います.

オルトップをどのタイプにするかは,よく比較検討されますよね.

オルトップの各タイプでは,他にも違いはありますが.

最大の違いは下腿部のトリミングによるモーメントアームの長さです.

通常のSHBといわゆるショートSHBでは,モーメントアームの違いから

装具が発揮する制動力が変わってきます

下腿部が長いほどモーメントアームが長く,大きな制動力を発揮する

という点は,とても重要ですが.

同時に,それぞれの装具が同じ力で制動を行っている場合は.

下腿部が短いと,短いアームで支持する必要があるため,

下腿により大きな力が加わるという事も注意が必要です.

小さな面積で大きな力を支えると皮膚のトラブルに繋がります

装具が必要な制約を行うための制動力という意味で

モーメントアームの長さの設定は大前提ですが.

加えて,その制動力を支えるために適切なアームの長さがあるのか

十分注意してチェックする必要があります.

「足関節の動きは制御出来てるけれど,下腿に装具がすごい食い込んでいる」

なんて事はないようにしたいですね.

下腿上縁トリミングの注意点

「出来るだけ短い装具にしたいけれど,オルトップだと短すぎる」

と思う事は少なからずあると思います.

しかし.通常のSHBの長さオルトップLH+の長さとの間で

タイプのバリエーションが無いのには理由があります.

下腿上縁トリミングが腓腹筋の筋腹に

中途半端に被るようだと.

底屈時に装具が食い込んでしまいます

下腿部に装具の凹みの跡が

ポコっと残っている場合には

モーメントアームと共に

こういった問題が考えられます.

出来る事なら少しでも短い装具を!と思う所ですが,

中途半端なトリミングの設定は問題となる事が多いです.

必要な制動力に合わせて,上縁のトリミングを決める必要がありますね.

通常のSHBを少しでも短くしたい場合でも,

腓腹筋の膨らみのトップよりも遠位にするのは避けたほうが良いと思います.

下腿部前面のトリミング

2つ目は下腿部前面のトリミングです.

上縁のトリミングと比べるとあまり気にしない事が多いのではないでしょうか?

下腿前面のトリミングは,下腿上縁のトリミングによる

モーメントアームの長さと共に,前額面上の動きの制御に関わります.

下腿前面のトリミングの役割

装具が行う固定や制限など関節の制御は,

軟部組織を介して骨に力が加わる事で行われています.

軟部組織だけを押さえていても,関節の制御は出来ないので

下腿であれば,脛腓骨を固定して制御する必要があります.

下腿前後経の2/3を覆う程度が設定の目安とされていますが.

軟部組織の量によって個人差があります

脛腓骨を固定出来る程度に覆われているか確認しましょう.

下腿前面トリミングによる機能の違い

前額面の制御を行うためには,下腿前面のトリミングが

しっかりと覆われたものが良いのですが.

覆われすぎというのもまた問題で.覆いが多すぎると

装具の着脱が引っかかってしづらくなってしまいます

多くの場合,前面のトリミング部分は

装具が履きやすいように

少し開いた状態で作成されています

これで装着時に引っかかりが少なく

履けるようになるのですが,

まだ覆われすぎている問題があります

下腿部前面のトリミングが覆われすぎていると.

下腿のベルトが足に触れる面積が極端に少なくなってしまいます

ベルトの固定力が弱くなる事もありますし.

小さな面積に,ベルトの大きな固定の力が加わる

皮膚トラブルの原因となってしまう事もあります.

適切なトリミングとすることで,装具の固定とベルトの固定を

両立することが出来ます.下腿前後経2/3はあくまでこの目安ですね.

それぞれの状態に合わせた設定を行う必要があります.

まとめ

P・AFOの下腿部のトリミングについてまとめました.

上縁のトリミングは,装具の制動力を決める大きな要因なので

検討や評価をしっかりと行う必要があります.

一度短くしてしまうと,もう元には戻せません

また,前面のトリミングはあまり注目されませんが.

装具の使い勝手や,使用上の小さなトラブルに繋がります.

どちらもあくまで目安であり,必要な機能や身体の状態に合わせて

適切な設定を行う必要がありますね

次回は引き続き,足関節部のトリミングについて解説していきます.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p55

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p241

越智淳三,解剖学アトラス,文光堂,第3版,p130

パシフィックサプライ オルトップAFO

https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=7

https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=6

https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=9

装具カテゴリの最新記事