この記事は,インソールなどの
靴の内部に行う補正についての
補足の記事となります.
前回は→コチラから
前回は,ズレによって起こることと
靴選びの基本となる
「足長」と「足囲」について
解説をしてきました.
サイズの合っている靴を選ぶのは,当然のようですが結構難しくとても大切です
緩ければそれだけでインソールと足のズレは大きくなってしまいます.
今回は引き続いて,インソールと足のズレに関わる
靴選びのポイントを解説していこうと思います.
甲周径の調整方法
靴の甲周径の調整は,インソールと足のズレに最も影響を与えている
要因と言って良いのではないでしょうか.
前回も触れましたが,足と靴の周径は4つの周径を基準として考えられます.
ボールガースを含んだ,足の前側は靴にぶつからないようなゆとりが必要で
ウエストガースから後方は,足にフィットして足と靴を固定する役割を持ちます
![](https://nazenani-sougu.com/wp-content/uploads/2020/10/足の周径-1024x512.png)
![](https://nazenani-sougu.com/wp-content/uploads/2020/10/足のきつゆる-1024x512.png)
甲周径の調整に必要なこと
それと同時に,靴を着脱する際に
足先で一番太いボールガース部が
通り抜けるためには.
先程までしっかりと締めていた部分を
一時的に緩める必要があります.
またパンツを例にしてしまいますが.
もしパンツのウエスト部分を
全く緩める事が出来なかったとしたら
ヒップなど他の周径が太い部分を
通すことが出来ずに履けないですよね
![](https://nazenani-sougu.com/wp-content/uploads/2020/10/靴の着脱の時-1024x512.png)
つまり,ズレないように靴をしっかり履くためには.
履いている時に甲周径を足に合わせてしっかり締める事と
着脱の時に足を通せるように一時的に緩める事ができる
甲周径の調整が求められるということですね.
これは,逆の見方をすると.
靴を着脱する時に,緩める必要がない(少ない)靴は足がズレやすい要因を多く持っている靴
という事になります.
甲周径の調整方法を具体的に見ていきましょう.
周径調整:紐
一方で,周径調整のためには紐を結ぶという作業が煩わしいのが弱点です.
ここで気をつけて頂きたいのが.煩わしいからといって
甲周径の紐を緩くした状態で着脱していると,固定力はかなり少なくなります.
慣れないととても面倒ですが,しっかり靴を履こうとすると
着脱時には必ず,紐を緩めて締めるという作業を行うこととなります.
この作業をしていない方のほとんどは,靴の中で足がズレているでしょう.
周径調整の機能は最も優れていますが,同時に正しく履くことは
難しい靴と言えるかもしれませんね.
周径調整:ベルト
ベルトが付いている位置であれば,紐靴と同様に締めたり緩めたり
調整することが出来ます.ベルトをしっかりと締めれば
紐に近い固定力を得ることが出来るのでズレも少ないです.
しかし,これもまた紐と同様に.しっかり履くためには
ベルトを履いている時はしっかりと締め,着脱時は緩める必要があります.
これが出来ていないと靴の中で足がズレてしまいますね.
紐を結ぶ,という作業と比較すれば.ベルトを締めるのは簡単なので.
しっかりと靴を履く難易度は紐と比べると低いと言えますね.
周径調整:ゴム(スリッポン)
履いている時はゴムの締め付けで足を固定し.
着脱の際にはゴムが伸びるので周径を緩めることが出来ます.
特に操作無く脱ぎ履き出来るのでとても楽チンですよね.
![](https://nazenani-sougu.com/wp-content/uploads/2020/10/スリッポンの着脱-1024x512.png)
しかし,足を固定する力は
ゴムが締め付ける力だけで
そこまで大きな固定力ではありません
スリッポン靴は着脱の簡易さの代償に
とてもズレやすい靴と言えます.
足の悩みがあってインソールを
入れる靴としては不向きですね.
周径調整:なし(スリッポン)
スリッポンタイプの靴の中には,周径の調整が全く出来ないものもあります.
特にパンプスなどは甲部分が覆われていない場合も多いです.
この時に足と靴を固定するのは,本来適度なゆとりが必要な足先部分と
踵周囲のフィッティングのみです.これでは足がズレやすいのも仕方ないですね
インソールと足のズレという視点で見ると,かなり不向きと言える靴です.
とはいったものの,こういった靴が必要となる場面も多いのではないでしょうか
前回も触れたとおり,どれだけ頑張っても足のズレは起きてしまいます.
大切なのは,原因とその結果起こる影響を考えて最善の選択をすることです.
このような靴を避けるのは1つの良い選択肢ですし.
パンプスが必要な場面でも,ワンポイントでベルトが付いているデザインを
選択するなど可能な限り対策をする事が重要ですね.
周径調整:ファスナー
足の固定は完全に靴のフィッティング依存です.
ピッタリな靴であればズレにくい靴ですし
緩い靴であればズレやすい靴となってしまいます.
周径の「微調整」が出来ないのがファスナーの弱点ですね.
ただし,甲革がストレッチ素材で出来ているタイプの靴があります.
この場合はゴムの時と同様に,伸びてズレてしまうので注意が必要です.
ファスナーと紐が両方ついた靴は
双方のメリットを活かせます.
履いている時は紐で微調整しながら
足をしっかり固定出来ますし.
着脱の時には,ファスナーを
外すだけで周径を緩める事が出来ます
![](https://nazenani-sougu.com/wp-content/uploads/2020/10/ファスナー付きヒモ靴.png)
まとめ
インソールと足のズレの大きな要因となる.
靴の甲周径の調整についてまとめました.
靴の正しい履き方を含めた,甲周径の調整は.足と靴がズレる要因の
大部分を占めていると言ってよいのではないでしょうか.
ズレが気になる場合には,まずここを改善すると解決しやすいですね.
靴はTPOに合わせて選択する必要があるため
時にはズレが起こりやすい靴を選択する必要もあると思います.
特徴を知った上で,改善する対応を行うことも大切です.
次回は,今回の甲周径調整ほど影響は大きくないですが.
靴によって起こるインソールと足のズレについて引き続き解説します.
参考文献
日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p42
日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p271
日本産業調査会 JISS5037 靴のサイズ
https://www.jisc.go.jp/pdfa4/PDFView/ShowPDF/gAEAAAEzgX-L7kKYch8l