インソールと足のズレ-靴選び その2-

インソールと足のズレ-靴選び その2-

この記事は,インソールなどの

靴の内部に行う補正についての

補足の記事となります.

前回は→コチラから

前回は,ズレによって起こることと

靴選びの基本となる

「足長」と「足囲」について

解説をしてきました.

サイズの合っている靴を選ぶのは,当然のようですが結構難しくとても大切です

緩ければそれだけでインソールと足のズレは大きくなってしまいます

今回は引き続いて,インソールと足のズレに関わる

靴選びのポイントを解説していこうと思います.

甲周径の調整方法

靴の甲周径の調整は,インソールと足のズレに最も影響を与えている

要因と言って良いのではないでしょうか.

前回も触れましたが,足と靴の周径は4つの周径を基準として考えられます.

ボールガースを含んだ,足の前側は靴にぶつからないようなゆとりが必要で

ウエストガースから後方は,足にフィットして足と靴を固定する役割を持ちます

甲周径の調整に必要なこと

甲周径を調整する方法は

いくつもありますが.

その多くは正しくこの

ゆとりが欲しい部分

ピッタリフィットして欲しい部分

周径を調整するためにあります.

足と靴を固定するためには

→の部分の周径を

調整して締める必要があります.

この固定力がどれだけあるか

インソールと足のズレを防ぐために

重要な要因の1つとなっています.

それと同時に,靴を着脱する際

足先で一番太いボールガース部

通り抜けるためには.

先程までしっかりと締めていた部分を

一時的に緩める必要があります.

またパンツを例にしてしまいますが.

もしパンツのウエスト部分を

全く緩める事が出来なかったとしたら

ヒップなど他の周径が太い部分を

通すことが出来ずに履けないですよね

つまり,ズレないように靴をしっかり履くためには.

履いている時に甲周径を足に合わせてしっかり締める事と

着脱の時に足を通せるように一時的に緩める事ができる

甲周径の調整が求められるということですね.

これは,逆の見方をすると.

靴を着脱する時に,緩める必要がない(少ない)靴は足がズレやすい要因を多く持っている靴

という事になります.

甲周径の調整方法を具体的に見ていきましょう.

周径調整:紐

甲周径の調整という点を見ると

紐靴は非常に優れています

紐を通す穴(ハトメ)の

位置と数次第で調整範囲が変わり.

部分的に緩めたり締めたり

することが可能です.

紐靴はしっかり締めた時の固定力は

多くある甲周径調整の中でも

最もと言ってよい固定力があり

足とインソールのズレを

最大限防ぐ機能を持っています.

一方で,周径調整のためには紐を結ぶという作業が煩わしいのが弱点です.

ここで気をつけて頂きたいのが.煩わしいからといって

甲周径の紐を緩くした状態で着脱していると,固定力はかなり少なくなります

慣れないととても面倒ですが,しっかり靴を履こうとすると

着脱時には必ず,紐を緩めて締めるという作業を行うこととなります.

この作業をしていない方のほとんどは,靴の中で足がズレているでしょう.

周径調整の機能は最も優れていますが,同時に正しく履くことは

難しい靴と言えるかもしれませんね.

周径調整:ベルト

ベルトでの甲周径調整は紐と比べて

細かい調整は難しいものの

十分な固定力があります

ベルトの付いている位置と

本数によって調整範囲が変わります

ベルトが付いている位置であれば,紐靴と同様に締めたり緩めたり

調整することが出来ます.ベルトをしっかりと締めれば

紐に近い固定力を得ることが出来るのでズレも少ないです.

しかし,これもまた紐と同様に.しっかり履くためには

ベルトを履いている時はしっかりと締め,着脱時は緩める必要があります.

これが出来ていないと靴の中で足がズレてしまいますね

紐を結ぶ,という作業と比較すれば.ベルトを締めるのは簡単なので

しっかりと靴を履く難易度は紐と比べると低いと言えますね.

周径調整:ゴム(スリッポン)

スリッポンの靴はその名の通り

スリップオン(滑り入れる)靴です.

甲周径の調整にゴムが付いている靴が

多いのではないでしょうか.

履いている時はゴムの締め付けで足を固定し.

着脱の際にはゴムが伸びるので周径を緩めることが出来ます.

特に操作無く脱ぎ履き出来るのでとても楽チンですよね.

しかし,足を固定する力

ゴムが締め付ける力だけ

そこまで大きな固定力ではありません

スリッポン靴は着脱の簡易さの代償

とてもズレやすい靴と言えます.

足の悩みがあってインソールを

入れる靴としては不向きですね.

周径調整:なし(スリッポン)

スリッポンタイプの靴の中には,周径の調整が全く出来ないものもあります.

特にパンプスなどは甲部分が覆われていない場合も多いです.

この時に足と靴を固定するのは,本来適度なゆとりが必要な足先部分

踵周囲のフィッティングのみです.これでは足がズレやすいのも仕方ないですね

インソールと足のズレという視点で見ると,かなり不向きと言える靴です.

とはいったものの,こういった靴が必要となる場面も多いのではないでしょうか

前回も触れたとおり,どれだけ頑張っても足のズレは起きてしまいます.

大切なのは,原因とその結果起こる影響を考えて最善の選択をすることです.

このような靴を避けるのは1つの良い選択肢ですし.

パンプスが必要な場面でも,ワンポイントでベルトが付いているデザイン

選択するなど可能な限り対策をする事が重要ですね.

周径調整:ファスナー

ファスナーは着脱時には外して

足が通るゆとりを作ることが出来ます

履く時は締めるだけなので

紐靴などに比べると着脱時の手間は

幾分簡易ではないでしょうか.

足の固定は完全に靴のフィッティング依存です.

ピッタリな靴であればズレにくい靴ですし

緩い靴であればズレやすい靴となってしまいます.

周径の「微調整」が出来ないのがファスナーの弱点ですね.

ただし,甲革がストレッチ素材で出来ているタイプの靴があります.

この場合はゴムの時と同様に,伸びてズレてしまうので注意が必要です.

ファスナーと紐が両方ついた靴

双方のメリットを活かせます.

履いている時は紐で微調整しながら

足をしっかり固定出来ますし.

着脱の時には,ファスナーを

外すだけで周径を緩める事が出来ます

まとめ

インソールと足のズレの大きな要因となる.

靴の甲周径の調整についてまとめました.

靴の正しい履き方を含めた,甲周径の調整は.足と靴がズレる要因の

大部分を占めていると言ってよいのではないでしょうか.

ズレが気になる場合には,まずここを改善すると解決しやすいですね.

靴はTPOに合わせて選択する必要があるため

時にはズレが起こりやすい靴を選択する必要もあると思います.

特徴を知った上で,改善する対応を行うことも大切です.

次回は,今回の甲周径調整ほど影響は大きくないですが.

靴によって起こるインソールと足のズレについて引き続き解説します.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p42

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p271

日本産業調査会 JISS5037 靴のサイズ

https://www.jisc.go.jp/pdfa4/PDFView/ShowPDF/gAEAAAEzgX-L7kKYch8l

https://www.jisc.go.jp/index.html

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