インソールと足のズレ-靴選び その3-

インソールと足のズレ-靴選び その3-

引き続き,インソールと足のズレを起こす要因について.

どのような靴を選べばズレを小さく出来るのか解説していきます.

今回は,甲周径の調整ほどではないですが.

それでもズレに影響の大きい踵の高さについてと.

これまで紹介してきた内容の中ではちょっとマニアックですが

靴選びの重要な要素である指の付根が曲がる位置について

お話していきたいと思います.

この記事は,インソールなどの靴の内部に行う補正についての

補足の記事となります.前回は↓コチラから

踵の高さ

踵の高さも,足のズレに影響を与えます

女性はヒールを選ぶ時にヒール高を気にするのではないかと思いますし.

男性も試着の際に,無意識に「履きやすさ」として気にしているかもしれません

これは想像しやすいかもしれませんが

踵の高さが高いほど,靴の中での

足のズレは大きくなってしまいます.

踵が高いほど,指の付根と踵の

傾斜が大きくなってしまうからです.

すべり台の傾斜が大きくなれば

当然滑り落ちやすくなりますよね.

この踵部と指の付根の傾斜角

ヒールピッチ」と呼ばれます.

傾斜が大きいほどズレやすいですが

普段靴を選ぶ際には「ヒール高」に

注目してもらえばズレやすさの

指標となると思います.

踵の高さは,指の付根と踵にかかる

体重の重心への影響が大きいです.

それが原因の1つとなって

足の痛みや疾患となる事もありますが

その治療の一環でインソールを

使用する場合も踵の高さは

足のズレという形でも影響します

「ズレ」という点では,踵の高さが全く無いのが良いのですが.

「足のバランス」としては,1~2.5cmの高さがある方が良いとされています.

足の状態や疾患によっては低すぎるのも良くないという事です.

踵が高いほど,重心は前に.踵が低いほど,相対的に重心は後ろになるので.

ご自身の状態に合わせて選択するのが大切です.

足の前側に痛みや変形がある疾患の場合には,重心の位置という意味でも

足のズレという意味でも,踵の高さは控えめにすることをオススメします

指の付根が曲がる位置

踵の高さがズレる原因となる!というのは.

スベるイメージで想像しやすいと思うのですが,

足の指の付根が曲がる位置」というのは,

ちょっと想像しにくいかもしれません.

しかし,インソールと足のズレというだけでなく.

靴選びとして大切な点なので試着の際には確認して頂きたいポイントです.

少し難しいので,よく分からない!という方は

靴の選び方だけでも読んでいただければと思います.

靴の指の付根が曲がる位置ってなに?

そもそも靴の指の付根の曲がる位置ってどこ?という方も多いかもしれません.

指の付根の曲がる位置とは

踏みかえしの部分

MP関節と呼ばれます.

靴も同様に踏みかえしの時に

曲がっています.

少し細かい話になってしまうのですが,どんなにフィットしたインソールも

踏みかえしの際には少しだけズレてしまうものです.

足が曲がるところと,インソールの曲がるところが違うので

僅かではありますが,どこかでズレが出てきてしまいます

同様の事がインソール関係なく,足と靴の間でも起こっています

どんなにピッタリな靴を,正しく履いたとしても

長く履いていると少しずつ足がズレてしまう要因の1つです.

これはどうにも出来ない,絶対に生まれるズレなので仕方がないです.

歩いて踏みかえしを繰り返す間に,どんどんズレが大きくならないように

たまに紐やベルトを締め直して,足を正しい位置に戻す事が大切です.

靴による指の付根の曲がる位置

指の付け根の曲がる位置によるズレはある程度許容して

僅かにズレることを想定した,アーチサポートや免荷を行えばよいのですが.

問題はこのズレがとても大きくなってしまう場合です.

靴のソールの中には,踵から足の付根の手前まで

金属や硬いプラスチック製のシャンクという芯材が入っています.

この別名,踏まず芯と呼ばれるシャンクは,その硬さから撓むこと無く

靴の踏みかえし位置を,指の付け根の位置(MP関節)に

合わせるという目的があります.

この位置が,足の指の付根が曲がる位置とズレが大きい

本来,踏みかえしを行いたい位置とは違った場所で靴が曲がってしまいます

もし靴の踏みかえし位置が,足よりも前にあったとすると.

足は靴の硬さに負けて踏みかえし出来ず,どんどん前にズレていきます

これは先程触れた,どうしても起こる足とインソールのズレとは訳が違います.

許容していた僅かなズレに加えて,靴の曲がる位置のズレが加わる

ズレは大きなものとなってしまいます.

これは足の前側に行われた,免荷の凹みや横アーチサポートの補正の位置

ズレてしまうことに繋がるので注意が必要です.

指の付根の曲がる位置が一致した靴を選ぶためには.

まず足長が合っている靴を選ぶことが大切です.

足長にゆとりがあるすぎる靴を選ぶと,踏みかえしの位置もズレやすいです.

靴の試着をした時には,しっかり踵を合わせて靴を履いた状態

足長を確認しつつ,踏みかえしてみましょう

足が前にズレたり乗り越えるような感覚がある場合には

足と靴の指の付け根の曲がる位置にズレがあるかもしれません.

足長と踏みかえし位置は,指先の形状でも少し変わるので試着で確認が大切です

すぐサイズが大きくなると思って

お子さんの靴は少し大きめのもの

選んでしまいがちなので

靴と足のズレが起こりやすいです.

いわゆる「学校の上履き」は

シャンクが入っていません.

フニャフニャでどこでも曲がります.

踏みかえしのズレが起こりにくいのは良いのですが…

本来シャンクによって,指の付け根が曲がる位置が決まっているというのは

靴で長い距離を歩くために必要とされている機能です.

足の疾患がある場合には柔らかすぎるのも問題なので要相談ですね.

インソールと足のズレの対策

足のズレが起こる原因について,いくつか触れてきました.

  • 合っている靴を選べば防げるもの
  • 正しい履き方をすれば防げるもの
  • どれだけ工夫しても起こってしまうもの

といくつかありましたが.その中でも靴が足に合っているか

とても影響が大きいという事が,分かるのではないかと思います.

ポイントをピックアップしての解説となりましたが

足のズレに注目した時に,靴選びで気にしたいポイントは

  • 足長
  • 足囲
  • 甲周径の調整
  • 踵の高さ
  • 指の付根の曲がる位置

に関してはよくチェックしておくと合った靴を選びやすいと思います.

特に甲周径の調整が与える影響は非常に大きいので

足の事でお悩みの方は,一度見直してみるのも1つの方法ではないでしょうか?

とは言ったものの,靴はそのデザインも含めて選ぶものなので

「理想は分かっても,いつでも履きやすいスニーカーを履けるわけではない!」

TPOに合わせた靴を選択する必要も多いのではないかと思います.

ですが,今回の記事を読んでいただいた方には.

何が良くて何が問題を起こしやすいのか,知っていただけたと思います.

もし「少し踵が高い靴が絶対に必要!」という方は.

靴選びで1つズレやすい要素を持ってしまっています.

そんな際には,「甲周径はしっかり固定出来る,ベルトや紐の靴を選ぶ

という別の要素で,ズレにくい選択をして頂くと良いと思います.

原因を知っていれば,きっと良い対策もしやすいはずです.

変えられる所から1つずつ変えていく事が大切ですよね!

まとめ

3回に渡って,靴選びで起こるインソールと足のズレについて解説しました.

ちょっと細かい部分もありましたが,靴の選び方としては

基本的なポイントをしっかり押さえて選んで頂くのが良いと思います.

この記事を読んで頂いた方が,足に合ったインソールを作った時に

その効果をしっかりと発揮できる,靴選びをする助けになると嬉しいです.

これでインソールと靴が揃い,足によい条件が整いました!

…ですがまだ,インソールと足のズレが起こる要因があります.

それは少し触れましたが,「正しい靴の履き方」です.

どれだけ良い道具も,使い方が悪かったら効果を発揮できません

次回は,靴の履き方と,インソールをみてズレているか

チェックする方法についてお話していこうと思います.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p42

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p271

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