引き続き靴の補正について解説します
今回は足底部についてです.
前回の踵部補正については
コチラをご覧ください→
足底の補正は立位と歩行の
両方の安定に大きく影響する
補正が多いですね.
靴の補正の分類
靴の補正について
もう1度確認しておきましょう.
- 踵の補正
- 足底の補正
- 靴内部の補正
この3つに大きく分けられます.
考える時の1つの基準ですね.
もう1つが,何を目的としているかです.
大まかに分類すると
- 支持をするため
- アライメント・重心の移動を変えるため
- 免荷するため
の3つに分けることが出来ると思います.
足底の補正
足底部に行う代表的な補正は以下のとおりです.
- 内・外側ソールウェッジ
- メタタルザルバー
- デンバーバー
- メイヨー半月バー
- トーマスバー
- ハウザーバー
- ロッカーバー
- 蝶型踏みかえし
機能と適応について確認していきましょう.
内・外側ソールウェッジ
ソールウェッジは足底部に楔状の傾きを付けることで
アライメントの補正と重心の移動を目的としています.
ヒールに行う補正であるヒールウェッジでは
後足部または立脚期初期に与える影響が大きく
足底部に行う補正であるソールウェッジでは
前・中足部または立脚中期~後期に与える影響が大きいです.
内側に楔をつける内側ソールウェッジでは,
外反足やX脚の矯正と中足部での荷重を外側へ移動させるために.
外側に楔をつける外側ソールウェッジでは,
内反足やO脚の矯正と中足部での荷重を内側へ移動させるために使用されます.
メタタルザルバー
足の荷重が主にかかる場所は,踵と中足骨頭部です.
足のバランスが変わることで,これらの場所に荷重が集中し
トラブルとなることは多くあります.
メタタルザルバーは,そんな中足骨頭部の免荷を主な目的としたものです.
中足骨頭部の近位を支持することで
中足骨頭の荷重を免荷します.
アーチサポートなどの靴内部の
補正と併用される事が多いです.
また,副次的な機能として.前足部への踏み返しが行いやすくなります.
足関節背屈とMP関節の背屈を代償することで
アンクルロッカーの後半とフォアフットロッカーの機能を代償します.
免荷する中足骨や前後の位置の違いはありますが
似たような機能をもった足底部の補正はとても多いです.
デンバーバー
デンバーバーはメタタルザルバーと似た補正の1つです.
メタタルザルバーは中足骨頭後方に位置しますが,デンバーバーは直下です.
メタタルザルバーが中足骨頭部を浮かせるように免荷するのに対して
デンバーバーは支持部を増やすことで,中足骨頭にかかる荷重を
分散させるように免荷する補正となっています.
また中足骨頭部の支持部が増えていることで,
足部横アーチをより支持する機能を持っています.
メイヨー半月バー
メイヨー半月バーはメタタルザルバーとデンバーバーの
2つの補正の特徴を両方持っているような補正です.
中足骨頭後方からつま先に向けて半月状に取り付けられています.
中足骨頭の免荷と足部横アーチの支持が目的となっています.
トーマスバー
トーマスバーも中足骨頭の免荷を目的とした補正です.
中足部後方を支持し,中足骨頭を免荷するとともに
足部横アーチの支持を行っています
ハウザーバー
ハウザーバーは特徴的な形状をしていますが,Ⅰ~Ⅲの中足骨頭の免荷と
内側縦アーチの支持と足部回内防止の機能を持っています.
外反扁平足変形の場合に,トーマスヒール,内側ウェッジと共に用いられます.
ロッカーバー
ロッカーバーは前足部全体で転がるような丸みがついた補正です.
中足骨頭の免荷と共に,踏みかえしを容易にしています.
メタタルザルバーは中足骨頭の免荷を主としたものでしたが.
ロッカーバーは踏みかえしを容易にして,
アンクル・フォアフットロッカーを代償することを主な目的としています.
足関節背屈とMP関節背屈をせずに踏みかえしを行えることから
強剛母趾など足趾背屈によって症状が悪化するものや,
中足骨骨折など安静が必要となるもの,
糖尿病足病変など足部に知覚障害がある場合など.
足底の補正の中でも,多岐にわたってよく使用される補正です.
蝶型踏みかえし
蝶型踏みかえしはロッカーバーの中で,
第2~4中足骨頭の一部をくり抜いて免荷しているものです.
ロッカーバーの機能とともに部分的な中足骨の免荷に
重点を置いた足底の補正となっています.
詳細は次の項で解説していきます.
足部横アーチと中足骨頭免荷
足底の補正の多くは,中足骨頭の免荷を目的としたものが多くあります.
蝶型踏みかえしはその最たるものなのですが.
足の骨配列が,解剖学的にどのようになっているかが重要なポイントです.
この形状の理由は足部横アーチにあり
注目したいのは,中足骨頭部で
第2中足骨頭を頂点とした
山の小さな横アーチです.
個人差はありますが基本的に
第2.3中足骨頭が長くなっています.
中足骨だけを矢状面から見ると以下のようになります.
MP関節軸を基準にして中足骨を見るとこのようになりますね.
歩行におけるフォアフットロッカーでの,MP踏みかえしを見てみると.
中足骨頭部での横アーチはMP背屈時に,
5つの中足骨頭が接地するかのような配列となっています.
ですが,開張足などによって.足部横アーチが扁平しているとどうでしょうか?
開張足で同様にMP関節での踏みかえしを行うと
MP関節軸よりも長い,第2.3中足骨頭に踏みかえす度に荷重が集中します.
これが開張足の際に,第2.3中足骨頭部に疼痛や胼胝が起こる最大の原因です.
立位で影響がなくても,踏みかえし時には全体重がかかってしまいます.
このため,蝶型踏みかえしでは
第2.3中足骨頭に荷重が
かかりにくいよう免荷すると共に.
ロッカーボトムによる
フォアフットロッカーの代償で
MPの踏みかえしを少なくして
荷重が集中するのを
防いでいるというわけですね.
足部の免荷を行う際には
メタタルザルバーなどを代表に
主に立位を中心に,単純に免荷したい
部位に荷重が掛からないようにする.
という方法と.
歩行という動作の中で起こる,一部に体重が集中するタイミングに対して
ロッカーバーなどを代表とした
スムーズに重心を移動する事で,その部位に荷重が留まらないようにする.
あるいは,そういった動作を代償して取らないようにする.
という2つの方法の視点が重要です.
これは靴の補正だけでなく
インソールと併せて行われます.
インソールは部分的に重心移動を
変化させることが難しいので
免荷はインソールで
歩行周期中の重心移動は靴の補正で
行うという事も多いと思います.
状況に合わせた組み合わせが重要です
まとめ
靴の足底部の補正についてまとめてきました.
立位では,踵と第1.5中骨頭で荷重の殆どを支持していますが.
歩行の中では,重心の移り変わりに合わせて荷重が大きくかかる場所は変化し
そのほとんどは立位での負荷よりも大きい場合が多いです.
足部の疾患やそれに伴う変形によっては,更に一部位への荷重が集中します.
靴の足底部の補正は,そんな際に免荷を行ったり
スムーズに重心を移動することで,
一部位に荷重を留めないために有用であることが多いです.
参考文献
日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p29
加倉井周一,新編 装具治療マニュアル,医歯薬出版,第1版,p263
松野丈夫 ほか(編集),標準整形外科学,医学書院,第12版,2015,p701
厚生労働省 補装具支給事務ガイドブック p146
https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/000307895.pdf
日本足の外科学会 強剛母趾