第53回理学療法士国家試験解説 AM-10 二分脊椎の装具について

第53回理学療法士国家試験解説 AM-10 二分脊椎の装具について

義肢装具関連問題解説していきましょう!

今回は第53回理学療法士国家試験から,二分脊椎と装具に関する問題です.

残存機能によって,その機能や必要となる装具は大きく変わってきます.残存機能や機能分類の知識が必要となり.それに長下肢・短下肢・靴型・足底装具の知識が付随する問題ですね.

4歳の男児.顕在性二分脊椎症による脊髄髄膜瘤の術後.立位の様子を図に示す.短い距離であれば独歩可能である.予測される機能残存レベルの上限で正しいのはどれか.

問題を解くうえで

設問から得られる情報から,二分脊椎の機能残存レベルを選択する問題です.

二分脊椎の機能分類と図の装具を使用する条件の両方を知っていなくてはならない.少し難しい問題ですね.

歩行練習と実用歩行という違いはありますが,似たような問題が出題されているのでそちらも確認して頂ければと思います.

知っておきたいポイントとして

  • Surrardの分類
  • Hofferの分類
  • 使用される装具

について見ていきましょう.

Sharrardの分類とHofferの分類

二分脊椎は脊髄・脊椎が発生の種々の段階で癒合が停止したもので.そのために様々な神経障害を呈し,腰仙椎部に多発します.

  • 水頭症
  • 髄膜瘤・脊髄髄膜瘤
  • 膀胱直腸障害
  • 下肢機能不全

を伴うことがあります.

Sharrardの分類

二分脊椎の麻痺レベルと機能予測をする上で重要となってくるのが「Sharrardの分類」です.国家試験の勉強をする上でも切り離せない重要な分類ですね.

運動・知覚麻痺が脊髄のどのレベルに起こっているか確認した上で,運動機能や活動レベルの予測を行うものです.

今回の問題に関して言えば,特に重要なのがSharrardの分類と歩行能力についてで.麻痺レベルから歩行能力を予想したものです.

二分脊椎では,下肢・体幹の筋力,平衡機能,褥瘡の有無,知的能力,年齢などの影響も大きく.脊髄損傷のZancolliの分類のように.残存神経と機能レベルが一致しないことも多い疾患ですが.歩行能力を予測し今後の活動や治療方針を決定していく上で重要です.

AFOでの実用歩行の限界は,Sharrard分類Ⅲ群の低位例(麻痺レベルL4)がひとつの目安となっています.ある程度の距離を歩行するためには,杖と装具の併用が必要となってくることが多いですね.

Hofferの分類

もう1つ重要なのが,二分脊椎の麻痺レベルから歩行能力や活動のレベルを評価する「Hofferの分類」です.

詳細は拡大して見ていただきたいのですが,杖や装具を使用して屋内外歩行可能なものの上限は麻痺レベルL4が上限とされています.

上記の通り,二分脊椎ではその能力を上下する要因が多いのでこの限りではないのですが.Hofferの分類による移動手段の選択肢がどのようになっているかはよくチェックしておきたいですね.

二分脊椎で使用される装具

使用する装具によって主な目的は変わってきますが

二分脊椎に重要な装具の目的は

  • 変形の矯正・予防
  • 体重の支持,起立・歩行の補助
  • 体重支持部の保護

が大きな目的として挙がるのではないでしょうか.

前述の下肢運動の障害により失われた機能を代償し,拘縮や変形が起こりやすい状態なのでそれを防ぎ,変形と下肢知覚障害によって起こる潰瘍などを防ぐという役割を担っています.

骨盤帯付き長下肢装具(LSHKAFO)

胸髄レベル対麻痺の場合に処方されることが多く,立位・歩行訓練に用いられる.

実用歩行は困難だが,長期歩行を経験しなかった場合と比較して骨折回数・褥瘡が少なく,移乗能力も高いとされる.

PCWなどの歩行器と共に歩行訓練を行う.

PCW(posture control walker)
骨盤帯付き長下肢装具

長下肢装具(KAFO)

L2,L3レベルの麻痺.

L4,L5レベルの麻痺で下肢内旋,内転が強い場合に処方されることが多い.

歩行器やロフストランド杖とともに歩行訓練を行う場合もある.

両KAFO

短下肢装具(AFO)

二分脊椎で最も多く使用される装具で内反足,尖足,踵足に処方される.

足関節を適切な背屈位とすることで,立位での膝関節軽度屈曲,股関節伸展の下肢アライメントを確保する.

足装具(FO)

内反足,尖足,踵足に処方され,靴型装具や内蔵される足底装具も含む.

難治性の潰瘍に用いられることもあるが,予防・治癒効果は限界があり,潰瘍を悪化させないことが重要となる.

インソール内蔵の靴型装具

解答の考え方

では選択肢を見返してみましょう.

設問にある図の装具は,両足支柱付き短下肢装具(AFO)ですね.

「短い距離であれば独歩可能である」をどう捉えるかにもよりますが.Sharrardの分類から歩行能力を見てみると,短下肢装具で独歩可能な上限の麻痺レベルはL4とされています.

Hofferの分類でも同様に,日常生活で装具や杖を使って歩行を行える麻痺レベルの上限はL4とされています.

というわけで,予想される機能残存レベルの上限は

3.L4 が正答となりますね.

まとめ

二分脊椎の麻痺ベルと使用される装具に関する問題の解説をしました.

印象としては,「二分脊椎に関わる分類を知っていますか?」という問題で.装具どうこうを考えると余計に混乱する,ある意味で国試的な問題という気もします.

こういった歩行などの活動に関する分類は,実際には多くの他の条件の影響を受けます.二分脊椎は特にそういった要素の多い疾患です.

「病態の基本的な知識」と「実際を評価する知識」の両方が大切となるので.まず基本的な部分はしっかりと押さえておくようにしましょう.どういった状態なのか分かれば,どういった装具が必要かも想像がつくことが多いですね!

参考文献

米本恭三,最新リハビリテーション医学,医歯薬出版,第2版,p384

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p257

細田多穂,シンプル理学療法学シリーズ 義肢装具学テキスト,南江堂,改訂第2版,p156

沖高司,二分脊椎の装具療法,日本義肢装具学会誌,vol19 No.1,2003,p77

松野丈夫 ほか(編集),標準整形外科学,医学書院,第12版,2015,p550

加倉井周一,新編 装具治療マニュアル-疾患別・症状別適応-,医歯薬出版,第2版,p124

日進医療器株式会社 歩行杖

https://www.wheelchair.co.jp/products/category/%E8%A3%BD%E5%93%81%E6%83%85%E5%A0%B1_%E6%AD%A9%E8%A1%8C%E6%9D%96

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