プラスチック短下肢装具のトリミング-足部-

プラスチック短下肢装具のトリミング-足部-

プラスチック短下肢装具作成時に重要な

トリミングラインについて.

最後は足部のトリミングについてです.

内外反の制御など装具作成目的に関わる事から

靴の履きやすさなど使い勝手にも影響の大きい

トリミングと言えるのではないかと思います.

これはオルトップLH+にも大きく関係することでもあります.

なぜ「側壁あり」と「側壁なし」のタイプがあり

どう使い分ける必要があるのかは,このトリミングに理由があります

下腿部と足関節部のトリミングに関してはコチラをご覧ください

足部側壁のトリミング

まず足部のトリミングで大切なのが

足部側壁のトリミングです.

装具の機能そのものと使い勝手

大きな影響を与える部分ですね.

足部側壁の機能

足部側壁は,

下腿前面のトリミングと合わせて

前額面の制御を行います.

脳卒中などで「内反尖足」

とても起こりやすい変形です.

外反変形の場合ではこの逆で

外側の側壁が重要となります.

基本的に足継手の選択をする際に,悩むことはとても多いですが

ほとんどの場合で矢状面の制御についてではないでしょうか.

前額面の(主に内反)は制御されることが前提であると思います.

P・AFOや継手付き装具など種類によっても矯正力は様々ですが.

内反の制御が出来ていないと,程度の違いはあれど内反位で荷重してしまいます

そんな制御の一端を,足部側壁のトリミングは担っています.

足部側壁のトリミング設定

では,側壁のトリミングはどのように設定すればよいのでしょうか?

側壁が高いほど,前額面アライメントの矯正力は大きくなります

下腿部上縁のトリミングと同様で,

覆われている面積が大きくなると,

足部にかかる力も分散します

側壁では中足骨骨頭舟状骨など

除圧を行いたい部位が多いですが.

大きな力が加われば,骨突起部の

トラブルにも繋がってしまいます.

また側壁のトリミングが低すぎて内反の矯正力が不足すると

側壁に足が乗り上げたり装具から足が飛び出してしまいます.

実際はベルトがありますが,ベルトで無理やり押さえる装具となってしまうので

装具本体にも必要な矯正力を持たせたいですね.

では,足部側壁のトリミングは

高くすればよいのかと言うと

そういう訳にもいきません.

覆われる面積が増えるほど

足部の周径が大きくなり

靴が履きにくくなってしまいます.

「舟状骨が完全に覆われる」ようなトリミングにすると

「舟状骨レベル」のトリミングと比べると

靴の1サイズ分ほど周径が大きくなる事もあります.

機能だけを考えると,側壁が高いほど内反の制御は行いやすいですが.

靴と合わせた使い勝手を考えると,必要最低限に設定しなくてはいけません.

足関節部の底背屈制動のトリミングと合わせて,

必要となる制動力と矯正力を得られるトリミング

どの程度なのか評価をしていく必要があります.

中足骨骨頭部のトリミング

靴の脱ぎ履きのしやすさ

という事で言えば最も影響あるのが

中足骨頭部のトリミングです.

また,足趾の制御をする際にも

重要な役割を担っています.

靴とトリミング

短下肢装具を使用する際に,靴を履く際に最も問題となるのが

中足骨骨頭部のトリミングです.

これは装具関係なく,普通に靴を履く時も同様ですが,

中足骨骨頭部の周径である足囲が,足を入れた時に最も周径が大きく

他の狭い部分を通る時に引っかかる理由となりやすい部分です.

装具の厚みが更に追加されれば,

靴は更に履きにくくなります.

リハビリシューズのように

靴のベロの部分まで持ち上げる程

開きが大きな靴でないと

履くだけで一苦労となってしまいます

靴を履く事をだけを考えると,

中足骨頭部は出来るだけ覆われていないほうが着脱はスムーズになります.

足部側壁のトリミングでも触れたとおり中足骨頭部は除圧したい部分です.

いっそ中足骨頭は覆わない,というのも1つの方法です.

大きい内反矯正力が必要ない場合にはこの方法は有用です.

一方で,内反の制御が必要な場合には.

覆いを少なくすると装具が食い込むなどトラブルを起こします

足部側壁のトリミングの高さが重要であったように

側壁の長さによっても装具の矯正力は大きく変わってきます

実際は除圧部位とはいえ,全く支えていないという事はなく,

皮膚のトラブルを起こさない程度の支え

中足骨頭部で行っていることも多いのではないかと思います.

数値は目安です

中足骨頭トリミングと足趾の制御

中足骨頭部のトリミングには

もう1つ重要な役割があります.

それは装具にトースプリングの加工

行われている時に顕著となります.

中足骨頭部のトリミング次第で

MP以遠の足趾のコントロール

大きな影響があります.

側壁が足を覆っていない部分なので

一見関係なさそうに見えますが

足趾足底部を支持する働きがあります

中足骨頭部のトリミングが,トースプリング部(MP以遠)

達しているもの」と「達していないもの」で見比べてみましょう.

前者のトースプリングに

達しているトリミングでは

MP部分の側壁が,

足趾足底部分のプラスチック

支える役割を担っています.

一方でトースプリングに達していないトリミングではこの支えがないので

プラスチック成形時についた形の「クセ」だけで支えている状態です.

装具は足を覆うような形状をすることで,大きな制動力を発揮しています.

1枚のシートのプラスチックでは,その力はかなり小さくなってしまいます.

荷重をかければ押しつぶされてしまいますし,

筋緊張が強ければ遊脚期でも足趾の背屈を保持出来ないかもしれません.

見ていただくとお気づきかもしれませんが.

きちんと機能するトースプリングを装具につけるためには

製作時に予め付けておく必要があり,後付は出来ません.

トースプリングがなくても同様で,

中足骨頭部のトリミング次第で

側壁の支えがなければ

足趾の底屈を制御できず

遊脚期に底屈しているかもしれません

中足骨頭部のトリミングは,前額面上内反の制御だけでなく

足趾の底屈という矢状面の制御にも関わっています.

内反の制御は必要ないけれど,前足部の制御はしたいという場合には

高さを最低に,中足骨以遠まで達するトリミングが必要かもしれません.

まとめ

プラスチック短下肢装具の足部のトリミングについて解説しました.

足部は,他の部位と比べても骨突起部が多く.

十分な制御が行えていないと皮膚トラブルが起こりやすい部位でもあります.

また内反の制御に大きく関わるため,「内反位での歩行」を行わないために

装具に求められる機能としても重要な部分です.

これは全てのトリミングを決定する時に言える事ですが

出来ることなら装具で覆われている部分が少ないほうが

楽ですし,蒸れないし,靴なども履きやすいです.

それと引き換えにしても,必要な機能なのかをよく理解をして

トリミングの設定を行う必要があります

逆に必要な機能をが付いていない装具では

何のために作ったのか分からなくなってしまいます.

トリミング1つとっても,適切な装具なのか分かれ道があるので

よく検討した上で装具を作成していきたいですね.

参考文献

日本義肢装具学会 監修,装具学,医歯薬出版,第3版,p55

日本整形外科学会 ほか(監修),義肢装具のチェックポイント,医学書院,第7版,p241

越智淳三,解剖学アトラス,文光堂,第3版,p130

パシフィックサプライ オルトップLH+

https://www.p-supply.co.jp/products/index.php?act=detail&pid=7

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